↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面カイザー戦記  作者: 通 行人(とおり ゆきひと)
PR
14/18

第7章(JOKERサイド) 発動! 仮面カイザー撃滅作戦!!

 7-①


 翌日、俺は放心状態でアジトへの道を歩いていた。未だに昨日の出来事が信じられない、まるで悪夢だ。まさか桜井さんが仮面カイザーだったとは!

 いつもの倍以上の時間をかけてようやくアジトにたどり着いた。作戦会議室の扉を開けると竹内がソファーで『世界の未確認生物』という本を読んでいた。どうやら恵はまだ来ていないようだ。俺は革張りのソファーに腰かけた。

「やあ、昨日はその後どうなった?」

 俺は無言でズボンのポケットからバルの遺灰の入った小瓶を取り出した。

「そっか・・・で、仮面カイザーの正体は? やっぱり田口だったの?」

 俺は言うべきかどうか迷った。でも一人で抱え込むにはあまりに重い、俺は意を決して竹内に全てを話した。

「まさか桜井さんがねえ。やりづらいだろうなあ恵ちゃん」

「ああ。アイツ、桜井さんとめちゃくちゃ仲良ったもんな・・・」

「それに、好きな人の想い人となれば尚更だよねえ」

「ああ・・・それにしても桜井さんといい、恵といい、田口なんぞのどこがいいんだか。絶対騙されてるぜ」

「いやいやいや、恵ちゃんが好きなのは田口じゃなくて・・・」

「おはよー!」

 その時、恵が元気良く入ってきた。どういう心境の変化か、メガネをしていない、長かった髪もばっさりと切られている。まあ、今の俺にとってはどうでも良いことだが。

「どう?」

「・・・・・・おう」

「リアクション薄っ! ははーん、もしかしてひろひろ、ウチが可愛いから照れてるな?」

 恵は冗談っぽく笑ったが、今の俺にはツッコむ気力さえ無かった。

 俺は恵に田口が仮面カイザーではなかった事とバルがやられた事を伝えた。桜井さんが仮面カイザーだという事はなんとなく言い出せず終いだった。

「そっか・・・じゃあとりあえずバルたんの灰を怪人墓場に埋めに行こか」

 怪人墓場は秘密基地の裏手にある。かつては多くの花が咲いていたであろう直径2mほどの円形の花壇に、仮面カイザーとの死闘の末に散っていた怪人達の墓標がある。墓標といっても怪人の灰を土に埋めてその上から、怪人の名前を書いた、長方形の小さな木の板を差してあるだけだが。

 怪人墓場の墓標の数もセミ女の分で二桁に達した。よく見るといくつか「墓」と「暮」の字を間違えている。

 恵はセミ女の灰を土に埋めると、木の板に「バルたんの暮」と書いて地面に差した。

 俺達三人はセミ女の暮前で手を合わせると、目を閉じ一分間の黙祷を行った。一分後、そっと目を開けると、バルの暮の周りには黒山の人だかり・・・もとい、セミの幼虫だかりが出来ていた。本当にセミ界のアイドルだったんだな、バルたん。

 なんだかいたたまれなくなって、俺達は怪人墓場を後にした。

 作戦会議室の前まで来ると恵が突然立ち止まった。

「どうした?」

「・・・人の気配がする」

 こんなところに泥棒が入るとは思えないが、俺達は音を立てない様にドアを少しだけ開けて中の様子を窺った。

 確かに中に男がいる。後姿しか見えないが、男は金色のマントを羽織っている。そして、足元には猫がいた。

「ひろひろ、あれ・・・首領やんな?」

「あんな恥ずかしい格好で堂々とできるのは、あのおっさんぐらいのもんだろ」

「でも、何か様子が変だよ。何かマント穴だらけだし、何か煤けてるし、何かアフロだし」

「何をコソコソしているのかね?」

 三人して首を傾げていると、中から声をかけられた。聞き覚えのある声だ。俺達は作戦会議室の中に入った。

 部屋の中にいたのはやはり所塚首領だった。

 いろいろ聞きたい事はあるが、まず最初に聞くべき事を質問した。

「どうしてここに?」

 少しの間の後、首領が静かに口を開いた。

「本部が仮面カイザーに襲撃され、壊滅した」

「はい!?」

 三人揃って思わず聞き返してしまった。

「よって、たった今からここを仮設本部とし、周辺の支部の戦力を総動員して仮面カイザーを撃滅する! 作戦の開始は十日後だ、諸君らの奮戦に期待する!」

 おいおいおいおい! 何だよこの急展開!?


