一話
わたしが連れていってあげる
[行き先は、永遠の楽園]
一人の少女が、棺から目覚めると、視界にはいっぱいに人の顔がありました。
少女は驚きましたが、よく見ると見知った顔ばかりでちっとも怖がる必要なんて無かったのです。
人々は、声を上げ手を叩きひたすらに喜んでいます。
その中のやたら美麗な顔した青年が、少女に話し掛けました。
「僕は君に運命を感じた。どうか、僕の妻になってくれないか。」
少女の手をとり、青年はキスをしました。少女は驚きあきれて言葉を無くしていました。
すると、辺りの人々は言います。
その人は、あなたの命の恩人なのだ。
是非とも、妻になりなさい。
「そうとも。さあ、僕の城に行きましょう。」
そうして、少女の意思とは無関係に(と言っても、人々は最初から少女の意見など聞く耳もないのです)彼女は青年の妻になりました。
馬に乗せられて、少女はされるがままに城に着きました。
青年に手を引かれ、中に入りますと沢山の人々がずらりと一列に並んでいます。
少女は、女たちに連れられ風呂に入り服を着せられ髪も整えられました。
服は、白いドレスです。女たちは、少女の黒髪を酷く珍しがって、何度も何度も梳かしました。
着飾られて、少女は広い部屋に連れていかれました。
そこには、さっきの人々が椅子に座っていました。
彼らは、拍手で少女を迎えいれました。
人々はある一点を中心にしてぐるりと取り囲むように座っています。
中心には綺麗な服で着飾った青年がいました。
少女が青年のもとにたどり着きますと、また拍手がおこりました。
青年は何か呪文のような言葉をつらつらと言いました。
拍手がおこります。
青年は少女の頤に手を添えて、口づけをしました。
また、拍手がおこりました。
少女は、女たちに連れられて部屋に案内されました。朱色の扉を開けると、中は広い部屋でした。
女たちは、一列に礼をすると消えました。
少女が部屋一面を見ると、一つ目立つものがありました。
近寄ると、それはたしかに棺だったのです。棺には花が溢れていました。
少女が立ち尽くしていると、後ろで扉が開く音がしました。
青年です。
青年は、少女の隣まで歩いてきました。
青年はこれ以上嬉しいことはないぐらいの笑みで言いました。
「これは君のベッドだよ。」
「素晴らしいだろう。その花だって魔法で枯れないんだ。」
「君にぴったりだろう?」
さも当たり前で、同意のみ求める青年の言葉に少女は何も言えませんでした。
つづく