表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/37

19

さぁ、絶望へのエンジンかけていきますよぉ〜?

黒猫の部屋に移動して

「それで黒猫さん、宿に泊まれたらちゃんと種族言うって言ってましたよね?」

驚かないでくださいね?


といって上着を脱いで背中が大きく空いた服を見せる

「は?」っと思った瞬間には小鳥の背中には羽根が生えてた

ボロボロに引きちぎられた翼が

 黒猫の瞳が一瞬、大きく見開かれる。

言葉は出ず、ただ背中の羽を見つめる――小鳥の小さな体に、不釣り合いなほどの存在感を持つ片翼。


黒猫は一歩後ずさるかと思いきや、身体の奥で強い感情が渦巻く。驚き、困惑、そして――守りたいという衝動。


「……片翼、か」(いや、違う…片方は呪いで羽が形成されていない…)

低く絞り出すように呟く声に、少しだけ震えが混ざる。

目の前の小鳥は、以前の無邪気さのまま、しかしその背中には過去の痛みと、生き抜くための力が刻まれている。


黒猫は無言のまま、拳をぎゅっと握りしめる。

心の中で静かに、自問する。


――どうして、こんな小さな体に――

――それでも、よくここまで生き抜いてきたものだ――


視線を落とすと、片翼の先端にわずかに残る羽毛が、暖炉の火にきらりと反射する。

黒猫は短く息を吐き、言葉を選ぶ。


「……教えてくれて、ありがとう」


口には出さないが、胸の奥で小鳥への敬意と、守るべき責任が確かに芽生えた瞬間だった。

「小鳥は有翼人種です、ただ、道中言った通り、翼をもがれてるので、片翼なんでーす!」といって残ったボロボロの羽をパタパタさせてる


 黒猫は無言で背中の羽を見つめる。


目の前で小鳥が元気よくパタパタさせるボロボロの羽…その姿に、一瞬だけ眉間の皺が深くなる。


――強い。けれど――――脆い。


黒猫の心は揺れた。守るべき存在としての責任と、彼女が自らの力で生き抜いてきた事実。

視線をそらさず、ゆっくりと近づき、片翼の残骸に指先をかざす。


「……無茶はするな」

短く、しかし強い口調。

その声に、怒りや恐怖だけでなく、確かな信頼と守る覚悟が滲む。


小鳥はその言葉に気づかず、ボロ羽を軽く振りながら笑う。

黒猫はその笑顔を見つめ、胸の奥で何かがぎゅっと締め付けられるのを感じる。


――こいつは本当に――ただの子供じゃない。


 出す時はスっと出る羽は戻す時には綺麗に戻らない為ズズッズ…とゆっくり折りたたまれて何も無い普通の背中になる

 黒猫はその動きをじっと見つめる。


スッと現れた羽が、戻す時にはズズッズ…と音を立てるようにゆっくり背中に沈んでいく。

何もない普通の背中に戻るその瞬間、黒猫は思わず息を呑む。


――儚い、と思った。


この小さな体の中にある強さと、生き抜く術。

しかし同時に、失われたものの重みが、静かに胸にのしかかる。

目を細め、黒猫は静かに呟く。


「……無茶はするな、小鳥」


その声には、怒りでも叱責でもなく、守る覚悟と祈りのような感情が混ざっていた。


小鳥はまだ元気に笑いながら背中をさすり、何も無かったかのように振る舞う。

黒猫はその無邪気さと、背中に刻まれた痛みのギャップに、しばし言葉を失う。


 上着をきながら「小鳥は無茶も無謀もしますよ?生きるためなら!

ただ、有翼人を伝えたのは里に着いた時に驚く可能性があるのと、同情して欲しくないからです!」

「後、里に入るのにある程度話しておかないと、怒られそうなので!」

 

