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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠 聖
冬の里

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38 雛鳥達の非日常

寝不足続きで寝落ちする元戦場に身を置いてた人間VS無邪気で無垢な子供VS朝

冬の森、里の広場。雪の残る石畳を歩く子どもたちの声が、空気を弾ませていた。


小さな男の子が、雪に足を取られて転ぶ。派手にこけたわけではないが、薄着の腕が冷たく、少し泣きそうになる。


シュバルツはその場で立ち止まり、ゆっくりと歩み寄る。手を差し伸べるでもなく、しゃがんで目線を合わせるでもない。ただ、静かに眼を向けて、転んだ子が自分の影の中に入るように立つだけ。


男の子は驚いて顔を上げ、ぎこちなく泣き声を止める。

「……あ、あの……大丈夫ですか……?」


シュバルツは短く「大丈夫だ」とだけ言った。声は低く、震えはなく、でも温かさがほんの少しだけ伝わる。子どもは安心して、すぐに立ち上がった。


近くで見ていた女の子が、義手をじっと見つめる。雪の光で金属の表面が鈍く光る。


「それ……動くの?」


シュバルツは手を軽く開き、指先をゆっくりと曲げる。義手の関節は滑らかに動き、わずかに魔力が光る。

「触るな」


短い言葉だが、拒絶ではない。危険だから近づくな、というだけの意思が伝わる。子どもは少し離れたまま頷いた。


やがて雪で遊ぶ他の子どもたちが転んだり、滑ったりしても、シュバルツは常にその場に立ち、視線だけで状況を把握する。手出しするのは、本当に必要な瞬間だけ。例えば、子どもが転んで頭をぶつけそうになったとき、背後からそっと抱き上げるように支える。義手の重量感も、身体に伝わる感触も、驚くほど滑らかで安全だった。


子どもたちは最初こそ距離を置くが、すぐに「大丈夫な人」と認識する。怪獣役をやるわけでも、騒いで遊ぶわけでもない。シュバルツの存在そのものが、安心の象徴になる。


夕方、雪が小降りになり、子どもたちが家路につくときも、シュバルツは静かに見送り、手を振ることも笑うこともない。ただ、最後まで視線を外さず、無言のまま子どもたちの安全を確認する。



