ある科学者
SFなの……か……?(もどき?)
ある科学者が、人間そっくりなロボットを開発することに成功した。
見た目が人間そっくりなところもだが、なんと、驚くことにそのロボットには感情がきちんとあるというのだ。そのロボットは多くの人々から称賛を得たが、一部の人々からは厳しい批判を受けた。
本来ロボットは、人間の生活を豊かにする為に造られてきた物である。
そのロボットが、感情を持つ。
すなわち、ロボットは人間よりも優れた存在になってしまうという訳だ。
人々はいつかロボットが争いを起こすのではないかと日々心配し、科学者に冷たく罵声を浴びせた。
最近では署名を集めているようだが、科学者は全く気にしていないようだった。
ロボットは純粋だった。
道を歩けば困っている人を手助けし、家に帰れば主人の世話を文句一つ言わずに済ませる毎日が、ロボットにとっての日常だった。
それに、ロボットは幸せだった。
例えどんなにこき使われようが、それが自分の生きがいで、存在価値なのだ。
それに、人の役に立つことで、自分がまるで人間になった気がした。
しかし、ある日を境に科学者はロボットに姿を見せなくなった。
ロボットは困惑した。
とりあえず、至るところを探し歩いた。
何年も何年も探し回った。しかし見付からなかった。
ロボットは悲しかった。
なにせ、消えたのは自分を造った人間である。
ロボットは、人間に例えると、両親を失ってしまった時の感情になった。
それと同時に、彼のことは忘れてしまおうとも思った。
また、ロボットは知っていた。
自分の身体にはリセットボタンがあることを。
まさか自分自身で押すことになるとは思ってもみなかったが、ロボットは躊躇うこと無くボタンを押した。
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例の科学者がロボットを処分したらしいという噂を僕は聞いた。
その科学者のことはわからないが、有名らしい。なんでも人間そっくりなロボットを発明しただとか。
しかし、妙な偶然というのはあるものだなと思った。
その科学者の名前と、僕の命の恩人の名前が全く同じなのである。
僕の恩人は、何年か前に僕が倒れているのを助けてくれた人だ。彼は医者で、あのままだったら僕は死んでいたという。
彼に手術された僕は、全ての記憶を失っており、今は彼の身の回りの世話をしている。
そして今、僕の身体には妙なボタンのような物が付いている。
おそらく、これが手術という物なのだろう。
いつか、このボタンを押してみようか。
僕=ロボット
僕はそのことを知らない。
はたして、ボタンはどこに付いているのだろう。
科学者消えた訳が自分でもわからん。