表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元シスター、悪役令嬢に転生したので修道院行きを目指したら、俺様侯爵様に溺愛されました  作者: 有木珠乃
第一章:学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/50

第48話 予想通りにいかないのはお互い様

「なんか、凄い形相でこっちを見ているんだけど……アレ、放置していていいの?」


 花壇が荒らされているのを発見した数日後。私とフィデルは、アリッサムの代わりの花を植え終えたため、久しぶりに授業に出たのだ。

 さすがにそのままでは、庭師さんにも悪い、と学園側も思ったのだろう。そんな配慮をしてくれたのだ。


 まぁ正確にいうと、犯人を捕まえるために、あれこれご協力いただいたお陰で、授業に出るのが遅れてしまったのだけど……。

 シルヴィ嬢の反応を見ると、皆の努力が無駄にならずに済みそうで良かったわ。


「フィデル様は護衛だから、気になるとは思うけど、相手にしないでね」

「カスタニエ嬢がそういうなら、従うけど。本当にシルヴィが警戒する対象だったなんてな」

「あら、花壇の時は確信めいた発言をしていたのに……やっぱり信じられない?」


 いくら私とミュンヒ先生が説き伏せ、学園の噂が飛び交っても、数カ月前まではシルヴィ嬢の近くにいたのだ。しかもフィデルは攻略対象者。簡単に乙女ゲームのヒロインであるシルヴィ嬢に対して、良くない感情は抱けないのだろう。


「いや、エミリアンとアシルの趣味が悪いな、と思っただけ」

「否定はしないけど……親友と元護衛対象を悪く言うのは控えてね。今後のためにも」

「今後?」

「ミュンヒ先生が私のために、礼拝堂と孤児院を建ててくださるの。子どもたちに悪い影響を与えられては困るから」


 フィデルは今、カスタニエ公爵家に雇われて、私の護衛をしている。けれど護衛にフィデルを選んだのは、ミュンヒ先生だ。だから当然、結婚後だってそのまま継続するに違いない。


「子どもたち……その子たちの面倒を、俺も見ることはできるのか?」

「え? まぁ、経営を私に任せてくれるっていう話だから、可能だけど……どうして?」

「剣術を教えたいんだ」

「それはいいわね。護身にもなるし、将来のことを考えると尚更だわ。でも教えるのが剣術だけっていうのもね。フィデル様も、子どもたちに勉強を教えられるようになると、いいんだけど?」

「うっ……それは追々な。い、今は無事に捕まえられるか、どうかだろう?」


 あっ、話を逸らした。でも、ちゃんと『犯人』『荒した』という相手が警戒するワードを言わなかったことは、褒めてあげなければ。席が離れているとはいえ、シルヴィ嬢にも聞こえるかもしれなかったからだ。


「そうね。でも今日は、動かないと思うから大丈夫よ。本番は明日から。こちらも慎重に動きましょう」

「だな。そうなると、カスタニエ卿からの連絡が、今日中に届くといいんだけど」

「ミュンヒ先生も動いているから、そっちも大丈夫でしょう。変にライバル心を抱いているから」


 お陰でジスランを操作し易くて、助かっている。元々、攻略対象者というだけあって、ジスランはスペックが高いのだ。ただの妹想いの兄であれば、どれだけ良かったことか、と思えるほどに。


「お兄様が迷惑をかけることもあるかと思うけど、そこは我慢してね」

「大丈夫。カスタニエ卿がシスコンなのは、有名な話だから」

「……本当にごめんなさい」


 こんな時、教壇に立っているのがミュンヒ先生だったら、どんなに良かったか。フィデルと雑談していたら、不機嫌になるだろうけれど、そんなことは関係ない。

 ミュンヒ先生の姿を見れば、いつだって私の心は晴れるのだから。



 ***



 フィデルには気をつけるように、と言ったものの、実際シルヴィ嬢がどのように動くのか、見当がつかなかった。


 向こうも同じことを考えていると思うが、相手は転生者。乙女ゲームのヒロインではなく、元プレイヤー。しかも、私を貶めようと画策する人物だ。


 これまでのシルヴィ嬢のイメージは、浅はかで幼稚。我慢強くなくて短気。だからすぐにまた、仕掛けてくると思ったのだ。


「今日もダメだったな」

「……えぇ」

「警戒されているんじゃないか」

「もしくは、大きなことを計画しているのかも」

「その準備をしているから遅れている、とでもいうのか?」


 いくらなんでも、それはあり得ないだろう、という副音声が聞こえてくるようだった。けれど私は、死に戻る前のシルヴィ嬢を知っている。


「彼女なら、大それたことだって平気でやるわ。エミリアン王子に近づいたのが、いい証拠よ」

「……確かに」


 だからこそ、用心するに越したことはなかった。問題は……協力していただいた方々の忍耐が、どれくらいあるか、だ。


「フィデル様はおそらく、我慢するのは苦手だと思うけど」

「うん」


 即答……なのね。でもちょうどいいわ。ちゃんと釘を刺しておかなければ。


「シルヴィ嬢が動くまでは、絶対に手を出さないでほしいの」

「……どうしても? 上手くいかないのなら、少し変更するくらい、別に悪手だとは思わないけど」

「そうかしら?」

「相手の出方を待つ場合は、特にな。訓練でも実践でも、よくやる方法だ」


 なるほど。普段のフィデルを見ていると忘れそうになるけれど、一応騎士の家系の生まれなのよね。

 ミュンヒ先生がいないから、なんでも自分が、とか思っていたけれど、忘れていたわ。


『私は一人ではない』


 ジスランが学園に来た時、再確認したはずなのに、もう頭から抜けているなんてね。それに今回は、ミュンヒ先生だけではない。フィデルもいるし、他にも協力者を募っている。


「フィデル様。そういうのなら、いい案があるのでしょう? 是非、聞かせてもらえない?」

「いいよ。それに、カスタニエ嬢よりも俺の方が、シルヴィのことを知っていると思うんだ」


 本来のヒロインではなく、転生者であるシルヴィ嬢の傍にいたのだから、そう言われると説得力があった。さて、それで釣られてくれるのか。お手並み拝見、といきましょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