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実際にバターチャイは有る、作者は馬と雀、ウズラのヒナしか食べたことがない。美味しいよ、雀、丸ごとバリバリ食べるの。
夜の冷たい空気を吸い込み深呼吸をしながら言葉が転がる
「……元気だな」
シエルは笑顔で後ろを振り返り、小さく手を振る。「もちろんですとも!さあ、次の魔物はどこかなーっ♪」
明かりを手に軽やかに前を進む。黒猫は後ろからその元気に呆れつつも、弓を手に周囲を警戒する。
「さて、さっきのゴブリンが巣に戻ってたらやばいので、とっとと野営地まで行きましょう!」シエルは鼻歌混じりに言いながら、地図をぱっと見せる。「短距離で森を突き抜ける感じになってますが、だいたい…後2時間くらい歩けば着きますね!」
黒猫は肩のマントを整え、低い声で応じる。
「……2時間か。油断するな、森は広いし、昼夜の気温差も侮れん。」
「はーい!寒さ対策はバッチリですよ!」シエルは嬉しそうにホットスパイスをリュックに押し込み、軽快な足取りで進む。「黒猫さんもちゃんと防寒着着てますよね?霜焼けとか嫌ですよ!」
黒猫は小さく鼻で笑う。「……お前は元気だな。だが、その元気が助かることもある。」
茂みのざわめきに耳をそばだてながら、黒猫は矢を一歩前に構える。シエルはそんな黒猫の姿を見て、少し誇らしげに胸を張る。
「ふふっ、黒猫さん、頼りになりますね!こういう時は無口な方がかっこいいんですよね!」
黒猫は無言で影のように歩き続ける。その背後で、シエルの軽快な足音と笑い声が森に響き、寒々しい夜の空気をほんの少しだけ温めていた。
「……まあ、こいつとなら無事に野営地まで行けるだろう」と黒猫は心の中で呟き、視線を森の奥へ向けた。
シエルはちょっと振り返ってニコッと笑う。
「黒猫さーん!まだまだ元気出していきましょうねー!」
黒猫は肩越しにちらりと彼女を見て、影のように微かに笑んだ。
「ぁ、うさぎ……」
シエルは小さく息をつき、黒猫の方を見上げる。「黒猫さん、少し弓借りて良いですか?」
「……構わないが、気を抜くな」黒猫は淡々と答え、弓を手渡す。
小鳥は矢をつがえ、狙いを定める。獲物は小さいけれど、森の中の茂みを駆けるその姿は素早く、的は狭い。
弦を引き詰め、目をぎゅっと見開く。獲物の動きを追い、呼吸を整える。遠くへ駆ける小さな影に合わせて弓を引き絞ると、弦が「ぴん」と鳴り、指を離せば空気を切る音が森に響いた。
うさぎは小さな悲鳴をあげ、静かに息を引き取る。
シエルは少しだけ息を整え、黒猫の顔を見上げる。
「……ちゃんと、命を無駄にしませんでした」
黒猫は言葉少なに頷き、手元の弓を調整しながら影のように立っていた。
「……見ていた。無駄はなかったな」
森の中、凍てつく空気に小鳥の成功の余韻と、黒猫の静かな承認が交じり合う。小さな命を巡る緊張と静寂が、二人の間に確かな呼吸として落ちていった。
続きとして描くと、こんな雰囲気になります。小鳥の手際の良さと、黒猫の静かな反応を交えてみました。
「思ったより黒猫さんは軽い弓を使うんですね?片手だからですか?」
小鳥は矢を収めながら、うさぎの血抜きや毛づくろいを手早く済ませる。小さい手で慣れた手つきで処理を進め、獲物を無駄にしない意識が滲む。
黒猫はその様子を黙って見守る。
「……ああ。腕の制約もあるし、長時間持っても疲れない方がいい」
肩に掛けたマントの影で目だけが細く光る。
「なるほど……だからこそ、片手でも扱いやすい弓を選んでるんですね!」
小鳥はにっこりと笑みを浮かべ、獲物の手入れを続ける。
「ふふ、こういうの、結構楽しいです!食べることはもちろん、命を無駄にしないことも大事ですから!」
黒猫はその声に、わずかに鼻先で低く笑う。
「……お前、どんな場面でも明るいな」
小鳥は顔を上げ、弾むように肩をすくめる。
「はいっ!でも黒猫さんと一緒なら、怖いものもなんだか減っちゃいますから!」
森の静けさの中、手早く処理される獲物と、小鳥の元気な声。
黒猫はそんな彼女を、片腕の影を揺らしながら、静かに見守っていた。
獲物の処理を終えた小鳥は、手早く矢を片付け、肩に掛けた小さなリュックを確認する。
「よーし、これで携帯食も確保できました!黒猫さん、野営地まであと少しです!」
黒猫は軽くうなずき、沈黙のまま森の中を進む。
片腕の影が地面に落ちるたび、かすかな葉のざわめきが混ざる。
小鳥は楽しげに葉の上を跳ねるように進み、枝に引っかかった落ち葉や小さな生き物を見つけては小さく笑う。
「ほら、黒猫さん!冬眠前のリスさんですね!かわいい!」
黒猫はわずかに眉をひそめつつも、目を細めて小鳥の声を追う。
「……相変わらず無駄に元気だな」
森を抜けると、徐々に野営地の焚き火の煙が見えてくる。
「見えました!あそこですね、野営地!」小鳥は小走りで前に進む。
黒猫は静かに後ろから彼女を見守り、足元を確かめながら慎重に距離を詰める。
