14眠らぬ毒熊
戦闘描写苦手だぁー!!!
小鳥は森の痕跡を見ながら舌打ちをする
一旦立ち止まり
「黒猫さん、最悪です…
ポイズンベアが寝てません…」
っと表面が毒々しい赤になっている木を指さす
黒猫は眉をひそめ、ゆっくりと木に視線を落とす。
「……寝てない、か。」
木の表面が毒々しい赤に染まっているのは、ただの警告色ではなく、ポイズンベアの存在を示す痕跡。葉や枝に残る不自然な爪痕、踏み荒らされた地面、小さく揺れる落ち葉――すべてが生き物の気配を語っている。
小鳥は小さく舌打ちしながら、唐辛子入り雪玉を握り直す。
「黒猫さん、静かにいきましょう……やつは冬眠を失敗して怒りっぽくなってます。うっかり近づけば…一撃でやられます」
黒猫は煙草の火を消し、手元の弓を握り直す。
「……了解。お前の指示通りに動く。勝手に動くなよ」
小鳥は頷き、毒赤の木を避けつつ、静かに足跡を辿る。葉や枝が触れ合う音も極力立てず、まるで森に溶け込むように進んでいく。
森の奥、赤く光る木の向こうで、低く唸るような息遣いが聞こえる――ポイズンベアが起きている。
「……やつの気配、ここまでか」黒猫が小さく呟き、矢を弦にかける。
小鳥はその横で、雪玉を握った手をぎゅっと強くする。
「……いきますか?」
森の静寂が、二人の緊張と呼吸に合わせて震える。
「黒猫さん、あのベア、呼吸がおかしいです、同族同士で争った後みたいな、自分の毒食らってます…多分」
黒猫は眉を寄せ、静かに小鳥の指さす方を見やる。
「……なるほど、毒の自己中毒か。つまり力は落ちてる、だが油断はできないな」
小鳥は少し前かがみになり、雪玉の唐辛子を握り直す。
「ええ、普通のベアより攻撃が荒く、毒のせいで理性も少し飛んでます。斬り合ったら手がつけられなくなるかも……!」
黒猫は矢をそっと構え、低い声で呟く。
「なるほどな。手早く、確実に片づける。お前は無理するな」
小鳥は頷き、森の木々に溶け込むように身を低くする。
「はい!でも、黒猫さんの弓があるから大丈夫です!私、あくまでサポートです!」
ポイズンベアの影が赤く揺れ、荒い息が森に響く――二人の心拍が静かに重なり、森の緊張をさらに濃くしていく。
黒猫は矢を引き絞り、森の奥に視線を釘付けにした。
「……いくぞ」
小鳥は唐辛子雪玉を握った手に力を込め、黒猫の合図を待つ。だが
戦闘開始は突然に始まるもの…
木々のざわめきが、一瞬にして凍り付く。
ポイズンベアが突然、雪を踏み割る音とともに跳躍してきた。赤い毛皮が森の薄明に光る。毒の気配が空気をぬめり、黒猫の瞳は一瞬で鋭く光った。
「来たか……!」
黒猫は矢を放つ前に素早く身をひねり、ベアの攻撃軌道を読み取る。小鳥は唐辛子雪玉をぎゅっと握りしめ、呼吸を整える。
「黒猫さん、タイミングは……!」
黒猫は振り返り、短く頷く。合図はそれだけで十分だった。
小鳥は雪玉を投げる――赤い粉が空気に舞い、ポイズンベアの視界と鼻を刺激する。ベアが咳き込み、荒い息を吐く隙を突き、黒猫の矢が鋭く飛ぶ。
森の奥で、雪と毒の香りが交じり合う。戦闘は一瞬にして加速し、静けさの破片が次々と飛び散る――戦いの幕が切って落とされた瞬間だった。
視界不良、自己中毒、冬眠失敗、通常よりも気性が荒く理性も飛んでいる状態の、ポイズンベア…
普段なら食材として狩猟する相手、
でも、今は…!