 7-②


 仮面カイザー撃滅作戦が発動された三日後、JOKER泉支部には近隣の支部から戦闘員や怪人が続々と集結していた。

 首領の命令でここ三日間、俺達は受け入れの準備に忙殺されていた。機材の運び込みや待機場所の割り振り、部屋の掃除や飲食物の買出し、果ては総統の猫、アトランティスの世話までさせられ、作戦が始まる前から俺達は既に疲労困憊だった。

しかも、こちとら昼間は学校があるというのに、本部から逃げてきた奴らときたら、ちっとも手伝ってくれないどころか、しょーもない雑用やお茶汲みまで押し付けてくる始末である。恵はこの三日間、本部の連中に対して、汚れた雑巾を絞った水で淹れたお茶やコーヒーを、とびっきりの笑顔で出し続けていた・・・・・・コイツは敵に回せない。

 それにしても、JOKERのメンバーがこんなにもいるとは正直思っていなかった。

 会社員風の男や主婦、家族連れから果ては警察官や自衛隊と思われる格好をした奴までざっと4~50人はいた。世界征服を企む人間がこんなにいるなんて。大丈夫か日本・・・違う意味で。

 そして怪人どもの待機場所はもっとすごい事になっていた。


 酒井支部のカブトムシ(幼虫)男

 岸和多支部の桃男

 多田丘支部のコウモリ男


 など計10体もの怪人がいた。そいつらが口々に「俺は天の道を・・・」「俺は最初から最後まで・・・」「気張って・・・」などと喚いている。まさに魑魅魍魎の百鬼夜行といった様相を呈していた。

 首領は本気だ。このままでは桜井さんが危ない。何とかして作戦を阻止せねば。

「竹内、なんとか止めさせる方法はないものか」

「こうなった以上、作戦が始まってしまう前に僕達で仮面カイザーを倒すしか手はないよ」

「俺達だけで? 無理だろ・・・」

「ふっふっふ・・・戦うだけが手段にあらず。案ずるな友よ・・・我に必勝の計あり!」

「た・・・竹内っ!」

 燃えるような夕日を背に、俺は竹内の手を固く握った。


 7-③


「それじゃあ、リハーサル始めるよー」

 で・・・俺は今何をしているのかというと、以前エスカルゴンと共に戦った廃倉庫で柱にロープで縛り付けられていた。竹内の必勝の計とは、桜井さんに脅迫状を送りつけ、人質の命と交換でベルトを要求するという、要は単なる人質作戦であった。

「その前に聞いておく。お前・・・何なんだそれは!?」

 竹内は鬼面の前立ての付いた兜と厳つい髭の生えた面頬を装着し、そして、風林火山の四文字が描かれた軍配に、〈軍略家〉と描かれたTシャツを着ていた。

「え? 戦国最強クラスの軍略家、武田信玄公だけど。時間とお金が足りなくて兜と軍配しか用意できなかったのが残念だけど」

 フルセットで用意するつもりだったのかよ・・・形から入らないと発狂する病気にでもかかっているのか、お前は!?

「じゃあ、よーい・・・アクション!!」

「た、助けてえ・・・」

「カット! 全然ダメ、もっとこう情けなさを前面に押し出してみじめに命乞いしなきゃ、演技だってバレるじゃないか!」

 くっ、こんな間抜けな姿を桜井さんに晒さねばならんとは・・・いっそ殺してくれ。

「やっぱり俺には演技なんか無理だ。人質役代わってくれ」

「だってもう“正木ヒロは預かった”って脅迫状出しちゃったし・・・そもそも、正木が“自分がJOKERの戦闘員だって事を桜井さんに知られたくない”って言うからこうなったんじゃないか。それとも、1000000%確実に嫌われちゃうけど桜井さんに本当の事を・・・」

「殿ぉぉぉ!! 人質のお役目、それがしにお任せ下されいっ!」

「良くぞ申した! その意気や良し!!」


 “ヴォォォォォン!!”


