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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠


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15

兵舎のある街から橋を渡り、ポイズンベアを倒して3日、後1日位で町…かな?

橋を超え、野営地を越え、町に向かって歩き続ける

お昼には固形物を多めに、夜は胃に優しいスープと夜食兼朝食を仕込む小鳥

 小鳥は雪を踏みしめながら、手際よく食事の準備を進める。


昼食には、森で得た根菜や前回の食材を活かし、スパイスを効かせた温かい煮込み料理を用意する。黒猫は無言で頷き、時折視界を警戒しながらも、湯気の上がる鍋に目を向ける。その香りだけで、冷え切った体が少しずつ温まるのがわかる。


「今日は固形物多めにしました!」と小鳥はにこやかに言い、弁当箱のように小分けにして黒猫に手渡す。黒猫は口元を緩めずとも、手元の料理を受け取り、静かに味わう。


夜になれば、鍋を再び焚火のそばにセットし、翌朝兼夜食として胃に優しいスープを仕込む小鳥。油や香辛料は控えめに、体を温め、翌日の行動に支障が出ないよう調整されている。


小鳥は鼻歌を口ずさみ、生活魔法で少しずつ水を貯め、火を維持しつつ、夜の森で潜むかもしれない魔物や野生動物に目を光らせる。

「夜はこうして準備しておけば、明日の朝も安心ですね!」


黒猫は背後から静かに小鳥を見守りつつ、森の気配に耳を澄ませ、必要ならすぐに身を翻せる体勢を取る。


雪と焚火の明かりが混ざる夜、二人の影はひとつの道を歩き続けていた。


「お前は」

黒猫が口を開く

「お前はこういう料理や食材の選び方の知識をどこで得たんだ?」

 黒猫の問いに、小鳥はキョトンとした後

 少し首を傾げて考える。


「えっと…えーとですね!」

彼女は雪の上に小さな足跡を残しながら、楽しげに話し始める。

 「小鳥は…里の皆さんに教わったり、森での生活で覚えたりしました!姉も騎士だから戦場で役立つ知識も少し聞いたことありますし、料理や保存、魔物の扱いも…里の人たちは教えてくれるんです!」


手を広げ、雪をかきながら笑う。「それに、里にいると毎日自分やみんなが生き延びるために考えないといけないんです。だから自然と覚えちゃいます!」


黒猫は小鳥の目をじっと見つめる。無邪気で明るいその瞳の奥に、確かな生存本能と観察眼が光っているのがわかる。


「…なるほどな」と低く呟く黒猫。その声には、驚きと共に、ほんの少しの安堵も混ざっていた。小鳥は単なる子供ではなく、戦場でも森でも生き抜くための知識を持った、強い存在だったのだ。


 黒猫シュヴァルツの心の中は、表情には出さずとも複雑に動いている。


「…この子は、ただの子供じゃない」

心の奥で、冷静に状況を整理しながらも、思わず息が詰まる感覚があった。戦場や野営で命のやり取りを見てきた自分でも、ここまで生き抜く知恵と判断力を持つ小鳥を前にすると、少しだけ驚きと感心が混ざる。


「それにしても…無邪気な顔して、よくここまで…」

目の前で雪や焚き火を駆使し、食材を扱い、野営地を整える小鳥。軽やかに動くその手には、命を守るための覚悟と手際が滲む。


「…いや、油断はできない。まだ子供だ。だが、頼もしい。」

一拍置いて、黒猫の肩がわずかに緩む。口元には微かに笑みが浮かぶが、それはほんのひと欠片だけ。表向きは無口で冷静なまま、心の中では小鳥を守ろうとする責任感と、共に進む道への覚悟が静かに広がっている。


「…手を出す奴がいれば、絶対に…」

無言で握った拳に、黒猫の守る意志が固まる。小鳥の無垢さも、知恵も、未来も──全部、自分の手で守るべきものだと。

 商人は、雪を踏みしめながら荷車を押している。毛皮のコートに身を包み、冷たい風で赤くなった頬に息を吐きながら挨拶する。


「おやおや、こんな寒い日に旅人かい?お嬢ちゃんとそこのご仁は――冒険者かね?」


小鳥は元気に手を振る。

「はい!シエル、です!こちらは黒猫さん…です!これから里に向かっているんですよ!」

「シュバルツだ」

商人は荷車の荷物を整理しながら、笑みを浮かべる。

「里かい…まだ雪深いだろうに、若いのに元気だねえ。ところで道中、魔物や盗賊には気をつけた方がいいぞ。先週もゴブリンの小さな群れが橋の辺りで出没したらしいからね」


小鳥は肩をすくめ、少し得意げに答える。

「もう知ってますよ!ゴブリンは巣を見つけたら全部殲滅しますから!」


黒猫は横目でシエルを観察しながら、軽くため息。

(…小鳥はほんとに、どんな状況でも楽しそうだな)


