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3 休息そして運命的な出会いへ

マナは、心を癒すため実家のある愛知へ戻ってきた。


両親が営む農家の手伝いをしながら、

市場には出せない果実でジャムを煮たり、

気まぐれに、自家製のケーキを焼いたりする日々。


キッチンに立つときのマナは、自然と鼻歌がこぼれるようになっていた。


その様子を見ていた母・里美さとみが、ふっと笑う。


「マナ、ケーキ作ってるとき、本当に楽しそうね。安心したわ。東京から帰ってきたときは、ガリガリに痩せてクマもひどくて……すごく心配したのよ」



「うーん……。パティシエはもう、こりごりかな…… 労働時間長いし、怒鳴られるし、技術は“見て盗め”って、メモしてたら“手を動かせ”って怒られるし…… まるで昭和のまんまなんだよ。ぜんっぜん楽しくないの」


マナは言いながら、少し苦笑する。

けれど、顔はどこか曇ったままだ。



「でも、この前の桃のパイあれね、近所の農家の人たち、うまいうまいって大好評よ。やっぱり、ケーキ作るのは好きなんじゃない?」


「……うん。すごく好き。でも、パティシエの職場って、やっぱり怖い」


ぽつんとこぼれた言葉に、母は頷きながら台布巾を絞る。



そして、ふと思い出したように言った。

「そういえば……隣町に、小さなケーキ屋さんがあるの。すごく美味しいって評判らしいのよ。気晴らしに行ってみたら? 美味しいケーキ、食べに」


それは、母なりのやさしい励ましだった。


「……うん。行ってみるね」

出かける支度をしながら、マナはまだ知らなかった。



その店での出会いが、自分の人生を

もう一度、ケーキと向き合う未来を、静かに変えていくことになるなんて。





次回へ続く

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