「生き残るのが!先決!!」
そう言いながら次の雪玉を構える
小鳥の手元で、雪玉が赤く輝く。吐く息が白く舞う寒い森の中で、毒気にむせる空気が二人を包む。
黒猫は鋭い目でポイズンベアを見据え、矢を一本、手早くつがえる。ベアは異常な荒れ狂い方をし、通常よりも速く、不規則に動く。視界は毒の靄で揺れ、理性を失った獣の咆哮が森に響く。
「……次は俺が引きつける」黒猫は低く言い、小鳥の側にわずかに距離を取る。
小鳥は頷き、次の雪玉を力いっぱい握り直す。冬眠失敗の毒持ちポイズンベアが襲いかかる直前、雪玉が赤い弧を描いて飛ぶ。
「……これで少し、動きを鈍らせられるはず!」
ベアが咳き込み、荒い息を吐く。毒の煙と赤い粉が絡み合い、森の冷気に揺れる。黒猫はその隙に矢を放ち、雪と赤の混ざる中で獣の動きを正確に狙う。
小鳥は再び次の行動を考えながら、ただ一つの目的を心に刻む――生き残ること。それだけだ。
「ポイズンベアの調理法は――毒腺のある喉を斬る!」
そう言いながらカバンを置いて肉断ち包丁を取り出す
雪の上に置かれた小鳥の荷物――その横で、彼女の手に握られた肉断ち包丁が陽光を受けて鈍く光る。
まだ戦闘の最中、それでも彼女は確信に満ちた声で叫ぶ。
猛る獣の影が雪面を揺らす。喉元には黒紫に膨張した毒袋。そこを落とさなければ、この戦いは終わらない。
黒猫は彼女の意図を理解し、わずかに位置を変える。
視界は毒と寒気で霞む。それでも弓を引く手は揺るがない。
「……なるほど。なら、狙うべき場所は決まってるな」
ポイズンベアが突進する。雪が爆ぜ、息が荒れ狂う。
黒猫が牽制の矢を放ち、獣の注意を引きつける――その刹那、
小鳥は足を蹴り、雪の白を裂いて駆ける。
寒風で赤くなった頬、細い肩、揺れる黒い外套。
しかしその動きは迷いなく獣の喉へ、まっすぐ。
毒の蒸気を浴びながら、彼女は叫ぶ。
「黒猫さん!頭を下げさせて!!」
狙いはただひとつ。
黒猫は言われた通りに弓を放つ
矢が雪煙の中で弧を描き、ポイズンベアの頭部を打つ。獣は一瞬ひるむが、その巨大な身体は依然として暴れ、雪を蹴り上げる。
その瞬間、小鳥の肉断ち包丁が鋭く毒腺を貫いた。赤黒く膨らんだ袋から毒が漏れ、空気が重くぬるりと垂れ落ちる。獣は咆哮し、振り落とそうと全力で体を揺らす。
「うわっ!」振り落とされたシエル
だが、小鳥は受身を取り、次の行動に移れるように空中で身を翻す
踏ん張る力が足りず雪面に膝を打ち付けながら数歩滑る、手首の感覚を残したまま、次の行動にすぐ移れるように姿勢を整える。
黒猫は冷静に矢を次の動きのために構え直す。獣の動きは予測不能だが、二人の呼吸は一瞬で同期した。
小鳥は胸で深く息を吸い、次の一手に集中する。
「次は…!」
雪の上に散る足跡と血。空気は凍てつき、時間がゆっくりと止まったように感じられる。
「黒猫さん!包丁刺した所から鎖骨辺りに!もう1射!」そう言いながら投げナイフをポーチから取り出す
黒猫は短く息を吸い、引き絞った弓弦を鳴らす。
矢は風を裂き、包丁の刺さった傷口から鎖骨へと正確に滑り込む。
――獣の動きが、ほんの一拍、止まった。
そのわずかな隙を逃さず、小鳥は雪を蹴り上げて前へ。
投げナイフを逆手に持ち、獣の喉元へ向けて滑り込むように踏み込む。
