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羽ばたく小鳥は猫とゆく  作者: 久遠


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12/36

12 小鳥は弱いので…

弱くないよ…???(作者混乱)

はい、わたくしが鳥頭だと言ってくれて構いませんわよ?(2話目を読み返して頭抱えた人)

朝食を終える頃、焚き火の火は小さくなり、白い息が空に溶けていく。

小鳥は地図を丸め、背負い袋を締めながら続けた。


「それからですね、道中に村とか町がぽつぽつあるんですけど…

大体3〜5日に一回くらいなんですよね。だから、しっかり歩けば数日おきには屋根の下で眠れます!」


黒猫はブーツの紐を結び直し、低く問い返す。


「……だが冬は閉じてるところも多い、だったな」


「はい。前回は食材をもらえたり泊めてもらえましたけど…今年は雪が早いって昨日教えてもらったので、あんまり期待しない方がいいかもです!」

小鳥は肩をすくめつつも笑顔のまま、バゲットの残りを包んで袋にしまう。ボアのお肉と情報交換してたようだ…。


「ぁ!焚き火消える前にやらなきゃ!」っと鉄の棒で焚き火をいじる小鳥

「何してんだ?」

「小鳥、昔、炭を作ってる人に聞いたことがあって!焚き火でも火がつきやすい炭ができるって!……あった!あちち!!」


 小鳥の声が朝の空気に跳ねる。

鉄棒で灰をほじる小さな影、慌てた指先、飛び散る火の粉。


黒猫は半眼で見下ろし、煙草の先をちろりと揺らす。


「……お前、火遊びする子供と変わらねぇぞ。」


そう言いつつも、黒猫はそっと手袋越しに木片を拾い上げてやる。

まだ赤い芯を残したそれは、黒く光る──確かに炭になりかけていた。


小鳥はぱっと顔を輝かせる。


「ほら!火口に出来るやつです!

雨の日でも火をおこせるって教えてもらって……すごいですよね!」


嬉しさが全身からこぼれるようで、黒猫は思わず鼻を鳴らす。


「知恵だけは一丁前だな。」


「えへへー。褒められた!」

指を火傷しそうに振りながら誇らしげ。


黒猫は炭をひとつ手のひらで転がす。

暖かさが指先にじん、と残る。


「…道中、天候が荒れた時に役立つ。

無駄じゃねぇよ、ちゃんと持ってけ。」


小鳥は両手でそれを包み込み、満足そうに胸元へしまった。

朝日が昇り、白い息がふわり浮かぶ。


そのあともいくつか炭を掘り出してる小鳥

「あとはこれを灰で包んで…」

 小鳥の指先は灰に沈み、さらさらと白い粉を掬っては炭片を包み込んでいく。

灰はふわりと舞い、朝の光に溶けて銀色の粒になった。


「こうして灰で包むと湿気すいにくくて火口として長持ちするって言われました!」

声は弾み、まるで宝石でも扱っているかのような慎重さと喜び。


黒猫は腕を組みながら、その手元をじっと見ていた。


「器用なもんだな。

 食い物だけじゃなく、火の扱いも心得てるとは。」


「えへへ、食材守るためには火って大事ですから!」

胸を張る小鳥。頬は紅く、まるで焚火の残り火のように温かい。


灰にくるまれた炭片は次々と小さな袋に詰められていく。

黒猫はそれを一つ取り上げ、手のひらで重さを確かめた。


「数は十分か?」

低い声。だが、その瞳はどこか柔らかい。


「もう少し作っておきます!

 黒猫さん、雨の日に火起こし失敗したら困るじゃないですかー!」


「俺が?だと?」

眉が僅かに吊り上がり──


小鳥は悪戯っぽい笑顔でこくこくうなずく。


「はい!黒猫さんが震えてたら小鳥が助けますからね!!」

どや顔。朝の鳥みたいに元気いっぱい。


黒猫は視線を落とし、ふっと笑った。

それは夜には見られなかった、ほんの短いぬくもりの呼気。


「……震えるのはお前の方だろうに。」


「その時はぎゅって抱きしめて暖めてくださーい!」

軽快な声が森へ跳ねていく。


黒猫は煙草の火を指で弾き、細く煙を流した。


「……そうなったら考えとく。」

  

