Cap6 truth
俺がそこに着くと岡田はそこでテニスラケットでボールを器用に空中に上げたりと雑技団のようなことをしていた。
こいつはテニス部でまずまずな成績を残していた。
「相変わら運動神経がいいな。」
俺がそう言いながら近づくと岡田はこちらを向き,俺の顔をみると鼻で笑ってきた。
いつもはどちらかと言うと温厚な性格だった岡田なので少し驚いた。
「何かついてるか?」
そういうと岡田はボールを宙に弾くとテニスラケットを手の中にしまいこんだ。
…何?
今岡田の手には確かにテニスラケットがあって…そういやボールだって空中にさっきあげたっきり戻ってきていない。
んなアホな。
俺はなんだか危ない予感を体で感じ急いで自転車に乗ろうとした。
だが自転車なんて無い。
自転車どころか俺が後ろを向くと俺の後ろの景色全てが無になっていた。
俺の振り向いた所には真っ暗な闇以外何も無い。
岡田のほうを向くとテニスラケットはいつの間にか銀色の鎌になっていてそれはまるで死神だった。
…なるほどね…。
こんな状況で納得してしまう俺もどうかと思ったがなんにせよこの状況が理解できてしまったのだ。
あいつが…岡田が俺を狙う分子…まぁウィルスに操られている。
そんな所なんだろう?
あいつは親玉か子分のどっちかだ。
…標的は……多分…俺。
「お前が俺を狙って未来からやってきた悪役か。」
自分でも真面目に声が出てるかは分からない。
これでも恐怖感はかなり感じている。
あの鎌は怪しい光を放ちながら少しずつ…今も大きくなっている。3mはあるんじゃないか?
あんなんで襲いかかられたら俺が鋼鉄でも切られちゃうだろうさ。
岡田も徐々に大きな熊のように変身していた。
鎌を持った熊の死神ね…んな無茶苦茶な。
「…」
岡田は黙ったまま鎌を少し動かした。
惚けている暇は無い。
俺の鈍い運動神経が限界速度で働いたが俺が右に転がると元いた場所には鎌の切っ先が一閃,鈍い空気の振動音を響かせ空間自体を切り裂いていた。
アホか?
今鎌からビームみたいに何か光線が飛んできたぞ?
俺の相手は本物の死神か?
というか俺の何がそこまで奪いたいんだって?
未来を変える能力?
余計なもん具えて産むなよお袋。
もう岡田と俺以外は何も無い,地面も空も真っ暗だ。
俺はこんなときでも冷静さを取り戻すことが出来たのがこの場の奇跡だと思っている。
さっき上に飛んでいったテニスボール。
あれが何も無いわけないだろう…。
俺の予測は正しく上から何かの降下音が徐々に大きくなっていた。
見ると…隕石?
おいおい…俺の目の前にいる死神は何かのゲームのラスボスか?
強すぎるだろう?
まるでRPGで冒険始めの主人公がいきなりラストダンジョンにのこのこやってきたような格の違いだぜ?
もう避けられやしない。最初の一撃は俺の全能力の抵抗だ。
もう動けやしない。
だが隕石は俺の体に触れるか否やの場面で一時停止した。
するとそのまま隕石は意思を持ったかのように死神の方へ一直線に飛んでいきそして直撃した。
一体何が起こったんだか。理解するのはそう難しくも無かった。
隕石の煙幕が徐々に晴れていきそこには二つの影があったのだ。
一つは岡田。
もう一つは間違えるはずも無い。
紛れも無いクラスの人気者兼未来人。
浅川 綾。
「大丈夫ですか?」
優しく手を伸べてくれた彼女に俺は何をしてでもお礼をしたい気分だった。
というかさせてください。
「それよりごめんなさい…分子の動作状況を確認できませんでした。彼は子分レベルの方でいわゆる手下です。親玉ではありません。あの程度なら私がすぐに倒せますので出来るだけ私の近くに…手でも掴んでいてくれればうれしいです。」
手を握れと言われているようなもんだ。
俺はこの幸せ状況を楽しむような余裕を残念ながら今持ち合わせていないため機械的に綾さんの手を握ることしか出来なかった。
「それじゃあいきますよ!」
そういうと隕石でだいぶヒットポイントを減らされた死神に綾さんは指差しをして何か…"クランブル"だかなんだか呪文を唱えたように聞こえた。
その綾さんの呪文はRPGで表すと最高位の黒魔法のようなもので無数の光が死神に突き刺さった。
それだけであっという間に死神はいなくなりこの無の空間だっていつの間にか公園跡地に戻っていたし自転車もあった。
岡田の姿は無かったがそこには綾さんが俺と手を繋いだままの状態で立っていた。
「大丈夫ですか?良かったです…無事で…。」
そう言うと綾さんは涙目で俺を見てきた。
そんな目で見られちゃったらどんなことされても許せますよ。…そういえば岡田は無事か…?
「彼は大丈夫です。この事とは一切関係なく…たぶん自宅にいると思いますよ。彼にこの記憶は一切ありません。」
なるほど。ウィルスに感染された本人は何も気づいちゃいないのか。
ウィルスは怖いね。
「ご迷惑おかけしました」
綾さんはそういうとぺこりと頭を下げ
「これでもう一人。親玉だけです。それにもう人物の確定は出来ました。」
それは誰なんですか?
俺がそう問い帰ってきた言葉には意外性も含まれていたが俺が納得できないような相手でもなかった。
「その親玉に感染された本人は無事なんですよね?」
そういう問いに綾さんは絶対大丈夫ですとガッツポーズをしなが答えてくれた。
そいつをウィルスから解放する為に俺たちはある所へ全速力で向かった。
早くウィルスから開放してやるために。




