春の旅
街の名前思い浮かばなかったので、設定に近い気候の地域から持ってきた。
現実にあるよ!!
3日後
冬の名残を残す里の空気に、ほんの少しの温もりが混ざる。
誰にも、何も言わずに里の外に来たはず、それなのに上から…アルヴィンの声が、森の静けさを破った。
「なんだ、シュバルツ、もう行くのか?」
シュバルツは肩を竦める。義手の調整に来ただけのことで、里に長居する理由は元からなかった。
「あぁ、元々義手を作りに来ただけだからな…」
アルヴィンは頭の後ろで腕を組み、それを聞くと、軽やかに笑った。
「ふーん…シエルは寂しがるな〜、いや…むしろ追いかけるだろうな!」
シュバルツは視線を落としたまま、冷たい春風に首筋を撫でられる感覚に微かに肩を震わせる。
「…俺にはもう、関係ない」
「あるぞ?お前がどんなに否定しても、シエルはお前を番にする。決めたら曲げない、頑固だしな、生き抜くことも…その延長線。次に里に帰ってくる時には諦めて俺らの家族になれよー。達者でな」
アルヴィンは片手を軽く振り、笑みを残して里の方へ飛び去った。
アルヴィンの言葉は軽く響いたが、シュバルツの胸に、静かに刺さった。
冬の里での出来事が、雪解けの道を進む足に重くのしかかる。
踏みしめる小道の雪はまだ凍りつき、義手の金属が服の上で擦れる音がわずかに響いた。
無意識に肩を竦める。
思考は自然と里の日々に流れる。
雛鳥たちの寝息。
小さな羽の柔らかさを間近で感じた日々。
義手を装着した直後、シエルが手入れをしてくれたときの、無言の優しさ。
「……あいつら、俺の手を怖がらなかったな……」
忘れていた笑いが、小さく胸の奥に湧き上がる。
ヒバリの出産の日。里全体で魔力を注ぎ、命をつなぐ光景。戦場では決して見なかった、温かく、柔らかい光。
「……命をつなぐって、こういうことか……」
胸の奥がわずかに震えた。
戦場で生き残り、数えきれぬ死を背負った自分とは別の世界がここにあった。
しかし思考はすぐに影を帯びる。
俺は戦場で生き延びた。痛みも孤独も、すべて背負い、ここまで来た。
「……でも、この里が、俺の居場所なんだな……」
その実感だけで、胸の奥が締め付けられる。温もりは優しく、しかし確かに痛みを伴う。
足元の雪を蹴る。森の枝が風で揺れ、枯れ葉がささやく。
戦場の轟音や血の匂いとは違う、静かで冷たい空気。
だが恐ろしいほど、心は安心を覚えていた。
「……帰る家、か……」
自分と、里で触れた温かさ。それら二つの世界が、ぎこちなく交差していく。
「……この道を下れば、街か……」
森の出口に向かう足取りは静かだが、少しだけ軽くなった。
義手を握り直し、冷たい金属に残る温度を確かめる。
「……守るべきものは、まだ、ここにある……」
風が森を抜け、雪解けの匂いを運ぶ。
黒猫の瞳を思い浮かべ、遠くで揺れる光景が心に残る。
森を抜け、湿った春の風が吹き込む。日差しが地面を温め始めた。
「……里の匂い、まだ残ってるな……」
冬の里で見た光景が頭を駆け巡る。
雛鳥たちの羽音。
義手の装着を手伝ってくれたシエル。
ヒバリが産卵で体を危うくした日。里全体が魔力を注いだ光景。
「……あの温度、忘れねぇ……」
戦場で冷たくなれた手に、暖かさが突き刺さる。痛みと優しさが混ざり、胸をざわつかせる。
街リヨンブールまでの道は長い。宿や村を経由して依頼をこなす。
戦場で培った生存術は依然として体に染みついている。
気配を消すこと、遠くの物音に反応すること、視線を察すること。
「……油断すれば、また誰かを殺す……いや、殺される方だな」
依頼先では冷静に振る舞い、必要なら戦闘に臨む。
だが、守るべきものの影が胸を貫く瞬間もある。
「……あいつらが泣いたら、俺は……」
声には出さない。しかしその思いが、壊れかけた自分の一部を少しずつ戻していく。
昼間の街や村では表情を硬く保ち、言葉は最小限。
子供を見れば、距離を測る反射が働く。
「……俺の手は、触れれば壊す……いや、触れない方が壊すのか……」
理性と感情が常にせめぎ合う。
夜、宿に一人でいるとき、焚き火の残り火を前に義手を外し、指先の感覚を確かめる。
冷たい金属の温度に、胸の奥で微かに熱を感じる。
「……守るべきものは、まだ、ここにある……」
思考は戦場での冷徹さと、里で受け取った命の温度の間を行き来する。
依頼の戦闘は計算だけで瞬殺。怒りや激情ではない。
しかし、ふと胸に差し込む守るべきものの影。
昼間、街や村で表情を硬く保ち、必要な支援や依頼をこなす。
夜道に一人、星を見上げる瞬間、静かに心を解放する。
戦場の冷たさと、里で触れた温かさが交差し、少しずつ彼の心を動かす。
「……里に、帰るべき場所がある……いや、帰りたいのか、俺は……………」
問いかける独り言。答えはまだ見えない。
義手を握り直し、足を前に進める。
南に下れば、街リヨンブール。依頼先、そして次の戦い。
胸の奥で、守るべきものが生き続けていることを確かに感じながら。
1度目を閉じ、思い浮かべる……
冬の里を抜け、森の入り口でアルヴィンが軽く手を振っていた…
「達者でな」
その声だけで、胸の奥が微かに疼く。
温かみは縁のないものと知りながらも、思い出さずにはいられない。
里で見た光景――雛鳥の羽ばたき、義手の感触、シエルの笑顔、ヒバリの産む生命力。
思い出が風に乗って首筋を撫でる。ひんやりとして、痛みを伴う。
「……逃げるわけじゃねぇ……ただ、今は……一人で歩くしかない……」
その独り言は春の空気に溶けて消えた。
森の影が伸び、陽が傾きかけた頃、街リヨンブールへの道が広がる。
義手を握り、足を前に出す。
胸の痛みと、里の温もりを背負いながら、彼はゆっくりと歩く。
「……これがオレの道……」
答えはまだ出ていない。
だが、過去の影と、今手にした未来の温もりが、静かに、確かに、道標を示していた。
アルヴィン的には
グループの証渡してるし(羽根)?あの義手の全部メンテできるの里の奴らだけだし?ましてや里での行動とか見て「ぁ、あいつ帰る家ここだわ、気づいてんのかな?…いや、気づいてねーな!」と思ってる。
だから軽く見える。
ああいうタイプはどうしようも無くなったら、帰ってくるって知ってる。