毒腺の破損で狂った鼓動が、皮膚越しにも見えるほど荒い。
接近戦は危険、でも短期決着が必要――そんな判断からの一撃。
「これで!仕留める――!」
ナイフが放たれ、獣の喉を浅く裂く。
赤黒い液が雪へ散り、白と紅がにじむように溶け合う。
ポイズンベアは怒号のような咆哮をあげ、巨腕を振り回す。
風圧だけで雪が舞い、小鳥の頬を掠める鋭い爪跡。
あと一歩間違えば吹き飛ばされる距離。
黒猫の判断がすぐさま飛ぶ。
「小鳥、下がれ!二射目で動きを止める!」
だが小鳥は一歩も引かない。
瞳は獣の喉、弱点一点だけを見据える。
息を噛みしめ、次の投げナイフに指をかける。
距離は数歩。
獣の息は荒く、毒と血で呼吸が乱れ始めている。
「いえ、もうおしまいです…」
ポイズンベアの動きが糸の切れた人形のように突然終わる
「自己中毒を起こすほど、毒を受けていたなら、更に毒を回せば終わりです、唐辛子で粘膜炎症を起こしてたら余計に血が巡る…それに
投げナイフに同じくらいのやばい毒つけてたので!」
てへっとしてる小鳥
「ただ、ポイズンベアの毒って解毒するのめんどくさいので、このお肉は森にお返しです…」あぁ、お肉…と嘆く小鳥
黒猫は息を整えつつ、ポイズンベアの倒れた姿を一瞥する。
「……お前、てへ、って顔でやることじゃねぇだろう」と低く呟き、肩越しに小鳥を見る。
小鳥は肩をすくめ、困ったように笑う。
「だって危なかったんですもん!森の恵みを守るのも大事ですけど、まず生き残らないと…!」
黒猫は短く鼻を鳴らし、焚き火の傍に置いていた弓を手に取り、矢を点検する。
「……ああ、わかった。次からはお前の“てへ”が森の被害を増やさないようにな」
小鳥はふわっと笑い、手元の雪玉やナイフを整理しながら、ちらりと黒猫を見上げる。
「はい!これで、森も、私たちも無事です!」
「それと、黒猫さんあの足跡はアレみたいですよ」っと指さす
その先には痩せた親子…の…死体黒猫の目が一瞬で鋭く光る。雪に横たわる痩せた親子の亡骸を見下ろし、肩に掛けたマントをぎゅっと握りしめる。
「……やっぱりか。」低く、息を吐くように呟く。声に怒りと悲しみが混ざる。
小鳥はぎゅっと握ったまま、顔を強張らせる。
「流行病…??いや、違う……ポイズンベアが自己中毒を起こすのは自分と同じ成分の毒を取り入れた時…、ベアと同じ毒は冬の森で手に入る…冬眠中のポイズンベアの巣の周りに生えるキノコと毒草のみ…
キノコは見た目食用の物と区別がつかない為、採取する場合はギルドの許可が必要…」
黒猫の目が一瞬、驚きと尊敬に揺れる。
彼は無言のまま小鳥――いや、シエルの顔を見下ろし、その知識の深さに内心で感嘆する。
「……なるほど、よく知ってるな」と、低く呟く。
普段の無邪気な声や仕草からは想像できないほどの、冬の森での危険への理解と慎重さ。黒猫はそれが、ただの子供の知識ではなく、生き延びるために磨かれた知恵であることを感じ取った。
肩に掛けたマントを握り直し、視線を亡骸に落とす。
「……お前がこうして、森のことをよく知ってるのが、今日ここでどれほど助かるか……わかってるか?」
小鳥の小さな背中に、黒猫は心の奥底から信頼と感謝を抱く。
「知ってるだけじゃ、人も小鳥も助けられません…それに、次の町はギルドない…です、無いんです」
