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Cap2 Happen to meet you

その綾さんの席は俺からは近くは無く,かといって遠くも無く…

ちくしょうなんて思ったって空いてる席がそこしかないんだからしかたない。

その日は周りの女子と微笑みながら話したりしているようだった。

結局始業式なんていう形式ばったものやら教科書の確認等を済ませているうちに今日は学校も終わった。

明日から平常授業の時間割が俺の時間を支配してしまうわけで…。

俺の家は学校から徒歩で行けないことも無い距離にある中途半端な立地条件でバスを使うのも面倒なので徒歩で通っていた。

帰り道の途中に何かお宝スポットや一大イベントが用意してあってくれてもいいと思うんだが。

運命ってのは非情だね。

そんな考えていてもしょうもない事を考えていると運命が良いところを見せようとしたのか日頃の行ないか先方に綾さんが立ち尽くしていた。

これは話しかけるためのいい機会かも。そんな事を考えていると俺のそんな視線を感じ取ったのか彼女のほうがこっちに気づいたようでおぼつかない足取りでこっちに近づいてきた。

どう反応していいものか分からずに,とりあえず俺は よぉ と単調な挨拶くらいしか口から出なかった。

判断力がないのが恨めしい。

彼女がそんな俺を見てそのまま手に持っているメモを見るとにっこり笑って

「よかったぁ。やっぱりこっちで合ってたんだ。」

…はい…?…初めての会話が大分噛み合ってないのですが…。

「あっ!…えぇ…失礼。はじめまして。浅川 綾です。」

…どうやらこの方は天然属性のようですね。

それにしてもこっちで合ってたってのはどういう意味なのか。

もしかして俺に一目惚れ?

いやぁ照れますねぇ〜。

「…あのぉ…」

いつの間にか自分の世界に入ってしまっていたようで,彼女の声すら届いていなかったようだ。

「えっと…この時空…じゃなくてここの私たちが今立っている場所から最も短期間…いや,短時間で移動可能な駅ってどこでしょうか?」

…要するに最寄り駅ですよね?それなら…

そんな説明をしてここから徒歩5分くらいの駅の道案内をすると

「ありがっと!」

それだけ言って俺の肩をポンと叩き,駅の方向へ走っていった。

いやぁ…可愛いね。うん。

急に肩にポンっとやられるとくるね。こりゃ。俺のイベントも開催間近かな?


それだけの会話で打ち解けてくれたらしい綾さんは次の日の朝,俺が眠気に打ち勝とうと登校している時にも挨拶をしてくれてそのまま走って学校方面へ行ってしまった。

元気な人だ。

でも彼女の発言には何かと不備…というか説明されていない部分がある。

昨日の帰りに会ったときも,時空とかなんとか言ってた様な…。

そんな綾さんもたちまち学校では人気者になり,すっかり打ち解けていた。

学校で俺は主に横の席の金本といるわけなんだが,昼飯の時にそいつはこっちの席に弁当を置き

「お前は一体何をどんなことでどうしてたんだ?」

意味が分からん。

そんな文法すら曖昧な文章で,意味不明な質問をいきなりされても答えようがないってものである。

「だからなんでお前が朝,浅川 綾におはようってにこやか天使スマイルをしてもらってたのかって聞いてるんだ。」

なんだそのにこやか天使スマイルってのは。ってかお前は見てたのか。

お前はストーカーか。

そう言おうとした時にポツリと内田が呟いた。

「移行期間はもうすぐ。」

…たまにこいつは意味不明なことを言うが,今のもそれか?

というかいつから俺の背後にいる?

「完了。」

それだけ言って内田は廊下へ歩いていった。

今日は学食なのか?

金本の方に顔を向けると金本は口を半円状にあけていて

「なぁ…あいつ前々から変な奴だとは思ってたが,どうも最近磨きがかかったよな。」

確かに内田は元々難しい発言はしていたが,2年になってからはその発言すら難しいより意味を捉えにくい物に変わっていた。

俺の理解力の乏しさもあるのかもしれないが,その点は金本といい勝負であろう。

その後の授業を受けている間に何回綾さんを見てしまったか。

この人は俺に気があるのかもしれないなんて思っていた。

そんな事を思っていると6限の終わりを告げる至福のチャイムが鳴り響き部活にも所属していないため俺はさっさと家路についた。

この学校では一ヶ月おきに男子と女子の掃除が入れ替わり,放課後掃除をするのだが,偶数月は女子の担当になっている。

俺は呑気に今日のテレビ番組表なんかを思いながら歩いていた。

明日から起こり始める微妙な変化に今はまだ気づくはずもなく。


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