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吸血鬼に会って特別な人になりたい。

作者: 鍋の地
掲載日:2025/10/13

吸血鬼に会いたい。

だから夜、散歩をする。


「はっ、はっ」

逃げる、ひたすら走り、僕は逃げる。

捕まったら『ヤツ』に殺される。血を吸われて、殺されてしまう。

「こんなはずじゃ、なかったのにっ!」

喋るな、口は呼吸だけのために使え。吸って吸って、吐いて吐く、スッスッ、ハッハッ。

『ヤツ』から逃げろ。

『吸血鬼』から。




吸血鬼に会いたい。

血を吸われて、僕も吸血鬼になりたい、

そうしたら、特別な存在になれる。

確かに、太陽が苦手になるのは困る。

でも、老いのはやさが遅くなるし、死ににくくなる。

『中二病』だろうか? いや、そんなのじゃない、はずだ。

中学二年生の僕は、吸血鬼になりたくて、毎晩、散歩をしていた。散歩していたら吸血鬼に会えるかなって思って。

しかし。

「マズッ、ぺっ」

吸血鬼には会えた。

その吸血鬼は、制服を着ていた。多分、高校の。僕が通うつもりの高校、この市の進学校。何年生かはわからない、てか、もしかしたら、コスプレかもしれない。吸血鬼だから。

「あ? 何人の食事見てんだよ、吸うぞ?」

その吸血鬼、少女は、睨んできた。

ワクワク、ドキドキ、しながら僕は言った。

「僕を吸血鬼にしてくれませんか?」

「嫌だ」

即答。

まあ、いきなり言われたら困るよな。ここは、何か面白い話をして。

そう思っていると、

ガッ!

と、右腕をつかみ(折れるんじゃね? て思うくらい力が強い)、鬼の形相で、

「なあ、いいこと教えてやるよ。あの世で誇れるくらいにいいこと、自慢しろよ、今から逝くからな」

「は? え?」

「吸血鬼には、3つの選択肢がある。

1つ、眷属にする。部下ってやつだ、オレの部下。

2つ、変えない。血を吸うだけだ、眷属にもしない、死にもしない。

そして、最後、3つ。だが、オレは説明しない。そこの男子高校生を見ろ、それだけでわかるはずだ。いや、わからなくてもいい。すぐにわかるから、あの世でな」

恐る恐る、地面に横たわる『ソレ』を見る。

『ソレ』は、『死体』。血を吸われ、殺された。

「おい」

「ヒッ」

「まさか、吸血鬼に会ったら吸血鬼にしてもらえる、とでも?」




家に帰り、部屋でガダガタ震える。

「なんだよ会ったら吸血鬼になれるんじゃおかしいだろ」

しばらく、震える。

そして、落ち着くと。

「眷属になるってことは、部下になるってこと」

あの、僕より少し歳上の、少女の、部下。

よくわからない人(吸血鬼か)の部下には、なりたくないな。

特別な存在になる、という選択肢もある。

…。

とりあえず。

「明日の夜も、会いたい」

読んだいただき、ありがとうございました。


あなたの夜もいい夜になりますように。けど吸血鬼に殺されませんように。

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