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なろうラジオ大賞6参加作品たち

俺は今日もベランダをパトロールする。

 俺は“ねこちゃん”である。


 ばあちゃんにそう呼ばれているが、名前ではない。うちのばあちゃんはどの猫に対してもねこちゃんと呼ぶからだ。野良猫でも、俺でも等しくねこちゃん。いや、確かに猫だから間違ってはいないのだが。


 まあ、名前なんてどうでもいい。俺には使命があるのだ――この家と、手下であるばあちゃんを守ることだ。


 今日も朝からベランダをパトロールしている。

 不審者の侵入を防ぐためだ。

 最近は特にカメムシが多い。

 カメムシはのろのろしているように見えて、油断すると臭い液を撒き散らす。

 ばあちゃんがニオイにやられたら大変だからな。手下想いの優しい俺は即座にカメムシを捕獲し、鉢植えの隅に追いやるんだ。


 ふっ、これで安心だな。さすが俺。手下のために頑張るいいボス猫。


 自らの偉業に満足しながら振り返ると、ばあちゃんがベランダのガラス戸を開けて俺を呼ぶ。


「ねこちゃん、お散歩かい? 良い天気だものねぇ」


 優しい手が俺の頭を撫でる。だが次の瞬間、ばあちゃんは窓を開けて、俺の捕獲したカメムシをスリッパでシバいた。


「んぎゃあああああ! ばっちいわ!」


 ばあちゃんは強い。

 気を取り直して、次の任務だ。

 部屋に戻り、隠し場所にたまったマタタビの枝を確認する。

 これはばあちゃんのために集めたものだ。

 最近、寝込むことが多いばあちゃんが元気になるようにと、俺がせっせと拾い集めたものだ。

 俺達猫には元気のミナモトだが、ばあちゃんにはその価値がわからないらしい。


 以前、ばあちゃんの枕元にマタタビを置いた時も、「あら、ねこちゃんったら、またゴミを集めて。困った子だねぇ」と言われてしまった。


 それでも俺は諦めない。

 ばあちゃんが寝ている間、そっと足元にマタタビを置く。手下にいつも元気でいてほしいという俺の願いだ。


「ねこちゃん、どこ行ったの? 日向ぼっこしましょう」


 ばあちゃんの呼び声がする。俺は急いで手すりからばあちゃんの隣に飛び乗り、膝の上に座る。

 ばあちゃんはゆっくりと俺の頭を撫でてくれる。


 ……まあ、俺の努力が通じなくてもいいか。ばあちゃんが笑っている。それだけで十分だ。


 俺は今日もベランダをパトロールする。

 手下の平和を守るために。



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― 新着の感想 ―
母方の祖母が最期数年、一日中老猫を膝に縁側に座っていたのを思い出しました。
素敵な関係ですね( ´∀` ) 二人の間の価値観の齟齬は気になりますけど(ォィ
猫ちゃんの目には、飼い主であるおばあちゃんや周囲の環境はこのように見えているのですか。 やはり猫ちゃんは誇り高い性格が似あいますね。
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