野営地に着くと、既に数本の焚き火がたかれており、他の冒険者たちが穏やかに談笑している。
小鳥は胸を躍らせ、焚き火の前に向かって手を振る。
「やったー!着きましたよ、黒猫さん!ここでちょっと休憩しましょう!」
黒猫は肩のマントを整え、片腕の力でリュックを背負い直す。
「……ふぅ、やっとだな」
小鳥の無邪気な笑顔に、森の冷気を忘れるほど、彼の胸はほんのり温かくなる。
野営地に到着した二人。これからは、焚き火の前で獲物を調理し、温かい食事と共に夜を迎えることになる。
小鳥は早速、焚き火に向かって調理の準備を始める。
「さあ、黒猫さん!今日の晩ごはんはこのうさぎのお肉です!ぷるぷるですよ!」
黒猫は、焚き火に照らされた小鳥の元気な姿を静かに見つめながら、心の奥で微笑んでいた。
焚き火の周りに腰を下ろした小鳥は、手早くうさぎの肉を串に刺しながら、周囲の冒険者たちに明るく報告する。
「おう、あんたら森を突き抜けて来たのか?」
「あぁ」「そうでーす!」と小鳥と黒猫が揃って答える。
「魔物とかに遭遇しなかったか?」
小鳥は少し大げさに手を広げ、目を輝かせて答える。
「しました!ゴブリン1匹、傷を負って逃げたので深追いしてません!ですが、3ヶ月前にここを通った時巣があったので、また小規模のグループができてるかもしれないです!なので、情報共有お願いしまーす!」
隣に座る黒猫は、焚き火の光に目を細めながら静かに頷く。
「わかった、提供ありがとうな、嬢ちゃん」
小鳥はにこっと笑って応える。
「いいえ〜」
火のはぜる音が二人のやり取りの間に静かに響き、森を抜けた緊張と疲れを柔らかく溶かしていく。
黒猫は小鳥の元気な声を横目で見つめながら、胸の奥でふっと安心感を覚えていた。
小鳥は串を焚き火にかざし、肉が香ばしく焼ける匂いを吸い込み、嬉しそうに笑う。
「さあ、黒猫さん、晩ごはんですよ!森の空気も冷えてますし、温かいもの食べて体力回復しましょう!」
黒猫は片腕でリュックを下ろし、焚き火のそばに腰を下ろす。
「……ああ、悪くないな」
小鳥の笑顔と、焚き火の暖かさ。
一日の疲れがゆっくり溶けて、野営地に静かな夜が訪れようとしていた。
小鳥は手早く焚き火の横に小さな鍋を置き、野営用のスパイスを混ぜ合わせて湯を注ぐ。香りが立ち上ると、マサラチャイのような暖かい香気が森の冷たい空気に溶けていく。
「黒猫さん、これ飲んでください!ミルクは持ってないのでバターで代用してます!香りだけで体も温まりますよ!」
黒猫は無言で視線を鍋に落とす。火で温められたバターとスパイスの湯気が、彼の顔に柔らかな光を落とす。
「……なるほど、悪くない」
小鳥は笑顔でカップに注ぎ、黒猫の前にそっと置く。
「ほら、あったかいうちに!森を歩いた後は冷えますからね!」
黒猫は静かに手を伸ばし、カップを受け取る。香りを吸い込むと、思わず眉間の力が抜ける。
「……温まるな」
小鳥は自分のカップを手に取り、火のそばで小さく体を丸める。
「ふふっ、これで明日の準備もバッチリですね!黒猫さん、体力回復しないとです!」
黒猫はカップを口に運び、熱さを確かめながら少しだけ微笑む。
「……お前の作るものは、いつも一手間あるな」
小鳥はくるりと振り向き、嬉しそうに笑う。
「だって、旅は楽しくないとですから!美味しいごはんと、温かい飲み物があれば、森の寒さも怖くないですよ!」
焚き火の揺れる光と、スパイスの香りに包まれながら、二人は静かに夜の野営地を過ごしていく。
小鳥「それに…寒さと空腹は最も冬の森では死が隣に居るんですよ…」
黒猫は小鳥の言葉に、焚き火の火をじっと見つめながらゆっくりと頷く。
「……お前、随分と真っ直ぐなことを言うな」
小鳥は少し恥ずかしそうに肩をすくめる。
「だって、旅していると分かるんです。寒さも空腹も、魔物も――油断したら命に直結するんですから。だからこそ、少しでも準備して、少しでも強くならないと!」
黒猫は静かに息を吐き、夜の冷気を吸い込む。
「……そうだな。お前の言う通りだ。無知で無防備なのと、覚悟を持って備えるのとでは、天地ほどの差がある」
小鳥は目を輝かせ、焚き火の光で揺れる黒猫の影を見上げる。
「だから……だから黒猫さんと一緒なら、もっと安心して旅ができるんです!生き延びる自信が少し増えます!」
黒猫は口元に微かな笑みを浮かべ、カップの温かさを手に感じながら静かに言う。
「……ふん。なら、俺もお前が無事に歩けるよう、最後まで影になってやる」
小鳥は胸の中で、ふわりと暖かいものが広がるのを感じる。
「はい……ありがとうございます、黒猫さん!」
森の夜は静かに、二人の小さな誓いと温もりを包み込んでいく。
焚き火の炎は小鳥の声に揺れ、黒猫の影を長く伸ばして、これからの旅路を静かに見守っていた。
個人的にマサラチャイはシナモン少なめが好き、砂糖多めで!
シエルの世界観
「世界はシルクのように暖かく包まれてるように見えても、その素顔は冷たい」(生存と冬と死、小鳥がたった1羽で生きていけないという比喩)