 小鳥は炭を包んだ袋とは別に、指先でつまめるほどの灰をそっと小瓶に移し替える。

さらさらと細い砂のような音が鳴り、瓶の底に薄い月のような層ができた。


「これ、後で使うんです。

 ほら、ご飯焦がした時とか、血が付いた道具洗う時とか、あと……匂い隠しにも!」

ぱたぱたと手を払い、胸を張る。


黒猫は肩越しに振り返り、片眉をあげる。


「灰でそんなことまで出来るのか。」


「ええ!里の人に教わりました!冬は水が冷たいから、こういう知恵は大事なんです!」

声は明るく、瓶を布で包んで大事そうにしまい込む。




荷を整え、水袋の残量を確かめ、鍋の底に残ったスープの油膜が朝日を跳ね返す。

小鳥は準備を終えると、ぱんと両手を叩き、


「黒猫さん、準備できました!いつでも出発できます!」


黒猫は立ち上がり、肩にかけた武具の重さを確かめるように少し動かす。

背中に落ちた光が、毛並みの黒を深く刻んだ。

 

黒猫は少しだけ空を仰ぎ、白い吐息を吐く。

冷え切った空気の向こう、空はゆっくりと青に染まり始めていた。



「——歩けるか?」

「もちろんです!小鳥は元気いっぱいです!」


小鳥はポンと胸を叩き、弓を背負いなおす。

景色に溶ける髪は朝日に赤みを帯び、まるで翼のように軽やかに揺れた。


黒猫は「なら行くぞ」と短く言い、荷を担ぎ直す。

その背中の横に、小鳥が弾むような足取りで並ぶ。


今日からまた、凍てつく道のりが始まる。

途中の町が開いているか、補給できるか──運任せだ。


けれど、二つの足音は力強く雪を踏みしめる。

小鳥の笑顔と黒猫の静かな決意が、白い世界にあたたかな色を落としていた。



 町までの長い道中での会話

「小鳥の里にはですね、沢山強い人たちがいるんです!姉とかが1番いい例ですね!騎士になるくらいとても強かったので!

他の人はそれぞれの強さを活かしてギルドで生計を立てる人、猟師、護衛で沢山旅する人、魔法で色々してる人、ぎしゅを作る人、ぱっと思い浮かぶのはこれぐらいですね!」指折り思い出しながら数える彼女

「なら、なんでお前は街の兵舎に居たんだ?」

 小鳥は歩みを止めず、白い息をふわりと吐きながら指を折っていた手を胸元で組む。

質問の意味を飲み込むまで、少しだけ間が空く。


朝日が雪原に反射して眩しい。

彼女の瞳にその光が映り、どこか遠い過去を思い返すように瞬いた。


「……小鳥は、里の中だと普通なんですよ」

ぽつりと落ちる声は、いつもの弾む調子とは違って、少し柔らかい。


「姉は騎士。兄弟たちは戦士とか魔法とか道具作りとか、みんな誰かの役に立っていて…」

彼女は少し笑う。寂しさと誇りが混じったように。


「小鳥は目が良くて、少しだけ魔法が使えて、料理と観察が得意。

でも『一番』にはなれなかったんです、誰の上でも下でもないから」


黒猫は足を止め、横目で彼女を見る。

自信満々にウサギやボアを狩り、森の夜を越え、笑って朝を迎える少女が──劣等感を口にするとは思わなかった。


小鳥は続ける。声は明るく戻っていくが、真ん中の芯だけは揺れていない。


「だから外に出たんです!外でなら、小鳥が『小鳥』でいいって言ってくれる人がいるかもって。

兵舎にいたのは、ほら…最初に世話になった場所だったからです。寒くて倒れた時、助けてもらったんです」

(覚えてないだろうけど、私はあなたにも救われました…)