 その時、どこからともなくバイクのエンジン音が聞こえてきた。

「・・・配置に付けぃ!!」 

「御意!!」

 竹内が急いでロープを結び直し、ロープの一端を俺に握らせた。

「いざとなったらそれを引っ張って。一瞬でロープが解けるから」

 竹内はモデルガンを取り出し俺に突きつけた。

 10秒後、俺達の待つ廃倉庫に仮面カイザーがバイクで現れた。

「悪を切り裂く鋼の刃、仮面カイザー見参ッ!!」

「現れたな、仮面カイザー」

「おのれJOKER! 人質を解放しろ!」

「ふっふっふ、お前のベルトと交換・・・」

「断る!!」

 即答!? 桜井さん即答!? 君にとって、俺の命はその腰のベルトより軽いと・・・!?

 仮面カイザーがゆっくりと近付いてくる。

「動くなっ、人質の命がどうなってもいいのか!?」

 竹内がモデルガンを俺のこめかみに押し当てた。命乞いの合図だ。

「お願いですぅぅぅ~お願いだから助けて下さいぃぃぃ~見殺しにしないでぇぇぇ〜」

 俺の全身全霊の命乞いにも微塵も動揺する様子はない。だが、竹内はその様子を見て、不敵な笑みを浮かべた。もしや、まだ何か他にも策が・・・

「もはや万策尽きたっ!!」

「うぉい!?」

 何が“万策尽きた”だ、一策しか用意してなかっただけじゃねぇか!

 軍配やモデルガンなんぞで仮面カイザーと戦えるわけがない。

「逃げろ! 竹内っ!!」

 と、言い終わる頃には既に竹内は既に逃げ出していた・・・・・・あ、あの野郎!

 しかし、仮面カイザーは竹内を追いかけようとはせず、俺の前で立ち止まった。

「どういう事だ・・・まさか君は・・・」

 こうなってしまっては誤魔化すのは無理だ。俺は覚悟を決めた。

「俺は・・・JOKERの戦闘員なんだ」

「そんな・・・じゃあ、さっきの誘拐犯は」

「竹内だよ。ごめん・・・・・・桜井さん」

「そんな、正木君と竹内君がJOKERの戦闘員? それじゃあ、まさかブラックローズの正体は・・・」

「・・・恵だよ」

 仮面カイザーがうつむいた。終わったな、俺の恋。

「う、うわぁぁぁっ!!」

 仮面カイザーが腰からカイザーブレードを抜き、頭上に振りかぶった。

 嘘ぉぉぉっ!? 何なんこの展開!?

 俺は慌てて握っていたロープの端を引っ張ったが、ロープは解けない・・・いや、むしろ縛りがキツくなっている!? あの野郎・・・結び方思いっきり間違ってるじゃねぇか!?