つまり、この親子はポイズンベアを殺すための贄にされた…
黒猫の目が一層鋭く光る。
肩に掛けたマントを強く握りしめ、唇を引き結ぶ。静かな森の中、息だけが荒く漏れる。
「……そうか。完全に、避けられなかったんだな……」
彼の声は低く、怒りと哀しみが絡み合い、言葉の端に震えを含む。
視線を雪に横たわる痩せた親子に戻し、黒猫は一瞬立ち止まる。
「小鳥……お前の言う通りだ。知識だけじゃ足りない、行動が伴わなければ……助けられない」
だが同時に、彼の瞳には決意の火が灯る。
「……この森を抜けるまで、次に同じことが起きないようにする。俺が責任を持つ」
小鳥はぎゅっと握った拳を解かず、唇を噛む。
「……はい、黒猫さん……私も一緒に、です」
黒猫は小さく頷き、肩のマントを整えながら、前を歩き出す。
「なら、覚悟を決めろ。次の町まで――誰一人として、犠牲は出させない」
「黒猫さん?誰一人って、小鳥しか居ませんよ!?」黒猫は足を止め、振り返る。
焚き火の夜とは違う──朝の冷たい光の下、その横顔には確かな怒りと、熱が宿っている。
「……そう思うか?」
声は低い。だが否定ではない。むしろ、噛みしめるような苦味を含んでいた。
「ここに倒れていた親と子。
昨日、野営を共にした旅人たち。
この先の村で、冬を越そうとしている奴ら……」
ひとつ息を吸い、白い吐息が鋭く空へ昇る。
「見えなくても、まだ会ってなくても、守るべき命は“いる”。
それを分かってるからお前は足跡を追ったんだろう?」
小鳥は瞬きを一度。
理解していなかったわけではない。ただ、黒猫の言葉で現実となり胸に落ちた。
「……はい。そう、です」
それは無邪気さでも天真爛漫でもない。
幼く見えて、彼女に根付いている現実。
血の匂いと、冬の危険と、命の重みを知っている目だ。
黒猫はふっと息を吐き、少しだけ口元を緩める。
「それに──お前ひとりじゃない」
ぐしゃりと髪を撫でる。乱暴な仕草なのに、不思議と温かい。
「俺もいる。二人で歩く旅だろうが」
小鳥の碧眼がぱっと開き、朝日の反射で星のように煌めく。
「……はいっ!
二人で、誰も死なない道にします!」
冬の森はまだ深く冷たい。
けれど二人の足取りは、温かい決意を帯びて前へ進む。
小鳥は肩掛けの荷物を持ち直し、軽く跳ねるように歩き出す。
黒猫はその小さな背を追いながら、静かに同じ歩幅で続いた。
──命を重ねる旅路。
今日もまた、二人で。
黒猫は小鳥の手元を見つめる。
土が慎重に盛られ、冬の雪の中で静かに眠る亡骸──生活魔法で包まれたその土は、冷たさを少しだけ和らげていた。
「……お前、ちゃんとやったな」
声は低く、ほとんど呟きだが、確かな安堵が滲む。
黒猫の目は、まだ残る怒りと悲しみを抱えながらも、どこか柔らかい光を帯びていた。
小鳥は黙ってうなずき、手を合わせてから立ち上がる。
「これで、少しでも安全になりましたね……」
黒猫はその背中を見つめ、短く息を吐いた。
「生き残るのが先決、だ。だが……こうして手を差し伸べる奴がいることも、忘れるな」
シエル「とりあえず、黒猫さんこれ毒消しです、苦いですが飲んでください」(既に飲んでる)
シュバルツ「用意がいいな…」
次の町にはギルドがない、厄介者親子、冬眠失敗した毒熊。




