Cap5 question
昨日は何か凄い出来事があった気がしないでもない。
いきなりの未来人発言を喰らい,さらに俺がなぜか狙われていてその悪役から俺を守るために彼女は未来から来てくれたのだと。
俺は今年厄年か?不幸の年月を歩もうとしている予感がする。
こんな時なら財布を落としたくらいの不幸なんか軽く笑ってすごせるだろう。
…嘘だな,さらに不幸が増えて欲しくはない。
そんなこんなで,俺は今,考えに考え寝むれないまま朝の3時を迎えてしまったわけだが,その間色々な疑問が湧きに湧き出て今綾さんがいたら質問攻めになっていたはず。
…そういえばいつも綾さんって呼んでたけどいきなり綾さんよりやっぱ苗字で呼んだほうが良いんだろうか?
…ってそんな事考えてる場合じゃないだろ?俺。
なんせ俺の置かれた状況なんて誰がしっかり俺が納得できる形で説明できるのか。
結局一睡もしてない俺はどうやら断末魔の叫びを聞いてしまったかのような顔つきだったらしく登校時に綾さんにおはようの天使スマイルより先に心配されてしまった。
あなたは元気ですね。ってか未来人とはねぇ…。
そんな事を考えつつも大丈夫ですよと答えると,まるで1000Wの電球のような輝きスマイルを放って小走りで走っていった。少なくとも俺にはそう見えた。
スタイルがいいのは未来人特有なのか等と考えてるうちに俺は睡魔などとっくに踏み倒していつもの調子にほぼ戻っていたが昨日のことがいくらかストッパーにはなっている。
考えても見ろ。未来人だぞ?
さてさて俺の周りはどうしちゃったんだ?
「お前は浅川 綾に昨日何をした!」
教室に入っていきなり詰め寄るな金本。
顔が近いんだよ。顔が。
べつに何も疚しい事はしてないし,というかお前が遅刻ギリギリどころか俺より早く学校に来るなんて意外だな。
いや。その前になんでお前がそこまで知ってるんだよ。やっぱりストーカーか?
「俺が気持ちよく清清しい下校を味わっていたらお前と浅川 綾が二人で。いいか?二人っきりでいたんだぞ?眠れるもんか!」
寝てないのは俺も一緒だ。
「とにかく事情を俺が分かるようにしっかり,かつ簡潔に難しい言葉は使わずに説明しろ!」
そんな金本の要求を渋々受け入れ嘘を9割いれた説明をかなり真面目に聞いていた金本はすんなり納得した。
俺の説明はきっとこんな感じであったと思う。なんせ大嘘なんで口から出任せだ。
俺は帰りに財布を落としてしまった。
探しているうちに下校中の綾さんに偶然鉢合わせした。
優しい綾さんは俺と一緒に財布を探してくれていた。
すると財布は見事に見つかり俺はお礼として飲み物を奢ってベンチに座っていた。
それだけでなんと金本は納得したのだ。
単純で良いね。
俺なんか複雑に悩んでるぞ。これでも。
とりあえず授業の時間を使って綾さんに質問することをまとめ,もう一度今度は俺から誘って質問させてもらうことにした。
綾さんはあっさりOKしてくれ再び昨日のベンチに二人で腰掛けた。
今日は金本が下校してから時間を置いた完全な作戦だ。
「昨日のことなんですが…」
俺が言い出すと綾さんは分かっていたように
「まず,私がどれくらい先の時代から来たかはいえません。それとあなたを狙っている分子は現在判明して
いる物で"二つ"です。一つは子機,もうひとつが親機と考えてもらっていいです。これ以上の分子が今現在
のこの時代に存在している確率はこの時代で言う0.000132%です。」
俺はこの人の予知能力的力にびっくりした。
いやはや俺がしようとしていた質問の一つ目は答えられてしまった。
未来人だから当たり前なんだろうか?
びっくりしている顔が分かったのか綾さんはにっこり笑い
「他の質問内容は忘れちゃったのでお願いします。確かあと2つだったと思いますが…」
ビンゴ。
確かにあと2つだ。
この人は未来人じゃなくて透視とか相手の意思が読めるタイプの超能力者じゃないか?もしくは未来人兼超能力者。
「じゃあ質問です。俺の肩に抗体があるって言いましたよね?それってどのような物なんですか?…出来れば高校生に理解できる程度に説明していただければ…」
いきなり大学生でも分からないレベルの用語を使用されても困るのでね。
勉強は俺の不得意分野だ。
得意分野は寝ることか?
「その抗体は私の持っている中で一番強くて頼れる抗体…ワクチンで種類はACT-X167Iと言います。効力とし
ては…なんていえばいいんでしょうね…あなたにウィルスが直接触れようとしたときには相手体内に侵入し
ウィルスを破壊します。あなたの皮膚上約0.00012mmの膜を張っています。もちろんウィルス以外の固体には無害です。ですのであなたにも一切害は無いので安心してください。」
とりあえず良かった。俺は肩から何か得体の知れないものが生えてきたりしないか正直心配だった。
綾さんを疑うんじゃないが抗体っていう名称が気になったのだ。
辞書も引いた。
「安心しました。じゃあもう一つ…その分子なんですが,誰…というか…どんなやつか分かりますか?」
そういうと今までの綾さんの天使スマイルは一気に翼の無くなった天使同様に笑みが無くなってしまい俯いてしまった。
「…ごめんなさい…。まだ確定できないんです。相手がどんな能力でどんな人でいつ攻めて来るか。こちらから攻めることも考えたんですが,私が行ってもし相手が囮だったら…あなたに危険が及んでしまいます。」
そこまで俺は狙われてるのか…段々嫌な予感がしてきたが…。
「それでも私が出来る限り守ります!」
その一言で大分勇気付けられます。ところで綾さんってどうやって戦うんだろう?
散乱銃でも隠し持ってたり…しないか。
そんな感じで俺の質問タイムは終わった。
俺は綾さんに缶ジュースを一本奢ってあげるとのろのろと家路についた。
ジュース一本で喜んでくれた綾さんの顔が頭を過ぎる。
家に帰ると俺はベッドに仰向けに寝転がって色々整理してみた。
俺の頭の中でだけど。
そうしているうちに携帯の着信音が鳴り始めた。
そういや綾さんのメルアドまた聞きそびれた。
電話の相手は中学で一緒だった岡田でよく遊んだいわば親友だ。
あいつのほうが何をやるにも優秀だったから俺は何やっても負けてたが。
「おう元気か?突然で悪いんだけど今からあそこ。来れるか?」
あそこ。というのは中学のときから俺が岡田といつも遊んでいた場所で用水路近くの公園跡地だ。
正確に言えば公園なんだが,何も無い。おまけに地面はでこぼこで球技にも不向き。
だからこそ人気が少なく遊びやすいのも事実ではあったが。
俺はまだ6時にもなっていない時計を確認し了解の意を伝えると自転車に乗ってその公園跡地へと向かった。




