第8章(ヒーローサイド) 裂帛! 戦士達の咆哮!!
8-①
・・・油断した。ニセ仮面カイザーの不恰好な必殺キックをベルトに受けて私は吹っ飛ばされた。
すぐさま立ち上がって、追撃に備えたが、視線の先では、気力と体力を使い果たしたらしいニセ仮面カイザーが、“ばたーん!!”とぶっ倒れていた。全身の筋肉が痙攣を起こしてもはや一歩も動けないようだ。
それを見た私は、カイザーキックの構えを取ったが・・・・・・やめた。
・・・倒れて動けない敵に追い打ちをかけてトドメを刺すなんてカッコワルイ真似は正義のヒーローとしてするべきではない。
正木君達は、えーっと、後回し・・・そう、許したわけじゃないけど後回しだ。私にはやらなければならない事がある。士多君と桃ちゃんの救出と、あの裏切り者を倒さなければならない。だから・・・・・・今は戦闘員なんかに構っている暇はない。
私は泉基地に向かって歩き始めた。基地の前まで辿り着くと、基地から出て来た黒いスーツのジャスティストルーパー隊に扇状に包囲された。この黒備えのチームは基地司令直属の親衛隊だ。相手はおよそ50名、全員が怪人の気配を発している。
「よく来たな。反逆者・・・桜井由香里」
正面入口の奥から裏切り者が現れた。
「お前だけは・・・絶対に許さないっ!! 覚悟し・・・ぐっ!?」
突如として私の全身を激痛が襲い、思わず地面に片膝を付いてしまった。今更カイザーキックのダメージが・・・!? 喰らった瞬間、咄嗟に身を引いてダメージを受け流したつもりだったのに・・・
しかも、間の悪い事に、変身ベルトのバックル部分から突然“ばちっ!!”と火花が飛び散り、変身まで解除されてしまった。
「ククク、どうやら変身も出来ないとみえる・・・お前達、反逆者を処刑しろ」
親衛隊が襲いかかってきたが、さっきの戦いのダメージで思うように動けない、さらに敵は圧倒的多数・・・殴られ、蹴られ、私は一方的にいたぶられた。
「ぐっ・・・士多君と桃ちゃんを助け出すまでは・・・っ」
親衛隊員の一人に取り押さえられて、意識が朦朧とする中、視線を動かして司令を探すと、司令は薄ら笑いを浮かべていた。
「士多博士? ああ、彼ならもうジャスティストルーパー隊に処刑を命じた。今頃あの世に旅立っているだろう。妹共々な」
「そん・・・な!?」
士多君が・・・桃ちゃんが・・・処刑された?
「う・・・うわああああああああーっ!!」
腹の底からマグマのように熱く、ドロドロとしたドス黒い感情が噴き出し、私の心を覆ってゆく。そして、私の心が完全に塗り潰された瞬間、私は身体を押さえつけていた親衛隊員を跳ね除け、馬乗りになっていた。
相手が被っているヘルメットのバイザーを上げる。中に入っているのが人間ではなくアリの怪人だったのを見て、思わず笑みがこぼれた。
良かった・・・どうやら遠慮も、躊躇も、容赦も必要無いみたいだ。
荒々しく、禍々しい、凶暴な力が身体の内から溢れてくる。これが・・・怪人の力か。
私はアリ怪人の喉に手刀を突き刺して首を捥ぎ取ると、司令目掛けて投げつけた。
慌てて避けた司令の背後の壁でぐちゃりと音がした。
「私を怪人にした事を・・・後悔させてやる!!」
「フン、貴様は活動限界時間の解除に成功したが、首領への恐怖心を取り除くのには失敗した不良品だ。不良品は・・・廃棄させてもらう」
親衛隊員が一斉に襲いかかってきた。その数、50体。私は殺到してくる怪人の群れに突入した。
飛びかかってきた怪人の胴体に手刀を叩き込み、風穴を開ける・・・残り49体!!
背後から襲いかかってきた怪人の顔面に裏拳を喰らわせ、首をへし折る・・・残り48体!!
近くにいた怪人を持ち上げ、頭から垂直に地面に叩きつけて脳天を粉砕する・・・残り47体!!