 何とか脱出しようともがいたが、もがけばもがくほどロープは身体にキツく食い込み、解けそうに無い。ヤバイ、このままでは恋どころか人生まで終ってしまう。

 くっ、どうせ死ぬなら、これだけは言っておかねば。俺は息を深く吸い込んだ。

「俺は・・・君が好きだああああああああっ!」

 よし言ったっ、後は潔く散るのみぞ! 俺の心は今、四万十川の清流の如く澄みきっている。

「私は正義のヒーロー・・・悪と語る舌も、話を聞く耳も持ってはいない!!」

 四万十川が一瞬で濁流へと変わる。気付けば俺は恥もプライドもかなぐり捨てて叫んでいた。

「誰か助けてえぇぇぇー!!」

「うるさい! これ以上、私を惑わすなぁぁぁっ!!」

「ちょっと待ったぁ!」

 廃倉庫の壁をぶち破り、恵が10体もの怪人を引き連れて現れた。

「ブラックローズ!?」

 恵が、柱に縛り付けられている俺と仮面カイザーを交互に見比べた。

「むむっ、ヒーローのくせに人質をとるなんて・・・この卑怯もん!」

そうだそうだと怪人達も大ブーイングを起こす。とりあえず1ミリも状況を把握出来ていないようだ。

「今日こそお前を倒す。行けーっ、怪人軍団!!」

 怪人達が雄叫びを上げて仮面カイザーに突進していった。怪人達が仮面カイザーを足止めしている間に恵が俺の元までやってきた。

「ひろひろ大丈夫!?」

「お前・・・どうしてここに?」

「本部が新たに開発したエイリアン探知機が、ここにありえへんほど強力なエイリアンが一体おるって・・・」

「な、何だと!? 本部や他の支部の連中は何やってんだよ!?」

「それがその・・・・・・みんなありえへんほど泥酔してて・・・・・・」

「ええい、揃いもそろって・・・」

 恵がロープを解いてくれた。キツく縛られていたせいで体中が痛むが、今の俺にはそんな事はどうでも良かった。俺は恵から電磁ウイップ棒を取り上げると怒れる獅子の如き咆哮を上げた。

「うおおおおお! ドちくしょぉぉぉぉぉ! 正義が・・・なんぼのもんじゃぁぁぁぁぁ!!」

 可愛さ余って憎さ百倍・・・いや、百万倍だ。俺の体は今、失恋のショックでDNAの一片まで怒りと哀しみに満ちている。もし俺の頭にまだ髪があったなら、金色に輝きながら、逆立っていてもおかしくない。

「怪人ども・・・俺に従えぇぇぇっ!」

「あぁ? 何で俺達が戦闘員ごときの命令に従わなきゃ・・・うげぇぇっ!?」

 俺は詰め寄ってきた金魚の怪人に電磁ウイップ棒を叩き込んだ。

「仮面カイザーの前にお前を始末してやろうか、あぁ?」

「ひぃぃぃっ。わ、分かりました。従う、従いますぅ」

「お前らは?」

 他の怪人達も慌てて頷いた。

「よし・・・・・・かかれぇぇぇっ!」

 怪人達が仮面カイザーを取り囲んだ。

「よっしゃ、ウチも・・・」

「お前は駄目だ!」

「何で!?」

 ここで素直に足手まといだからなどと言おうものなら、ムキになって戦列に加わろうとしてくるだろう。そうなれば勝てる可能性は半減・・・いや、激減する。この、“妖怪足ひっぱり”を守りながら戦うのはハッキリ言って無理だ。

「お前に頼みがある。実はアジトに対仮面カイザー用秘密兵器、ウルトラハイパーグレートジェノサイドデラックスバスターが極秘に運び込まれているんだ。あれが無いと仮面カイザーを倒すのは無理だ。アジトに取りに行ってくれ!」

「で、でも・・・」

「頼む!」

「・・・分かった」

「絶っっっ対に間違えるなよ、ウルトラハイパーグレートジェノサイドデラックスバスターだからな!!」

「よ、よっしゃー。任せといてー!!」

 俺は自分の小学生並みのネーミングセンスに自嘲しつつ、アジトに向かって走り去る恵を見送った。

「さてと・・・やるか」

 俺は、電磁ウイップ棒を構えると、包囲の輪に加わった。

「気張っていくぜ!」

 まず最初にコウモリ男が仮面カイザーに殴りかかったが、仮面カイザーはコウモリ男のすばやい打撃を全て避けている。

 それを見て金魚男とチューリップ男が攻撃に加わった。

 怪人達は三方向から同時に蹴りを繰り出したが、仮面カイザーは両腕と膝でそれをガードすると、回し蹴りで三体の怪人を吹っ飛ばした。

「これならどうだっ、俺の必殺技その3!」

 桃男が仮面カイザーに光線を発射し、それを見た他の怪人達も、続けとばかりに光線やら電撃やら火炎やら溶解液をぶち込んだ。

 爆炎に包まれた仮面カイザーを見てチューリップ男が呟いた。

「・・・やったか!?」

 嫌な予感がした。アニメや特撮番組ではこの台詞が出た場合“やれてない”のは“お約束”のパターンなのだ。

 そして、やはり仮面カイザーはやれていなかった。黒煙の中から飛び出してきた仮面カイザーが瞬時に四体の怪人を斬り伏せた。あれだけの攻撃を受けたと言うのに、仮面カイザーには傷一つ付いていない。

