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Cap7 culprit

二人で向かった先はここからいつもの道を通っての学校。


校舎の電気は全て消えていて俺には風の音しか聞こえない。

綾さんの方は反応が強くなっているとだけ言いながら真面目な顔で校舎へ左手を差し出した。

その左手が差し出された先にはもやのような何かはっきりしないものがあった。

その靄は今まで空中を漂っていたが次第に形を作り出し,やがて親玉へと変貌した。


確かにこいつの言っていることは難しい。

だけど最近のこいつは更におかしかった。


「なぁ,内田。」


そこにいたそいつはやっぱりいつもより一層何か危なそうなオーラをまとっていた。

まるで何かを呪いたがっている様に見えた。

綾さんはそいつにすかさず人差し指を向け何か小さな水滴らしきものを内田に放った。

綾さんの顔に驚きが表れたのもその瞬間で。

その水滴を一瞬にして蒸発させてしまう位の熱気が内田の周りを渦巻いていた。


「まずい…」


それだけ言うと綾さんは地面に手を置き,そこから光の檻を出し内田をその中に入れた。

俺は目の前で起こるSFか何かのCGみたいな光景にただポカンとしているしかなかった。

そのポカンとしている間に内田の周りの檻から煙が立ち上り,そして檻は消滅した。

その煙が晴れる頃には内田は内田では無かった。


「亜種X−CV265DR…」


綾さんの言葉の意味は分からなかったが俺たちの目の前にいた内田はわしよりも大きくて頑丈そうな翼にクロコダイルのような顔,そして強靭そうな体。


まさにドラゴン(竜)だった。

それも俺がゲームなどで見るような感じではなくもっとゴツく,どちらかと言うとワニの進化系のような姿がゆっくり下降して…


「ミラージュ!」


そんな綾さんの呪文で意識を取り戻した俺は竜の吐き出した炎から避けることも出来ずに棒立ちだった。

綾さんの唱えたバリアのような物が俺の手のすぐ届く場所で炎をどうにかはじき返している。

しかし相手の竜が自分の吐いた炎の中へ突っ込み俺に突進してきた時にバリアは粉々に砕け散った。

しかし竜は俺の体に触れずに…というよりも触れないように飛んでいった。

何故だ?

俺の頭に何か引っかかるものがある。

何か理由があるはずだ。

岡田が攻撃してきたのも遠距離だったし…今回だって…

俺に触れるとまずい理由…。

俺はこの理由が分かってしまった。


俺の肩にある抗体。綾さんの言う一番強い抗体。

綾さんは竜の吐く炎をどうにかバリアではじきながら防戦一方だ。

校庭が火の海へと変貌している。

どうせこのままなら俺が行動すればいい。

やればいいことは大体分かっているし単純明快だ。

俺は未来を変えられるんだろ?

だったらこんな竜倒すのくらいわけないさ。


肩からあいつに体当たりしてやればいい。


そんな考えで良いのか冷静に考えれば思うだろうがこんな灼熱の場所で冷静になっていられるほど俺はクールじゃない。


「綾さん!あいつを地上に降ろして下さい!」


いきなり話しかけられた綾さんはバリアを使い炎から身を守っていたが俺の考えが分かったようで一回小さく頷くと何か呪文を唱えていた。


上から何かが落ちてくる。

…でっかい氷の塊だった。

竜はそれに気付いて上へと炎を吐いたが上に吐いた炎の衝撃で体はノーガードでしかも地上付近まで下降していた。

いける。


俺はラグビーもアメフトもやったことが無いがやけくそでそいつに肩からタックルしてやった。

竜の腕にヒットした俺の肩からは無色の波状の輪が現れ,その輪がやがて空間を作り出しブラックホールのような穴が出来た中へ竜は吸い込まれていった。

…終わった?



次の日の学校はやけに普通だった。

全く焼け野原になんかなっていない学校。

相変わらず話しかけてくる金本。

そして昔のように少し難しい用語は使ってくるが,俺にも理解できる用語も話せる内田。

何もかもが元通りだった。



あの後俺は綾さんと二人で校庭で敵を倒した後の余韻を味わっていた。焼け野原となった校庭で。


「本当に凄いですね。自分から体当たりなんて。」


「そりゃワクチンが俺にもあるんだから俺が体当たりしても効くんじゃないかななんて思って。」


しかし怖かったかどうか聞かれると前者だなこりゃ。

あんなもんが俺の命を狙って来たとなると未来の俺はどれだけ凄いことになっているんだか。


「言えません。」


釘を刺されたが,これで悪役はこの時代にはもういないと言うことだ。

それは保証できるらしい。

安心して眠れるぜ全く。


校庭や岡田,内田等この事件で起こった事は全てもとの状態に書き換えられ…つまり俺と綾さん以外には何も変わった事は無かった。

ここまでの数日間が嘘のように平凡な日々だった。


「俺が未来を変える…か…。」


結局のところ俺に本当にそんな能力があるのかどうかも,次にいつ狙われるかも分からない。

でも一つだけ確かなことは


俺の知り合いに未来人がいて,それは夢物語でも,夢でもない現実だと言うことだろう。



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