吹き荒れる灰の嵐のなかで、私は怒りと憎しみと闘争本能の赴くままに、怪人共を殺戮し続ける。
ボディブローをみぞおちに喰らって胃の中の物をぶち撒けそうになりながらも、相手の首を脇に抱え込んで絞め殺す・・・あと・・・25体。
一体一体は大した強さではない。だが、数の暴力の前に私は次第に押され始めていた。
背後から後頭部に蹴りを入れられ、意識が飛びそうになりながらも、カウンターの足払いで仰向けに転倒させ心臓を踏み抜く・・・・・・あと・・・12・・・くうっ!?
ぜ、全身の力が抜けてゆく・・・!? 私の殺意は未だ衰えてはいないが、身体の方は限界を迎えていた。いや、とっくの昔に限界なんて超えてしまっていたのかもしれない。もはや立っている事すら出来ない。私は四つん這いの姿勢になり、大きく肩で息をした。
「な、なんて奴だ・・・たった一人で、私の怪人軍団の4分の3を壊滅させてしまうとは・・・不用意に近づくな、距離を取って射殺しろ!!」
司令が右手を小さく上げると、12名の親衛隊員が一斉に盾を構え、ビームガンの銃口をこちらに向けた。
ここは・・・一旦退くしか・・・
だがその時、後方から、“どどどどっ!!”という地響きと共に、色とりどりのカラフルな集団が走って来た。あれは・・・ジャスティストルーパー隊か。
走ってきたジャスティストルーパー隊、全12隊が私の周りをぐるりと取り囲んだ。これでは逃げる事すら出来ない。
「良い所に来たな。敵に我らの秘密を知られる訳にはいかん・・・ジャスティストルーパー隊よ、反逆者、桜井由香里を抹殺せよ!!」
「私は・・・私は裏切り者なんかじゃ・・・ない」
私は必死に訴えかけたが、ジャスティストルーパー隊のみんなは何も応えてくれない。
ああ・・・私は死ぬんだ。士多君達の仇も討てずに、あんな裏切り者のいいようにされて。
そう思ったら、悔しさと怒りと悲しさで、涙がぼろぼろと出てきた。
1番隊の隊長のハンドサインで、ジャスティストルーパー隊が一斉に腰のホルスターからビームガンを抜く。それを見た司令が狂気の笑みを浮かべた。
「さぁ・・・殺れ!!」
「了解した・・・ジャスティストルーパー隊全部隊・・・・・・桜井隊員を守れっ!!」
ジャスティストルーパー隊のみんなが、私の前に壁を作るように並び、一斉に司令に銃を向けた。
「き、貴様ら・・・一体何の真似だ!?」
戸惑う司令に対し、メンバー全員が剣道の有段者で構成され、“剣術戦隊”の異名を持つ、ジャスティストルーパー1番隊の塚原隊長が答えた。
「今のでハッキリと分かった・・・裏切り者はお前だ」
「な、何を根拠に・・・」
「始めから怪しいと思っていた。お前は、桜井隊員や士多博士達がJOKERに内通し、機密情報を漏らしたと言って、抹殺命令を下したな・・・」
「それがどうしたと言うんだ!?」
「もし本当に桜井隊員達がJOKERと内通して我々の情報を流しているというのなら、彼女達を拘束して、どんな情報をどれだけ流したのか吐かせるのが普通だ。だが、お前は最初から抹殺命令を下した・・・つまり、桜井隊員や士多博士は他のジャスティス隊員に知られては困るような秘密を知ったという事だ。そう、例えば・・・この基地に新しく着任した司令が悪の秘密結社と内通しているとかな!!」
「そんなもの・・・貴様らの推測でしかあるまい、証拠でもあるのか?」
「・・・桜井隊員は、今までどんなに辛く厳しい戦いでも決して弱音を吐いたり、涙を流したりはしなかった。その桜井隊員が泣いている。証拠なら・・・彼女の涙で充分だ」
「俺達が今までどれだけ悪の軍団と戦ってきたと思ってんだコノヤロー!! 『我々の秘密を知られる訳にはいかん!!』だの『裏切り者は殺す!!』だのってのはなぁ・・・ヒール(悪役)が決まって吐く台詞だってんだコノヤロー!!」