「馬鹿な!?」

 チューリップ男がまたしても“お約束”の台詞を吐いた次の瞬間、チューリップ男の隣にいたザリガニの怪人がこれまた “お約束”通りに斬られて灰と化した。

「くっそぉぉぉっ、このバケモノめぇっ!!」

 怪人達が自分達の事を棚に上げて悪態をつく。

「御大将、奴にダメージを与えるにはどうすれば!?」

 どうすればと言われても。あれだけの攻撃を受けて無傷ではもはや打つ手が・・・・・・いや、一つだけあるぞ。

「カイザーブレード・・・あれなら仮面カイザーにダメージを与えられるはずだ! あれを奪う事さえ出来れば・・・」

「しかし、一体どうやって!?」

 その時、カブトムシ(幼虫)男が前に進み出た。

「俺に任せろ」

 カブトムシ(幼虫)男はそう言うと、白い塊を取り出した。

「と・・・豆腐だと!?」

「これはただの豆腐じゃない、木安商店の・・・・・・木安豆腐っ!」

 豆腐を飲み込んだ瞬間、カブトムシ(幼虫)男の体が膨らみ、内側から破裂した。

「チェンジ・・・ビートルっ!」

 びちゃびちゃと周囲に肉片と体液を撒き散らしながら、カブトムシ(幼虫)男は、真紅のボディのカブトムシ(成虫)男へと姿を変えた。どうでもいいが変身の仕方がグロすぎる。

「博士が言っていた・・・木安商店の木安豆腐に含まれる成分は俺の体を急激に成長させ・・・そして!」

 突然カブトムシ(成虫)男が視界から消えた。そして次の瞬間、さっきまで立っていた場所から遥かに離れた位置にカブトムシ(成虫)男が現れた。

「この姿になった俺は、目にも止まらぬ超高速移動が可能となると!」

 カブトムシ(成虫)男の手には、カイザーブレードが握られていた。

 仮面カイザーも驚きを隠せないようだ。怪人達から歓声が上がる。

 だが、突然カブトムシ(成虫)男がガクリと膝をついた。

「くっ、やはり身体が自然に成虫になるのを待たずに、無理矢理成虫になるのは、負担が大き過ぎたようだ」

 カブトムシ(成虫)男の身体から、ぱらぱらと灰が零れ落ちる。

「受け取れぇぇぇっ!」

 カブトムシ(成虫)男は灰になりながらも、最期の力を振り絞ってカイザーブレードを投げた。

「よっしゃ、任せろ。ワシがキャッチして・・・ほげえぇぇぇっ!?」

「い、イワシ男ぉぉぉーっ!?」

 カブトムシ(成虫)男が全身全霊を込めてぶん投げたカイザーブレードは、キャッチしようと走りよったイワシ男の腹部を貫通してコンクリートの地面に突き立った。どてっ腹をぶち抜かれたイワシ男が一瞬で灰と化す。

 イワシ男・・・何でお前はカイザーブレードをキャッチできると思ったんだ!! ・・・・・・お前の両手はヒレなのに!

 二体の死を無駄にするわけにはいかない。俺達はカイザーブレード目がけて走り出した。俺達の意図に気付いた仮面カイザーも慌てて走り出したが、俺達の方が早い。

 カイザーブレードまでの距離がぐんぐん縮まる。あと少しだ。あと少しで剣の柄に手が届く。

「もらったぁぁぁっ!!」

「そうは・・・させるかぁぁぁっ!!」

 仮面カイザーが思いもよらない行動に出た。なんと仮面カイザーは、カイザーキックでカイザーブレードを粉々に打ち砕いたのだ。

「これでお前達に打つ手はない、上手く逃がしたつもりかもしれないが、お前を葬ったら次は竹内君とブラックローズの番だ」

「そんな台詞は俺を倒してから言え! あいつらの所へは行かせな・・・」


 “ガラガラガラガラ!”