シュバルツは煙草に火をつけながら、視線を逸らさず小さな声で答える。

「……守るだけだ」


雪の光に、義手の魔石がわずかに反射する。静かで、冷たくも、どこか頼もしい光だった。



次の日からの子供(雛鳥)達

子どもたちが集まる広場で、シュバルツが静かに巡回していると、低い声で「黒いお兄ちゃん!」と呼ぶ声が飛ぶ。

振り向くと、好奇心丸出しの小さな翼の子どもたちが、少し距離を保ちながら目を輝かせている。


シュバルツは眉ひとつ動かさず無言でうなずく。それだけで、子どもたちは満足してついて回る。

「黒い外の人」――遠くからそう呼ぶ子もいる。彼らにとってシュバルツは、里の空気の中にいる特別な“外の世界の残り香”のような存在だ。


義手を調整しながら歩くシュバルツは、いつもの無表情のままだが、足元にじゃれつく小さな手に気を配る動作には、ほんのわずかな優しさが滲む。

日常の中で見せる、言葉少なだが確かな温かさ。

それを子どもたちはまだ完全には理解していないが、自然と距離感を保ちながらも親しむことを学んでいく。



冬の朝、雪がうっすら積もった里の広場。


「おーい、黒いお兄ちゃん、来てる?」

子どもたちは小声で呼びながら、でもわくわくした表情で歩き回る。


広場の端、黒い影が静かに立っていた。シュバルツ。

黒い鎧、黒いコート、そして右腕のクロイツが光を微かに帯びている。


「……今日もついてていい?」

小さな声で誰かが聞く。シュバルツは答えない。ただ、ゆっくりと視線を落として頷いたように見えた。


子どもたちはお互い顔を見合わせ、そっとついて回る。

走ったりはしない。シュバルツの歩幅に合わせ、声も小さく、でも胸は少しドキドキ。


昼前、訓練場で羽ばたきの練習をする小鳥シエルの横に立ち、静かに見守る。

風が吹くたび、義手の魔石がわずかに光る。

子どもたちは「魔法の腕だ…!」と目を輝かせる。


「黒いお兄ちゃん、触ってもいい?」

小さな手が義手に近づく。シュバルツは少しびくっとするが、指先だけで触らせる。

その瞬間、子どもたちは「あ、あったかい…!」と息を呑む。


昼食の時間、子どもたちと一緒に食卓へ。

シュバルツは口数少なく、箸の動きも静か。

でも、誰かがこぼしたり困ったりした時、さっと手を添える。

言葉は少ないけれど、安心感だけはしっかり伝わる。


午後、里の巡回。

雪で滑りそうになる子どもを義手で支える。

「あ、黒いお兄ちゃん!」

子どもたちはぎゅっと手を握る。シュバルツは一瞬、怪訝そうな顔をするが、すぐに静かに微笑むような動きをする。


夕方、訓練や遊びが終わり、子どもたちは座って休む。

シュバルツは少し離れた場所で座り、背中に夕日を浴びる。

子どもたちはそれを見て「かっこいい…」と小さくつぶやく。


夕飯の時間、子どもたちは家に入りながら「黒いお兄ちゃん、また明日も来てね」とささやく。

シュバルツは無言で頷く。

誰も知らないけど、胸の中で少しだけ温かい気持ちが芽生えていた。


子どもたちにとって、シュバルツは

怖くて、静かで、でも守ってくれる“黒い守護者”。

そして、たまに見せる小さな笑みや優しい手のひらに、安心を感じる存在になりつつある。




[寝不足続きの黒いお兄ちゃん]

 

冬の朝、シュバルツは広場近くの丸太に胡座をかいて座っていた。冷たい風が頬を撫でるけれど、体は日差しでじんわり暖まる。義手の微かな熱がじんわり手首に伝わり、痛みはほとんど感じない。だが、寝不足で頭が重く、まぶたは半分しか開かない。


その気配を察したのか、無邪気な羽根を持つ子どもたちがゆっくりと集まる。まずは二、三人が丸太の周囲に腰を下ろす。白や灰色の冬毛が日光にきらめき、無害で無垢な存在感を放つ。シュバルツは目線を動かし、触れることもなくただ静かに見守る。


次第に、数人がマントの中に潜り込む。シュバルツの膝や足元にちょこんと丸まり、寒さを避けて暖を取ろうとしている。体温の感覚が伝わるたびに、シュバルツの肩や背中もほんの少し温かくなる。眠気に負けてうとうとと目を閉じると、小さな羽のさざめきや寝息が耳に届き、心の奥が少しだけほぐれる。


子どもたちは無邪気だ。義手の熱やシュバルツの寝息にも動じず、ただそこにいるだけで安心を感じている。彼らの存在は戦場での緊張や悪夢の余韻を、ほんの少しだけ薄めてくれる。


シュバルツは、薄く目を閉じたまま、静かに落ちないように抱え直す。


 ただ温かさだけが伝わる。

「…あったかい…」子供特有の独特な高さの声、小さく、夢うつつに漏れる声。悪夢の余韻が残る中、体は子どもたちのぬくもりで少しずつほぐされる。


寝ぼけた目でちらりと見下ろすと、子どもたちはまるで小さな毛玉のように無防備で、羽根の端が日光にきらめいている。普段なら戦場で背筋が硬くなるシュバルツも、この光景には力が抜けてしまう。


やがて、子どもたちも眠気に負け、微かに羽ばたきの音を立てながら丸まって眠る。シュバルツは小さく息を吐き、額に布団をかけられたかのように胸の温もりを感じる。


義手は腕にしっかり装着されたままだが、朝の陽光で表面がほんのり温かく、痛みはほとんどない。微かな魔力が体に馴染む感覚を、シュバルツはぼんやりと感じながら、子どもたちの体温に包まれて再び眠りへ落ちる。


外の広場には、冬の光が柔らかく差し込み、焚き火の余熱と日差しで空気がじんわり暖かい。森のざわめきと子どもたちの寝息が混ざり合い、静かで穏やかな朝が広がっていた。

冬の里でできることなんて限られてるしね〜!

この間、シエルはヒバリ監修の元飛べるようになるまでスパルタされてます。


里の朝昼は基本集合して食べる、夜は食べたい人だけ何かしら食べてる。理由?人数数えるため

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