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短編集  作者: 華織
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家に帰って来たら飼い猫がただのイケメンになっていた。

今日はいつもより多く仕事を押し付けられ、帰宅時間が遅くなってしまった。

一人暮らしが寂しいからって拾ってきた捨て猫がお腹を空かせているに違いない。

猫を拾ったのは二ヶ月程前のことだ。

公園にて、お決まりの段ボール箱に入れられていた。

段ボールには、猫の事が事細かにかかれていた。

名前だとか、誕生日だとか、生後何ヶ月だとか、上げるキャットフードの種類だとか。

しかし、その夜は飲み会で酔っていた私は、まんまと猫を拾って帰った。

正直、その時は猫でなくとも拾っていたと思う。

犬でもうさぎでもハムスターでも小鳥でも。

上京したての私の不安や寂しさを紛らわすことが出来るなら、なんでもよかったのだ。

そうこうしているうちに、家に着いたようだ。ドアの鍵を開け、扉を開ける。


「ただいま。」


「あ、お帰りなさい。今日は遅かったですね。また仕事押し付けられたんですか?」


いきなり、知らない男が返事をしてきた。

私は勢い良くドアを閉めた。


訳がわからない。


私は泥棒避けも兼、毎日家を出る時や帰って来る時には挨拶をする。

当然ながら返事は無い。

あるとしても飼い猫が一声鳴くだけだ。


まさか今日に限って返事が帰って来るとは思わなかった。

泥棒だろうか。


私がドアの前で考えると、突然ドアが開き、男が出て来た。


「どうしたんですか?上がったらどうですか?」


「貴方……何なの?どうして私の家に居るの?あ!私の飼い猫に手は出して居ないでしょうね!」


私はやや怒鳴り気味に言う。

すると、男が啜り泣き始めたではないか。


何なんだ。私が一体何をしたというのか。

泣きたいのはこっちの方だ。

帰って来てただいまと言い、それを泥棒(仮)に返事され、しまいには泣かせてしまって。


何なんだこの男は。なぜあの程度の口調で泣くのか。

メンタルか。

メンタルが限りなく弱いのか。

顔は整っているのにもったいない。

これがあれか。

これが俗に言う『残念なイケメン』なのか。


「そうですか……そんなに僕を心配してくれているのですね……。」なんだこいつ。


「はぁ?私が心配しているのは私の可愛い可愛い飼い猫なんだけど!何勘違いしてんの!?」


ついついまた強い口調で言ってしまった。また泣き出すだろうか。


「僕がその、可愛い可愛い飼い猫です。」




「はぁぁぁぁぁ!!!!?」




あれか、ただの変態か。

この場合は警察で良いのだろうか。

私は急いで携帯電話を取り出した。


「ちょ、待って下さいよ!本当に貴方の飼い猫ですって!」


「じゃあ証拠をだしなさい!」


「わかりました。では、貴方が今から僕に問題を出して下さい。それにすべて正解して見せます。」

私は、彼に問題を出した。

飼い猫の名前、飼い猫の年齢、飼い猫の模様、食べているキャットフードの名前、よく寝る場所、好きな玩具など、私か飼い猫しかわかるはずのない問題を出した。

しかし、あろうことか彼は全問正解した。


「どうですか、これで文句ないですよね?」


「うん。あとさ、今思ったんだけどさ、私の目の前で猫に戻れば良かったんじゃ……。」


「あ………。」


私の可愛い可愛い飼い猫は、可愛いと同時に馬鹿だった。

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