彼女は笑う。胸を張るでもなく、恥じるでもなく。ただ事実として。


「小鳥は、強くないですよ。でも強い人を助けたり、道に迷わないようにしたり、

美味しいもの作って、生き延びる手伝いができます」


そしてこてんと首を傾げ、黒猫の目をまっすぐ見上げる。


「黒猫さんみたいな強いひとも、小鳥がいたらちょっと楽かなって。

……だから、ついてきてます」


風がふわりと彼女の髪を揺らす。

その色は陽の赤と冬の白のあいだで羽ばたく鳥のようだった。



「お前はあの兵舎で毎日兵士たちにスープ作ってたろ」


 小鳥は一瞬、きょとんと立ち止まった。

言われた言葉の意味を理解するまでに、少し時間がかかる。


やがて――ふわりと肩が緩み、胸の奥で温度が広がるように目が細くなった。

いつもの無邪気さとは違う、ぽっと火が灯るような笑顔。


「……黒猫さん、覚えてたんですね」


声が少しだけ震える。

嬉しい、という感情が、喉の奥まで満ちてふくらんでいた。


兵舎で鍋を振り、くたくたになった兵士たちの前に湯気を差し出していた夜。

その姿は誰かに褒められるためでも、自分を上に見せるためでもなく、ただ――誰かが少しでも生きやすくなるように。


その価値を、黒猫は見ていた。


小鳥は胸の前で手をぎゅっと握りしめる。


「小鳥……そう言ってもらえたの、初めてです」


誇らしげでもなく、泣きたいほどでもなく。

ただ、まっすぐに受けとめる。


「じゃあ、小鳥は弱くてもいいんですね。

強くないけど、人のお腹と心をあっためられるなら……」


くるりと黒猫の前に立って、にかっと笑った。


「役に、立ってますよね?」


その笑顔は冬でも空を飛ぶ小鳥。

弱くても、今日も翔ぶ。

1人で飛べなくても、隣に誰かがいれば飛べる。


黒猫は煙草を取り出して火を付けて無言で小鳥の頭を撫でる

 手は荒っぽく、しかし拒絶でも敵意でもない。

まるで言葉より先に伝える術を不器用に選んだように、くしゃり、と小鳥の髪を掻き回した。


「わ!わ!わ!」と情けない抗議が上がるけれど、黒猫は気にもしない。

煙草の煙が白くほどけ、冬の空へ消えていく。


「俺は戦場に身を置いてた人間だ」


低く落ちる声は、焚き火より温度がなくて、それでもどこか穏やかだ。

経験で磨かれた目は人を測る。

嘘を吐く者、逃げる者、歯を食いしばる者──

生きるための本性を、火を見るように知っている。


「人を見て、どういうやつか知らなければ話にならねーだろ」


沈黙よりも雄弁な一言。

小鳥の笑顔も、脆さも、夜更けに見せた真剣さも。

全部見て、その上で仲間として言葉を投げている。


乱暴な手つきのまま、指先だけ少し柔らかくなった気がした。


小鳥は両手で頭を押さえながら見上げる。

困ったような、でも誇らしいような、そんな顔で。


「……じゃあ、ちゃんと知ってくれてるってことですね」


いたずらみたいに目を細め、寒さで赤い頬をふくらませる。


「小鳥は弱いですよ?

すぐ寝ますし、背も小さいですし、腕力もありません」


ぴょこ、と胸を張る。

弱さを恥じない、むしろ誇る小鳥の強さ。


「でも黒猫さんなら、置いていかないでくれますよね」


問いではなく、確信にも似た響きで。

その言葉が冬の朝を満たすように、柔らかく、あたたかかった。


「置いてったら、お前の里に着けず、俺の腕作れないだろう?」


 その言葉は淡々としていて──なのにひどく優しかった。


焚火の残りがぱち、と弾ける。

冬の空気は冷たいのに、胸の奥だけがぽうっと温まる。


小鳥は瞬きを一度。

理解が追いついた瞬間、ゆっくりと口が綻んだ。


「……っそっか。そう、ですよね……!」


自分の役目を、必要とされていることを、まっすぐ言われた。

子どもみたいな簡単な理由なのに、胸がいっぱいになる。


「黒猫さんの腕、ちゃんと作りますから。

だから見ててください、ほら──」


彼女は荷物から小さな工具と紙を取り出す。

指先は小刻みに震え、それでも迷わず動く。


「里に着くまでにも、義手の図面いっぱい考えます。

軽くて、強くて、あなたの動き方に合うやつ。

あ、でもあまり格好よくしすぎると調子乗りますか?」


からかうような笑みを浮かべて見上げた。

昨夜よりもずっと距離が近い目。


黒猫の無言は肯定にも否定にも聞こえるけれど、

その横顔は確かに──拒んでいなかった。


 陽の光は小鳥の頬を照らし、

黒猫の影は少しだけ柔らかく伸びてゆく

休憩を交えながら進んでゆく

荷を整え、水袋の残量を確かめる。


黒猫は立ち上がり、肩にかけた武具の重さを確かめるように少し動かす。

背中に落ちた光が、毛並みの黒を深く刻んだ。


「行くぞ。

 里までまだ距離がある。」


小鳥は準備を終えると「はーい!」と

元気な返事が森へ飛ぶ。落ち葉が跳ね、小さな影が黒猫の横に並んだ。


街道は白く、冬の静けさをまとう。

吐く息が淡い雲になり、二人の歩幅は自然と揃っていった

シエル、食料と物々交換して情報もらって…弱く…ないよ???シエルの視力の良さはずば抜けすぎて、ヤベーです

次は短いです

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