吸血鬼に会って特別な人になりたい。
吸血鬼に会いたい。
だから夜、散歩をする。
「はっ、はっ」
逃げる、ひたすら走り、僕は逃げる。
捕まったら『ヤツ』に殺される。血を吸われて、殺されてしまう。
「こんなはずじゃ、なかったのにっ!」
喋るな、口は呼吸だけのために使え。吸って吸って、吐いて吐く、スッスッ、ハッハッ。
『ヤツ』から逃げろ。
『吸血鬼』から。
吸血鬼に会いたい。
血を吸われて、僕も吸血鬼になりたい、
そうしたら、特別な存在になれる。
確かに、太陽が苦手になるのは困る。
でも、老いのはやさが遅くなるし、死ににくくなる。
『中二病』だろうか? いや、そんなのじゃない、はずだ。
中学二年生の僕は、吸血鬼になりたくて、毎晩、散歩をしていた。散歩していたら吸血鬼に会えるかなって思って。
しかし。
「マズッ、ぺっ」
吸血鬼には会えた。
その吸血鬼は、制服を着ていた。多分、高校の。僕が通うつもりの高校、この市の進学校。何年生かはわからない、てか、もしかしたら、コスプレかもしれない。吸血鬼だから。
「あ? 何人の食事見てんだよ、吸うぞ?」
その吸血鬼、少女は、睨んできた。
ワクワク、ドキドキ、しながら僕は言った。
「僕を吸血鬼にしてくれませんか?」
「嫌だ」
即答。
まあ、いきなり言われたら困るよな。ここは、何か面白い話をして。
そう思っていると、
ガッ!
と、右腕をつかみ(折れるんじゃね? て思うくらい力が強い)、鬼の形相で、
「なあ、いいこと教えてやるよ。あの世で誇れるくらいにいいこと、自慢しろよ、今から逝くからな」
「は? え?」
「吸血鬼には、3つの選択肢がある。
1つ、眷属にする。部下ってやつだ、オレの部下。
2つ、変えない。血を吸うだけだ、眷属にもしない、死にもしない。
そして、最後、3つ。だが、オレは説明しない。そこの男子高校生を見ろ、それだけでわかるはずだ。いや、わからなくてもいい。すぐにわかるから、あの世でな」
恐る恐る、地面に横たわる『ソレ』を見る。
『ソレ』は、『死体』。血を吸われ、殺された。
「おい」
「ヒッ」
「まさか、吸血鬼に会ったら吸血鬼にしてもらえる、とでも?」
家に帰り、部屋でガダガタ震える。
「なんだよ会ったら吸血鬼になれるんじゃおかしいだろ」
しばらく、震える。
そして、落ち着くと。
「眷属になるってことは、部下になるってこと」
あの、僕より少し歳上の、少女の、部下。
よくわからない人(吸血鬼か)の部下には、なりたくないな。
特別な存在になる、という選択肢もある。
…。
とりあえず。
「明日の夜も、会いたい」
読んだいただき、ありがとうございました。
あなたの夜もいい夜になりますように。けど吸血鬼に殺されませんように。