反論する司令に対し、今度はメンバー全員が射撃に長けた“ゴルゴ戦隊”こと、ジャスティストルーパー2番隊の東郷隊長と、メンバー全員が元プロレスラーの“プロレス戦隊”こと、ジャスティストルーパー3番隊の猪木隊長が言った。
「ば、バカな。そんな理由で・・・そんな理由で、貴様らは組織を敵に回し、反逆者に味方するというのかっ!?」
顔を真っ赤にして叫ぶ司令と対照的に、メンバー全員が駿足を誇る“韋駄天戦隊”こと、ジャスティストルーパー4番隊の宇茶院隊長は涼しい顔だ。
「おい、みんな聞いたか? 反逆者の味方だとよ」
それを聞いたジャスティストルーパー隊のみんなが不敵に笑う。
「な、何がおかしい!?」
「反逆者の味方? 違うな。俺達は・・・・・・」
戦士達が一斉に吼えた。
「正義の味方だぁぁぁぁぁっ!!」
と、同時に彼らの背後で起きる大爆発。ジャスティストルーパー隊の背後にいた私は、もはや残りカス程度しかない体力を振り絞って地面をゴロゴロと転げ回り、間一髪で爆発から逃れた。
あ、危なぁぁぁっ!? 超危なぁぁぁっ!? し、死ぬかと思った。っていうか、このシステムは・・・
「由香里ちゃん!!」
「由香里さん!!」
士多君と桃ちゃんが走ってきた。
「二人共・・・無事だったの!?」
「ああ、ジャスティストルーパー隊のみんなが、僕達を拘束するフリをして、いち早く司令の魔の手から保護してくれたんだ」
「貴様ら・・・全員反逆者として処刑してくれる!!」
司令の叫びと共に、親衛隊が上着とヘルメットを脱ぎ捨て、蟻の怪人が正体を現した。
「言っておくが、貴様ら一人一人の戦闘能力を100とした場合、このアリ怪人の戦闘能力は・・・5000だ。どう足掻こうとも貴様らに勝ち目は無い。今からでも遅くはない、武器を捨て、大人しく私に従うなら命だけは助けてやるぞ?」
「笑止!! 言っておくが、正義の味方に『勝ち目が無いから降伏する』などという選択肢は存在しない!! 今からでも遅くない、武器を捨て、大人しく我々に投降するなら命までは取らん」
清々しいまでの即答に、司令は舌打ちした。
「愚か者共が・・・そんなに死にたいのなら望みを叶えてやろう・・・行け、怪人達よ!! 目障りなゴミ共を始末しろぉぉぉっ!!」
「丁度1チームにつき1体の割り当てか・・・行くでみんな!! あいつら全員・・・血祭りじゃあああ!!」
メンバー全員が陽気で祭りが大好きな、“お祭り戦隊”ことジャスティストルーパー5番隊の宮川隊長の雄叫びと共に、ジャスティストルーパー隊と怪人達の戦闘が始まった。
司令の話が本当ならば、ジャスティストルーパー隊は50倍もの戦闘能力を持つ敵と闘っている事になるが・・・
「メェェェェェン!! 面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面面ーっ!!」
「痛だだだだだだだだだ!?」
1番隊の5人が塚原隊長を筆頭に特注の電磁竹刀で5方向から怪人を滅多打ちにする!!
「怪人の甲殻は硬い、互いにカバーし合いながら、関節部に間断無く銃弾を打ち込み続けろ」
「くっ、人間風情が・・・さっきからスネとか肘の裏とか足の小指とかヤな所ばっかり狙いやがっ・・・ぐぁぁぁぁぁー痛ぇぇぇぇぇー!?」
2番隊の5人が、東郷隊長の冷静な指示のもと、怪人に銃弾の雨を浴びせ続ける!!
「どうだコノヤロー!! これがツープラトンを超えた・・・ファイブプラトン攻撃だコノヤロー!!」
「ぐえええええええええ!?」
3番隊の5人が、怪人を仰向けに寝かせて、隊員二人が怪人の左右の腕をそれぞれ腕ひしぎ十字固めに、残りの隊員二人が怪人の左右の足をそれぞれアキレス腱固めに、そして猪木隊長が怪人の首を首4の字固めに捕らえて締め上げる!!
