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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠 聖
春はゆく

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ハッピーニューイヤー 冬の里

次、冬の里が出たらちゃんと名前出すよ、里の名前…

冬の冷えがまだ残る里の広場に、新年の朝が静かに訪れていた。普段は質素な祭りだが、今年はシエルが里にいるので、いつもより少し賑やかだ。アルヴィンは早朝から狩ってきた獲物を手際よく解体し、肉を切り分ける。豚、牛、鳥――色とりどりの肉片が並び、香ばしい匂いが空気を満たす。切った肉を小さな串に刺し、火の通りを確認するアルヴィンの動きには無駄がなく、目は真剣そのものだ。

「豚は病弱な子に回す。柔らかく焼くんだ」

シェリルが手早く串を整えながら言う。病弱な子やまだ雛の子たちは、柔らかく火の通った豚肉を手に取り、小さく口に運ぶ。噛むたびに口の中に広がる脂と香ばしさに、自然と笑みが零れる。

「元気な子たちは牛ね、カルビやロース。年寄りには重すぎるから気をつけて」

シエルは炙る肉の火力を魔力で微調整し、焦げすぎず中までしっかり熱が通るように工夫している。傍らの小鍋では野菜スープが煮え、キャベツやニンジン、季節の根菜がぷかぷか浮かぶ。魔力を少し加えたそのスープは、体の冷えた子供たちの手足を温め、優しい香りを漂わせる。

雛鳥たちは目を輝かせ、順番に串を手に取る。小さな手で器用に持ちながら、口いっぱいに頬張る。甘辛い鶏肉の香りや、炙られた牛肉の香ばしさ、柔らかく煮えた野菜の匂いが入り混じり、里の空気全体が祝祭の香りに包まれる。

年配の有翼人や大人たちは、柔らかく焼かれた牛肉や野菜をゆっくり味わいながら、子供たちの笑顔に目を細める。普段は静かな里の広場も、今日は肉を焼く匂いと子供たちの声で満たされ、温かさが漂っていた。

「はい、こっちも焼けたぞ」

アルヴィンの声に合わせ、シェリルが小皿に盛られた肉を子供たちに渡す。シエルも黙々と炙り作業を続けながら、時折、湯気の立つスープを子供の前に差し出す。雛鳥たちはその温かさに目を細め、無邪気に笑う。

里の古い木々の枝先に、冬の名残の霜が光る。地面には雪の残りが少しだけ溶け残り、水滴がキラリと光る。その冷たさを感じながらも、子供たちの手と口は温かさで満ちている。焼けた肉を頬張る小さな手、スープをすくう指先、満足そうに微笑む顔。すべてが、この里の新年を形作る光景だ。

シェリルは手早く片付けつつ、子供たちの動きに目を配る。食べるペースの遅い病弱な子の口元をそっと整え、雛鳥がこぼしたスープを小さな布で拭く。その手つきは慣れていて、しかし優しい。アルヴィンは煙と香りの中で串を焼き続け、誰も残さないようにと笑顔で声をかける。

シエルは子供たちの隙間に入り込み、手元を微調整するように魔力を使い、火の加減や肉の柔らかさを微細に調整していく。香ばしい匂いが鼻先に届くたび、子供たちは自然と笑みを零し、里全体に柔らかい活気が生まれる。

シュバルツはいない――けれど、その不在は、この祭りの温かさを奪わない。里の者たちは、自分たちの手と心で、雛鳥たちに温かさと栄養を届ける。豚肉を病弱な子に、牛肉を元気な子に、野菜やスープを全員に。皆の役割が自然に回り、穏やかで、しかし確かな幸福が里に満ちている。

冬の寒さが少しずつ和らぎ、太陽の光が広場の雪や霜に反射して、白い光を散らす。子供たちはお腹を満たし、手にはまだ温かい串を持ったまま、笑い声を上げながら走り回る。大人たちは静かにその様子を見守り、時折、手を伸ばして落ちた串や野菜を拾い上げる。

