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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠


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最近タバコ吸ってる描写がないって?

吸ってるけど、書く気が無かった!

焚き火の余熱がまだ石に宿り、

洞窟の暗がりは、まるで記憶の底を覗き込むように深い。

眠る小鳥の呼吸がゆるやかに胸元を温める。

黒猫は目を閉じたまま、声に出さぬ独白をゆっくりと辿る――


……長い。

歩いた時間は、数にすれば大したことではないのかもしれない。

ただ、心が擦り切れるほどの道だった。


あの街を出たとき、俺には腕が二本あった。

仲間もいた。

羽の音ではなく、足音と笑い声が傍にあった。


けれど旅というのは奪うものだ。

腕も、仲間も、目的さえ呑み込んでいく。


――代わりに残ったのは、静けさと煙草の匂い。

それで十分だと思っていた。

ひとりで歩き、ひとりで倒れ、ひとりで起き上がる。

それを誇りと思っていた。


……だが今、胸の中では別の音が鳴っている。


か弱い鳥の寝息。

無意識に寄り添う体温。

触れた羽根の柔らかさ。

知らない世界の匂い。


癒える片翼。

癒えない片翼。


たとえ飛べなくても、飛ぼうとする意思が眩しい。

そのくせ、俺の傍を枕にして眠る無防備さはどうだ。

まるで世界で一番安全な場所だと信じているようで


 泣きたくなる。


……俺は、守るつもりなどなかった。

誰も。何も。

ただ歩いて、煙草の火だけを友にして、それで終わるはずだった。


けれど今は――


この片翼が風を掴む日を、見たいと思っている。

呪いの翼が解ける瞬間を、隣で迎えたいと願っている。


願望などとうに捨てたはずなのに。

翼の白さに触れたとき、俺の中の何かが再生し始めた。


……だから、もう少しだけ歩こう。

この旅路の終わりを、小鳥と共に見るために。


煙草の火が尽きるまでは。

俺の残るこの片腕が動くうちは。


飛べない鳥が飛ぶ日まで――

俺が支えてやる。


その言葉はまだ口には出さない。

月明かりに紛れ、ただ胸の底で静かに燃え続ける。


 洞窟の奥、ひんやりとした石の匂い。

けれどその中で、小鳥の体を包むのは温かい片腕と、羽に触れた痕のぬくもりだった。

夢のなかで、意識はふわりと宙を漂う――






夢を…みてる…幼い頃に飛んだ空の夢…


……あぁ、風の音だ。

ずっと昔に置いてきたはずなのに、胸の奥でまだ覚えている。

高い空、遠い青、羽ばたいた瞬間の解放。

初めて太陽に触れた日のことも、ちゃんと覚えてる。


なのに、気づいたら飛べない鳥になっていた。

片翼だけじゃ風を掴めない。

地面に影を落とすたび、笑われるたび、

自分の羽がどれくらい「足りない」のかだけが重くなっていった。


……だから、旅に出たんだよ。

誰も知らない空を、もう一度探すために。

羽が折れても、呪われていても、

ぜんぶ諦めるにはまだ心臓がうるさい。


でも……こわかったの。

飛ぼうとして落ちるのも、

見捨てられるのも、

誰かと並ぶことさえ――。


なのに、


黒猫さんは離れないままだ。

片腕で、ちゃんと支えてくれる。

灰で撫でた手は、あたたかくて、

触れられるたびに 羽の奥が震えた。


あれは、なんだったんだろう。


求めていたのかな。

気づかないまま、誰かを。

羽根の奥の奥にある、いちばんやわらかい場所を

触れてほしかったのかな。


呪いがほどけるなら、痛くても構わない。

泣いても叫んでも、もう一度空を掴めるなら。


もし――両翼が広がったとき。

私が空へ戻れる日が来たなら。


最初に見せたい景色は、

きっと黒猫さんだ。


あなたの横で、風を切りたい。

あなたの影を追うのではなく、

同じ高さで飛びたい。


そんな未来を夢に見るなんて、

昔の私は笑うだろうけど。


……今の私は、

少しだけ胸を張って言える気がする。


まだ飛べるって。

まだ、あなたと進めるって。


ここからもう一度。

空の続きへ。

ふははは!!ぁ、シエル無意識にこの時羽で包んでます、シュバルツをぬくぬくですね?

はぁー!!面白い!

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