 その時、どこからともなく台車を転がす音が聞こえてきた。

「持って来たでー!」

 あぁもう・・・最悪のタイミングで戻って来やがって!

 恵が台車を押しながらアジトから戻ってきた。台車にはバズーカ砲の様な武器が載せられており、その無骨な黒鉄色の砲身には、自己主張の激しい金色の文字で、こう書かれていた・・・〈ウルトラハイパーグレートジェノサイドデラックスバスターMk-2〉 ・・・・・・って、あんのかよ!? しかも2!?

「このバカ! えーっと、みっ・・・ミラクルスーパーギガントデストロイダイナミックバズーカだって言ったろうが!」

「ええーっ!? さっきと全然名前違うやん!!」

「違わねーよ! いいから早くミラクルスーパーギガントデストロイダイナミックバズーカ持って来い!」

「わ、分かった!」

 恵は台車を押しながら、慌ててもと来た道を引き返した。

 あのバカ! ウルトラハイパーグレートジェノサイドデラックスバスターMk-2は置いてけよ!

「逃がしはしない!」

「おっと、追わせるものか!」

「くっ、離せっ!」

 恵を追おうとした仮面カイザーの手足に、チューリップ男を始めとする、生き残っていた四体の怪人が、しがみついた。

「ここは俺達に任せて! 御大将も逃げてください!」

「お前達はどうするんだよ!?」

 俺の問いに、チューリップ男が笑顔で答えた。

「大丈夫、俺達は絶対に生きて帰ります! だって俺達全員、この戦いが終わったら・・・」

 ちょっ、チューリップ男、お前まさか・・・

「・・・・・・結婚するんです!!」

 ぎゃぁぁぁぁぁ!! 喋るなっ、もうお前は一言たりとも喋るなっ!! 死ぬから!! その台詞を吐く奴はかなりの高確率で死ぬから!!

「さぁ、逃げてください!」

「俺達に構わず・・・うぐっ!?」

「どうした!?」

 怪人達が苦しそうに呻き声をあげた。怪人達の身体からぱらぱらと灰が零れ落ちている。まさか・・・タイムリミットかっ!?

 くっ、一体どうすれば・・・

「正木っ!」

 その時、俺を置いて逃走したと思われた竹内が戻ってきた。その手には銀色の球体が握られている。

 あれは・・・・・・まさか!

「これをっ!」

 俺は竹内が投げた球体をキャッチした。

 なんだかんだ言って竹内とは長い付き合いである。手にした球体を見て、竹内の意図を察した俺は、仮面カイザーに突進し、球体を仮面カイザーの変身ベルトに押し付けた。

「・・・・・・擬態しろコノヤロォォォォォ!」

 球体がもぞもぞと形を変え始め、そして・・・・・・!!

「変身ベルトになった!?」

 仮面カイザーが驚きの声をあげた。球体は仮面カイザーの変身ベルトへと形を変えた。

 しかし・・・形はそっくりだが、実際に使えるのか? いや、迷っている時間はない!!

 俺は変身ベルトを腰に装着した。

「頼むぜ・・・・・・変身ッ!!」

 体が光に包まれ、次の瞬間、俺は全身に銀色の装甲を纏っていた。


「(ニセ)仮面カイザー・・・・・・見参ッ!!」


 名乗りやポーズなんて隙を作るだけだと思っていたが、いざ変身してみると、ついポーズを取ってしまった・・・・・・ヒーロー恐るべし!!

 それにしても、変身能力までコピーしてしまうとは・・・・・・擬態能力ヤバすぎるだろ!?

