出せない手紙
大好きだった親友の、恋人を盗った。
私は、なぜか一人になった気がした。
私は親友に、手紙を書いた。
親愛なる人へ
私が貴女に手紙を書くのは、多分これが初めてでしょう。
今回、私がペンを握ったのは、自分勝手ながら、貴女に伝えきれなかった事を伝える為です。
では、一つ目。
今回の出来事において、私は後悔していません。
私はいつも、貴女の傍にいた。近くで、貴女の笑顔を、幸せそうな姿を見てた。貴女を尊敬し、信頼していた。
そして、私はいつも誤魔化していた。
自分自身の想いと、貴女たちに対する羨みを。
私は、ずっと貴女たちの近くに居たかった。
貴女たちの近くで、笑っていたかった。
貴女たちが幸せなら、笑っていられるのなら、それでよかった。
でも、貴女たちの前では、なかなか上手く笑えなかった。
二つ目。
今は、貴女が上手く笑えないのではないですか?
新しい道を歩もうとしている貴女にとって、疵を広げる、最低な行いになりますが、私にはそう感じることしかできませんでした。
三つ目。
私は、とても酷い事をした。
貴女に、とても酷い事を。
これから書く事は、言い訳にしか見えないかもしれない。「今さら遅い」って、思うかもしれない。
それでも、最後まで見て欲しい。
これが一番、伝えたい事だから…。
私にとって、貴女は『親友』で、彼は『とても遠い人』だった。
いつからだろう、貴女たちが『大切な人』になったのは。
「守りたい」と思うようになったのは。
人間って、怖いな。
守るためにつく嘘は、本当の言葉だと思わせるから。
でも、やっぱりそれは、長くは続かなくて。
つらくて、苦しくて。
貴女が幸せだったとき、貴女の目に、私はどう映っていたの?
ごめんね、私は馬鹿なんだ。
友達になってくれてありがとう。
『親友』と呼ばせてくれてありがとう。
ずっとずっと、傍に居てくれてありがとう。
またいつか、みんなで笑おうね。
貴女の友人より
これは、送ることのない、決して送れない手紙。
私はいったい、いつまで引きずれば気が済むのだろう。
嫌なものですね、自分って。