 黒猫は静かに頷き、目を細める。

「……ああ、分かってる。お前の強さも、やり方も、な。」


胸の奥で、あの壊れやすい羽がかつての誰かを思い起こさせる。

無邪気に振る舞う背中に隠された覚悟を、黒猫は知っている。

声には出さないが、思わず握った拳が緩む。


「……里に着いたら、俺が守るべきものは、お前だけじゃない。だが……お前のやり方で生きろ」


言葉には抑えきれない感情の影が差し込み、冬の夜の静けさの中で、二人の距離が少しだけ縮まる。


「そうですね!それじゃおやすみなさい」といって部屋に戻っていく小鳥


 黒猫は小鳥が部屋に戻る背中を見送りながら、ゆっくり息を吐く。


「……子供なのに、随分としたたかだな……」


その背中に隠された、強さと無垢さのギャップに、心の奥が静かに揺れる。

布団に潜る小鳥の寝息が、どこか懐かしく、守るべきものとしての覚悟を黒猫に思い起こさせる。


「……あの羽を、失ったままでも、よく生きてる。お前は……本当に、強い」


口には出さずとも、瞳の奥にほんのわずかな安堵と、ほんの少しの羨望が光る。

夜の静寂の中、黒猫は火の残り香のように、彼女の存在をじっと胸に刻む。


 火照った背中に、じん……と鈍い痛みが尾を引く。

宿の薄明かりの中、シエルはベッドに腰を下ろしながら、小さく息を震わせた。


翼――失われた片翼の存在を思い出すだけで、神経の奥がざわりと逆立つ。

普段はしまい込んでいる筋と魔力の束を無理やり開けば、そこはもう“鳥だった頃”とは違う形で固まっている。

久々に羽を出したせいで、背骨に沿う痛覚が強く主張する。


「……うう……びりびり……っ」

簡素なベッドに倒れ込む

指先で背をなぞれば、かすかに発熱している。

折畳まれた羽が完全ではないせいで、筋肉も再生しかけのように悲鳴を上げる。


でも、痛みは嫌じゃない。

翼がまだ“生きている”証だから。


夜の廊下は静かで、黒猫の部屋の前も物音ひとつない。

無口な男は眠っているだろうか、それともまだあの傷に思いを巡らせているだろうか。


胸の奥がちくりと疼く。

言わなかったこと。

見せたくなかったもの。

でも、見せなければいつかもっと痛い嘘になると思った――


複雑な感情を抱いたまま、シエルは毛布に潜り込む。


背中の痛みが、じんじんと鼓動に合わせて響く。

今夜はきっと眠りは浅い。

それでも目を閉じれば、かすかな暖かさと焚火の匂い、黒猫の低い声が思い出のように浮かんできた。


――飛べなくても、生きている。

それだけで、今は十分。


そう自分に言い聞かせ、彼女は静かに呼吸を深くしていく。

羽をしまい込んだ背中がまだ微かに震えながら。


夜は長く、でも明日は来る。

雪明りのような痛みと共に。


 夜を裂くように、寝台の軋みと羽音が微かに揺れる。

シエルは眠りながら、夢の中で まだ空を飛んでいる――そんな錯覚に身体が勝手に反応してしまう。


薄い布団の下で、片方だけの大きな翼がばさ、ばさ、と大きく脈うつように動いた。

新しく芽吹き、生え揃いつつある羽根はまだ柔らかく、未成熟な分だけ神経がむき出しだ。

生えるたび、伸びるたび、一本一本が痛みとして脳に刺さる。


それでも翼は止まらない。

まるで 飛びたい と、千切られた誇りが本能を訴えているかのように。


翌朝

 階段を降りるたび、背中の奥がじんわり熱を持つ。

羽根が伸びようとするたび、皮膚の下で骨が軋むような感覚が走る。

まだ慣れないその痛みに、シエルは肩をすくめて息を吐いた。


扉を閉める瞬間、床に散った羽根が白く光って見えた。

細い、繊細な繊維。

もがれたはずの翼の「残滓」。

夜の間、無意識に伸び、痛みにもがき、また折れて散ったのだろう。


「……あとで掃除、だなぁ。」

小さく苦笑して、階下の匂いに足を運ぶ。


 


◆ ◆ ◆


温かいスープの香り、パンの焼ける匂い、肉とハーブの油が弾ける音。

食堂は朝の光を受けて、ほこりまで金色に見えた。


食卓に向かうシエルの足取りはいつもと同じ軽さ。

だが――黒猫だけは、その微かな違いに気づく。


背筋が少し張りすぎている。

肩の可動がぎこちない。

呼吸が浅い。


普通の旅人なら見逃す変化。

だが黒猫は、戦場の動きを知っている。


椅子に腰を下ろすシエルが笑って言う。


「おはようございます、黒猫さん!

背中がちょっとビリビリするけど、今日も元気ですよー!」


明るさは変わらない。

声のトーンも笑顔も、昨日と同じ――

だけど、内側には誰にも見せない闘争。


羽根が生えようとして、

皮膚の裏で命がうごめいている。


黒猫がもし応じるなら、こんな視線になるだろう。


――痛みで眠れなかったな。

 気づかぬふりをするべきか。

 それとも手を貸すべきか。


そんな迷いが、湯気の中で静かに滲む。


今日、翼はまた伸びようとする。

呪いに食いちぎられたはずの未来は、

なおも空を目指して疼いている。


そして黒猫は――

それを見逃すほど、鈍くも無関心でもない。


この朝食の席から、

2人の距離は昨日より確かに近づき始める。

誰が絶望するか、考えると楽しいですね??

ぁ、シュバルツの守る発言増えていきます、鬱陶しいくらい、鬱陶しいほどに


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