 俺は仮面カイザー・・・いや、ここはあえて桜井さんと呼ぼう。変身した俺は、桜井さんと対峙した。

「悪の秘密結社の戦闘員なんかが・・・」

「うげぇっ!」

「軽々しく・・・」

「ぐはぁっ!」

「その名を・・・」

「げふぅっ!」

「名乗るなあっ!」

「ぎゃぁっ!」

 桜井さんは手足にしがみつく怪人達を振り払うと、もはや精根尽き果て動く事もままならない怪人達を踏みつけて、全員灰にした。

「どいつもこいつもっ・・・悪は・・・全て抹殺する!!」

《ククク・・・オロカナチキュウジンドモメ! コノホシハ、ワレワレガシハイスル!》

「抹殺って・・・正気なのか桜井さん!? 何でそこまで!?」

《ダガ、ワレワレハ、ジヒブカイ・・・オトナシクコウフクスルナラバ、ワレラノカチクトシテイカシテ・・・・・・ッテ、オレノハナシ、キイテル?》

「悪と語る舌は持たないと言った!!」

《オイ・・・・・・シカトスンナ、アホドモ! イマ、コノホシニトッテスゴクジュウヨウナハナシヲ・・・》

「さっきから・・・」

「うるせぇ!」

《ウゲェェェェェ!!》

「ここで戦うのを止めたら・・・悪の陰謀に屈したら・・・私は正義のヒーローでいられなくなる!!」

「その為に・・・クラスメイトを殺すって言うのか!?」

「・・・・・・フられた腹いせなんかの為に、大勢の怪人を引き連れてクラスメイトに襲いかるような奴が言うな!!」

 出ねぇ! ぐうの音も出ねぇ!!

「すっ・・・すみませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」

 俺は思わず桜井さんに土下座した。俺の渾身の土下座がコンクリートの床に亀裂を入れる。仮面カイザーのスーツすげぇっ!?

「悪いと思うなら、その命で償え!!」

「桜井さん、俺は今から・・・・・・自分の事を棚に上げるっ!!」

「えっ?」

「正義のヒーローでいられなくなるだか何だか知らんが、クラスメイトを殺さなきゃ守れない正義なんざ、言語道断! 笑止千万! 本末転倒! 愚の骨頂!!」

「くっ・・・言わせておけば!! だいたい、正木君だってクラスメイトの私に危害を・・・」

「アーアー、聞こえなーい聞こえなーい!!」

「いや、正木君だって私に・・・」

「アーアー、聞こえなーい聞こえなーい!!」

「まさ・・・」

「アーアー、聞こえなーい聞こえなーい!!」

「くっ、なんてヒドい棚上げなの・・・」

「だいたい、さっきから聞いてれば、“全て抹殺する”だの、“命で償え”だの“本当は愛してる”だの・・・・・・それは、悪役(こっち)の台詞だろうがっ!!」

「最後のは言ってないけど!?」

「とにかく・・・桜井さんのやろうとしている事は、正義のヒーローがやって良いことじゃない!」

「黙れ!! 正義のヒーローは・・・悪は絶対に許さない!!」

 ヒーローソングのフレーズみたいな事言いやがって。

 何が桜井さんをそこまで頑なにさせているのか知らないが、正義のヒーローであろうとする事が・・・仮面カイザーであろうとする事が、桜井さんをおかしくしていると言うのなら・・・この俺が仮面カイザーを叩き潰し、桜井さんを歪んだ正義の呪縛から救うのだ!!

 ファイティングポーズをとった俺を見て、桜井さんは心底呆れたように言った。

「一般人が私に勝てるわけないじゃん。馬鹿な真似はやめたほうがいいよ?」

 桜井さんの言う通りかもしれない。だが馬鹿が馬鹿な真似をするのは自然の摂理! 肉食獣が肉食をべずにいられないのと同じ事なのだ!

 俺は、口から腹わたブチ撒けんばかりの勢いで叫んだ。

「仮面カイザー・・・・・・今日がお前の最期の日だぁぁぁぁぁーっ!!」

「いい事教えてあげる。私達の業界では、敵にその台詞を言われて、本当に最期を迎えたヒーローはいない!!」

「うおおおおおおおおおっ!!」 


 俺は、拳を振り上げ、桜井さんに突進した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。