ジャスティストルーパー隊の士気は高く、生身ながらも怪人達を圧倒していた。
「ば、馬鹿な・・・怪人が生身の人間に・・・?」
「正義の魂を持つ者に不可能はありません!! 先程、貴方は我々の戦闘能力を一人100にすぎないと仰っていましたね・・・ですが今の我々は、いつもの2倍の気合を入れ、そこにいつもの2倍の根性が加わり、そしていつもの3倍正義魂を燃やし、更に各チームが5人の心を一つにする事で、我々の戦闘能力は、戦闘能力100×2倍の気合×2倍の根性×3倍の正義魂×5人で・・・怪人の戦闘能力5000を上回る戦闘能力6000と言うわけなんですね」
「んなアホなぁっ!?」
何がアホなだと言うのか。全員がジャーナリストや大学教授などで構成された、ジャスティストルーパー6番隊、通称“説明がめちゃくちゃよくわかる戦隊”の池上隊長がこれ以上ない程分かりやすく丁寧に、かの有名な“ニコライ・ボルコフ理論”を説明してくれたというのに。あっ・・・さてはこいつ、良い年齢してかけ算出来ないんだな!!
「桜井隊員、ここは我々に任せろ!! 奴との決着をつけるんだ!!」
「み、みんな・・・」
「ふん、無駄だ。こいつはもはや動け・・・」
心の奥底に灯った小さな火が、私の心を埋め尽くしたドス黒いものを燃やしてゆく、そして私の心に灯った小さな火は凄まじい炎へと姿を変えた。
「うおおおおおっ!!」
私は全身に力を込めて再び立ち上がった。
「ひっ!? か、怪人共よ、ここは任せたぞ!!」
形勢不利と見たのか、司令は基地の中に逃げ込んだ。
「奴を追うんだ、コイツらを倒したら我々も後を追う!!」
「みんな・・・ありがとう。行こう、士多君、桃ちゃん!!」
ジャスティストルーパー隊のみんなに後押しされて、私達は司令を追った。
8-②
「正気じゃない・・・奴らは正気じゃない!!」
泉基地の司令・・・いや、JOKER幹部、デス・バットは泉基地内の緊急脱出用通路を走っていた。
せっかく得意の変装術を駆使して、暗殺した本物の基地司令と入れ替わり、戦力を整え、野望の実現まで順調に歩みを進めていたというのに・・・
度し難い・・・全くもって度し難い。この基地の奴らは己の正義の為なら自分の所属する組織であろうと、自分より遥かに強大な相手であろうと平気で牙を剥く・・・この基地の隊員はヒーロー番組の見過ぎで頭がおかしくなった奴ばっかりか!?
・・・まぁ良い。ジャスティスの超兵器のデータも、JOKERの怪人技術のノウハウも手に入れた。もはやジャスティスにもJOKERにも用は無い。ここを脱出したら、一度身を隠し、準備を整えて再起を図るのだ。この世界を支配する為に。
デス・バットは外へと繋がる扉を開け、そこで足を止めた。
「やぁ、デス・バット」
「しゅ・・・首領!?」
通路の先に、JOKERの首領が待ち構えていた。
「・・・ジャスティスへの潜入、ご苦労だったな」
「・・・ハッ」
何故、首領がここに!? デス・バットは内心焦ったが冷静を装って答えた。この程度の事で動揺していては裏切りなど出来はしない。
「・・・全てはJOKERによる理想の世界の為に」
「ほう? 怪人作成装置のデータを持ち出して、密かに怪人作成装置を各地に建造・・・しかも勝手に怪人のリミッターを外して、活動限界時間を無くし、我輩への恐怖心を取り除いたのもかね?」
「・・・我々の邪魔をする仮面カイザーを倒す為に怪人の強化と戦力の増強が必要でしたので。首領への恐怖心までもが消えてしまったのは全くの想定外でしたが、これも全ては・・・」
首領が、手でデス・バットの話を制止した。
「なぁ、デス・バットよ。下手な芝居は止めろ」
「フン、全てお見通しというわけか・・・」
「・・・何故だ?」
「知れたこと、貴様のやり方では何千年経とうと世界征服など出来ん!! 『人と地球に優しい世界征服』など笑止千万、甘っちょろい貴様らに代わってこの私がJOKERの怪人軍団とジャスティスの超兵器を使って、世界を手中に収めてくれる!!」
「・・・仮面カイザーを怪人に改造したのも貴様の仕業か?」
首領の声には静かな怒気が含まれていた。
