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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠 聖
冬の里

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39 黒いお兄ちゃん

子供ほど、柔軟だよねぇ

里に、知らない大人が来た。

大人なのかも、よく分からない。

真っ黒で、翼がなくて、匂いも里の人と違う。


怖いと思った。

でも、近づいてこない。

笑わないし、怒らない。

先生みたいに教えないし、お父さんみたいに叱らない。


ただ、見てる。


ずっと、見てる。


最初は、それが変だと思った。

でも、転んだ時、走りすぎた時、

気づいたら、そこにいる。


声を出さなくても、助けてくれる。

触らなくても、守ってくれる。


見てるって、心強いんだ。


黒い大人がいると、

遠くまで歩いても大丈夫な気がする。

雪があっても、風が強くても、

後ろを見なくていい。


お散歩が、冒険になる。


弱い子も、走れない子も、

一緒に行ける。


黒い人は、何も言わない。

でも、ちゃんと分かってる。


だから、今日もついていく。

少し離れて、でも、ちゃんと見えるところで。


黒い人は、名前を教えてくれない。

大人たちは知ってるみたいだけど、子どもには言わない。

だから、みんなで勝手に呼ぶ。


「黒いお兄ちゃん」


近くで見ると、やっぱり不思議。

金属の腕は冷たそうなのに、冬でも少しあったかい。

触っちゃだめって言われたから、指先だけ、そっと。


……あったかい。


びっくりして手を引っ込めたら、

黒いお兄ちゃんは怒らなかった。

でも、ちょっとだけ目を細くした。

それだけ。


それが「だめだよ」なんだって、分かった。


黒いお兄ちゃんは、走らない。

飛ばない。

でも、いつも一番遠くまで見てる。


ぼくたちが遊んでると、

目だけ動かして、数を数えてるみたい。

一人いなくなると、すぐ気づく。


「まだ戻ってないな」


声は低くて、短い。

それだけで、大人たちが動く。


すごい。


先生より怒らないのに、

お父さんより静かなのに、

みんなちゃんと聞く。


ある日、ぼくが少し遠くまで行きすぎた。

雪が深くて、足が埋まって、ちょっと怖くなった。


呼ぶ前に、影が伸びてきた。


黒いお兄ちゃんは、何も言わずに後ろに立ってた。

手も出さない。

でも、戻れるまで、そこにいた。


それだけで、泣かなくてすんだ。


夜、友だちと話す。


「黒いお兄ちゃんって、何してる人なんだろうね」 「わかんない。でも、いなくなると、やだ」


それで、話は終わる。

理由はいらない。


朝になると、またいる。

広場のはし、木のそば、訓練場の影。


今日は、羽の小さい子も一緒に歩いた。

前なら置いていった道。

でも今日は、行けた。


だって、見てる人がいるから。


黒いお兄ちゃんは、今日も笑わない。

でも、ぼくたちはちゃんと知ってる。


黒いお兄ちゃんは、

笑えないんじゃない。


「笑わなくていい」って思ってるだけ。

この男の子だけ、シュバルツの微妙な笑い方を見た1人

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