商人は小鳥の元気さに感心しつつ、さらに情報をくれる。

「あと、次の村までは3日くらいかかる。補給もできないかもしれん。道中の橋は氷が張って滑るから注意しろよ」


小鳥は早速リストにメモを取る。

「了解です!防寒具と携帯食はしっかり揃えてます!」


黒猫は商人に軽く頭を下げる。

「情報、助かった。ありがとう」


商人は笑みを返し、荷車を押して去っていく。

小鳥は振り返って黒猫に声をかける。

「ふふっ、これでまた安全に進めますね!」


黒猫は肩をすくめ、静かに森の奥へと視線を戻す。

(…この子は、どんな危険でも楽しみに変えるのかもしれないな)


「あ!」っと声を上げて商人に走りよっていくシエル、ポーチから商人に携帯食の包みを渡しておく

「これから帰るなら寒くなるので!食べて体あっためてください!」


 商人は差し出された小鳥の手を見て、最初は驚いたように目を丸くする。


「おおっ、これは…ありがとうな、こんな寒い日に嬉しい心遣いだ」


小鳥はにこにこしながら手を振る。

「いえいえ!寒いと体力も落ちちゃうので、少しでも温まってくださいね!」


黒猫は横でじっと見ている。

(…やっぱり、この子はただの“子供”じゃないな。こういう気配り一つで、相手の心も温める)


商人は袋から一つ携帯食を取り出し、すぐに食べながら笑う。

「ふむ、なかなか美味い…お嬢ちゃん、旅先でこういうの作れるのか?」


小鳥は少し得意げに胸を張る。

「もちろんです!森の中でも火と魔法があればなんでもできます!」


商人は感心して頷き、荷車を押しながら去っていく。

小鳥は振り返り、黒猫に笑顔を向ける。

「さて、黒猫さん!次は町ですよ!ここで少し補給して、里に向けて準備を整えましょう!」


黒猫は煙草の煙を吐き、少しだけ微笑む。

(…この子のペースに合わせるのも悪くないかもしれない)


町の門が見えてくる。雪で白く染まった街道に、民家や商店の屋根が並ぶ。小鳥の目は輝き、次の冒険に心を躍らせている。


「さぁ、町まではあと少し。油断せず、でも楽しんで進みましょう」


黒猫は片手で弓を整え、もう一度周囲を警戒しながら歩みを進める。




「黒猫さん、黒猫さん

煙草って美味しんですか?」よくすってますよね?

 黒猫は煙草を片手で持ったまま、少し間を置いてからゆっくり答える。


「…美味いかって?そういう問題じゃねぇ。気分の切り替えや、心を落ち着けるための道具ってところだ。」


小鳥は首をかしげ、目をキラキラさせて興味津々。

「ふーん、気分転換用…なんだ。じゃあ、ちょっと吸ってみてもいいんですか?」


黒猫は眉をひそめる。

「…いや、子供はやめとけ。体に悪いだけだ。」


小鳥はちょっとしょんぼりしつつも、すぐににこっと笑う。

「わかりました!黒猫さんがそう言うなら…でも、なんだか大人の味って感じですね!」


黒猫は煙草の先を軽く灰皿に置き、そっと小鳥を見下ろす。

(…この子は何でも知りたがるな。でも、こういう無邪気さが強さにもなるんだろうな)


小鳥はその視線に気づかず、また元気よく歩き始める。

「さぁ、町まであと少し!黒猫さん、しっかりついてきてくださいね!」


 小鳥

「お姉ちゃんもよく吸ってたなぁ、でもあれ、あんまり体に良くない草の匂い、だったんだよねぇ…吸えばわかるけどうーん…(黒猫さんのあの反応だと、隠れて吸ってもばれるなぁ…料理が美味しいって感じてるならまだ大丈夫かな??)」


(小鳥の姉が吸ってたタバコは依存性を発生させる軍や騎士の支給品だった(ネタバレ)


 黒猫はその横で煙草を軽く弄りながら、眉間に皺を寄せる。


「…そういうのは、体に良くないだけじゃねぇ。依存もする。お前の姉さんが吸ってたってのは、その手の支給品だったんだろうな。」


小鳥は目を丸くして首をかしげる。

「えっ、支給品…!?そ、そんなのあるんだ…」


黒猫は少し口元を緩めて、だけど目は真剣なまま。

「戦場や兵舎では、気を張り続けるための道具だ。気分転換とは少し意味合いが違う。依存したら体も心も蝕まれる。」


小鳥は少し考え込み、やがてにこっと笑う。

「なるほど…じゃあ黒猫さんの吸い方は、単に気分転換なんですね!それなら、ちょっとだけ大人の味を知れるってことかぁ…」


黒猫は無言で煙草の灰を落とし、軽く肩をすくめる。

(…この子はほんと、何でも好奇心旺盛だ。無邪気な分、危ういけど、こういう子だから生き残るんだろうな)


小鳥はその視線に気づかず、笑顔で歩き出す。

「さぁ、町まであと少し!黒猫さん、ちゃんとついてきてくださいね!」


黒猫はその後ろ姿を静かに見つめながら、微かに息を吐く。

(…まったく、手のかかる相棒だ)

次趣向品の話、載せるねー

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