「フン・・・何を怒っている?」
「我々の目的は『全人類が幸福に生きられる理想世界の創造』だ。奴は確かに邪魔な存在だが、我々が世界を征服した暁には、奴もまた我らが導くべき全人類の内の一人に含まれるのだよ。それを貴様は人体実験などと・・・」
「ええい、それが甘っちょろいと言うのだ。強大な力を持ちながら、貴様は人間一人殺す事も出来ん!!」
首領はやれやれと言わんばかりに溜め息を吐いた。
「私は違うぞ、逆らう奴らは根絶やしだ。まずは貴様らJOKERの存在を世間に知らしめて潰してくれ・・・る!?」
言い終わるのと同時に、デス・バットの首は宙を舞っていた。視線の先では、自分の首から下が、突然無くなった頭部を探すように2・3歩歩いた後、紫の炎に包まれて地面に倒れ込むのが見えた。それが、炎上するデス・バットの首が見た最期の光景だった。
首領は髑髏の意匠が施された剣をブンと振って、刀身に付着した血を落としながら呟いた。
「我々の秘密を知られる訳にはいかん、裏切り者は・・・殺す」
近付いて来る仮面カイザーの気配を感じ、首領はその場を去った。去り際に一通の置き手紙を残して。
8-③
私、士多君、桃ちゃんの三人は、逃亡を図る司令を追跡する最中、緊急脱出通路の出口を出た先で、一通の手紙を見つけた。
どうやら司令が残していったものらしい。手紙に書かれていた内容を読んで私達は驚愕した。手紙にはこう書かれていた。
拝啓 仮面カイザー様
木々の緑が目にしみる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
この度、私ニセ司令こと、JOKER幹部デス・バットは本日をもちまして、ヨーロッパ支部への転属と相成りました。
新たな決意のもと、新天地におきましても微力ながら、誠心誠意努力してまいる所存です。
仮面カイザー様はじめ、この基地の皆様には大変お世話になりました。今後ともよろしくお願い致します。
末筆ながら、皆様の益々のご活躍をお祈り致しております。 敬具
JOKER幹部 デス・バット
追伸 捕まえられるものなら捕まえてみろ、ばーかばーか、う◯こ!!
(・ω・)ノ〈ちゃお!!
「・・・・・・士多君、どっち?」
「えっ?」
「ヨーロッパってどっちの方角なの!!」
「ちょっ・・・待って・・・由香里ちゃん・・・おげええええー!?」
「ゆ、由香里さん落ち着いて下さい!! 頭揺さぶられ過ぎてお兄ちゃん失神寸前です!!」
「あっ、ごめん。でも今すぐヨーロッパに向かわなきゃ!! 士多君、何とかして!!」
「無茶言わないで下さい!! お兄ちゃんは未来のネコ型ロボじゃないんで・・・」
その時、士多君が気を失いかけてぶっ倒れながらも、ポケットから何かのスイッチを取り出し、ボタンを押した。
そして、次の瞬間、私のもとに三角錐型の小型ジェット機が飛来して、目の前に着陸した。銀色に輝くボディには〈Jet Bullet〉の文字が書かれている。
「お、お兄ちゃんいつの間にこんな物を作って・・・って、お兄ちゃーん!?」
士多君は、震える手で私に向かってサムズアップした後、白目を剥いてガクリと気を失った。
「とにかく私は奴を追う!! 桃ちゃん、後の事は任せる。それとこのベルト、修理が終わったらヨーロッパに送ってちょうだい、また後で連絡する!!」
私は壊れた変身ベルトを桃ちゃんに預けると、ジェット・バレットに乗り込んだ。操縦席の液晶パネルに文字が表示される。
『目的地を入力して下さい』
あっ、しまった。ヨーロッパって言っても奴は一体どこの国に向かったんだ。何か手掛かりは・・・・・・・・・そうか!!
追伸に描かれた(・ω・)ノ〈ちゃお!! の顔文字・・・つまり奴はイタリアだっ!!
私がタッチパネルにイタリアと入力すると、私を乗せたジェット・バレットは垂直に上昇した。
待っていろデス・バット・・・お前だけは絶対に許さない。世界の平和を守る為に必ず倒す!!
操作パネルに表示された『GO!!』のボタンをタップすると、ジェット・バレットは一路イタリアへ向けて発進した。