静かでありながら、温かさに満ちたこの里の新年は、誰もが手をかけ、目を配り、声をかけることで成り立っていた。シュバルツがいなくても、ここには守るべき者と守られる者がいて、柔らかな温もりが確かに息づいている。雛鳥たちの笑顔、温かい肉の香り、湯気の立つスープ、雪に反射する光――全てが里の新年を祝福していた。





里の広場では、冬の冷たさをものともせず、若い雛鳥たちが小さな体を揺らしながら串を口に運んでいた。

香ばしく焼けた肉や甘辛い鶏肉を頬張ると、頬が赤く染まり、目を細めて笑う。口の周りにソースや油が少しついても、気にせず笑いながら次の串に手を伸ばす。

「うわ、これうまい!」

小さな声が広場に響く。

雛鳥たちは互いに串を見せ合い、どちらの肉が美味しいかを競うかのように、笑い声を上げる。転がるように走りながら食べる者もいて、アルヴィンやシェリルが手を添えて安全に受け止める。

ヒバリの子たちはまだ赤子なので、食べる真似である、丸まった手足を小刻みに揺らしながら、口元に差し出された柔らかく煮た野菜や少量の肉を、ほんの少しずつ口に運ばれる。小さな唇が肉の柔らかさや温かさに反応し、かすかに「むにゃ」と声を出す。


一方で元気な雛鳥たちは、夢中になって食べる。

牛肉のカルビを頬張り、甘辛い鶏肉をかじり、時折串を置いて野菜スープをすくい口に含む。小さな指先が食べ物をこぼしても、笑い声は途切れず、仲間と顔を見合わせながら「おいしい!」を連呼する。

アルヴィンは火の傍で串を焼きつつ、笑い声を聞きながら一つひとつを手渡す。シェリルは子供たちの動きに目を配り、こぼした肉や野菜を拾い、手元を整える。雛鳥たちはそんな大人の手も気にせず、目を輝かせて食べ続ける。その様子は、静かでありながらも温かく、里全体に柔らかな活気を与えていた。

食べ終わると、雛鳥たちは小さな手で頬や口元を拭いながら、互いに笑顔を見せ合う。柔らかい温もりと香ばしい匂いに満たされた空気は、冷たい冬の朝にも関わらず、広場全体を穏やかに照らしていた。

里の新年は、特別な華やかさはなくても、人々の手と心、雛鳥たちの笑い声、温かい食べ物の香りで満ちていた。小さな羽や毛が揺れる



シェリルが微笑みながら、赤い翼を持つ大人たちに目配せする。雛鳥たちの視線が自然と上に向かう。

「それじゃ、最後はコレね」

赤い翼の大人たちは静かに手を上げ、魔力をそっと羽根先に集中させる。指先から微かな光が漏れ、空間全体に漂い始める。灯りは魔法の応用で作られたもので、蛍火のように柔らかく、夜の空気に溶け込む。

雛鳥たちは目を輝かせ、手を伸ばして触れたくなるほどに光が揺れる。空間全体に淡い輝きが漂い、小さな星々がふわりと舞っているようだ。金色や薄橙、柔らかい赤の光が混ざり合い、目に映るだけで心が温かくなる。

乳児の三つ子も、口元に食べ物を運ばれながら、目をきらきらさせて光を追う。光は遠くにあるけれど、胸の奥に温かさを届けるように、ふんわりと降り注ぐ。

アルヴィンもシェリルも、静かにその光景を見守る。雛鳥たちが笑い、目を輝かせる姿が、冬の冷たさをほんの少し忘れさせる。光は消えない。散りゆく蛍火のように、しばらく空間を満たし続け、里の小さな夜に、淡い魔法の祝祭を作り出していた。

光が揺れるたび、雛鳥たちの笑い声と混ざり合い、夜の静寂の中で、柔らかい幸福が里を包む。暖かく、静かで、それでいて確かに胸を満たす――そんな、新年の最後の贈り物の瞬間だった。

お喰い初めみたいなもんだよ

シェリル「炎だって使い方次第で人を温めるし、幻想的な風景は作れるわよ?元々蜃気楼を作るための魔法だけどね」

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