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ここで速報です!

作者: はやはや
掲載日:2024/06/24

 おばあちゃん家から小学校に通うようになって、通学にバスを使うようになった。お父さんが海外赴任になって、お母さんもついて行った。私は友達のいる学校に残りたくて「一緒に行かない」という選択をした。


 お父さんの任期は三年らしい。私が卒業する頃に帰ってくる予定だ。おばあちゃん家は私が通う小学校の校区ギリギリのところにあった。詳しくはわからないけれど、いろんな手続きを経てバス通学が許されることになった。

 私が乗るのは地域を走るコミュニティバスだ。地域密着型だからか乗客のほぼ全員がお年寄り。そんな中で小学三年生の私は少し浮いていた。


 私がバスで座る場所は決まっている。運転席の左後ろだ。タイヤの上に座席があるから、周りの席より高くて、すぐ前に広がるフロントガラスからの眺めも楽しめる。お年寄りの利用者が多いこのバスでは、段差を上って座るその席は、いつも空いている。だから、私が座る。


 今日もバスに乗り込むと、その席に真っ直ぐ向かい着席した。私が席につくのを見て運転手さんがバスを発車させる。

 私にはバスに乗っている時に好きな光景がある。それはコミュニティバス同士がすれちがう時、運転手さん達が互いに軽く手を挙げてお互い挨拶をする光景だ。

「お疲れ」という言葉がそこには隠されて、なんかかっこいいなぁ〜と思ってしまう。


 バスに乗るのは二十分くらい。その間に運が良ければ二回その光景が見られる。今日は何回見られるかな? と、わくわくする。

 いつも通りバスが走り出す。見慣れた車窓の景色を見つめていると、いつもと違うものが目に入った。路肩にレッカー車が停められている。ちょうど車を乗せるところなのか後のステップが下ろされている。

 もし、このままバスが進んで行ったら、レッカー車に乗り上げちゃうな、なんてあり得ない想像をしているとバスはずんずんレッカー車に近づいていった。


 えぇっ!! と思いつつも、バスの運転手さんはプロだからギリギリのところでハンドルを切って交わすのだろうと考えた。


 が、その気配は一向になくバスは自然な流れのように、レッカー車へ乗り上げた。


「ひゃぁっ!!」


 私は声を上げる。レッカー車に乗り上げ、ジェットコースターの一番始めみたいに車体が斜めになる。怖い! 怖い! 運転手さん! と思って運転席を見ると運転手さんは舟を漕いでいた。

 慌てて後ろを振り返る。他の席に座っているお年寄りもみんな寝ていた。確かにお年寄りは普段からバスの中では寝ていることが多いけれど、こんな状況でみんな(運転手さんも含め)寝ているとは!


 レッカー車の上に乗り上げた所で、がくんとバスが停まった。その衝撃で運転手さんが目を覚ました。一瞬の困惑を見せた後、運転手さんは慌ててどこかに電話を入れた。

 窓の外を見ると大勢の人が集まって騒いでいた。スマホをこちらに向けている人もいる。そうこうするうちに、後ろの方で「何が起きたんかいな」とお年寄りが騒ぎ始めた。


 野次馬の通報によって駆けつけた消防と警察によって乗客は助け出され、バスも地上に降りた。お年寄りの中にたった一人小学生が混じっていた、というのが同情をかうらしく、いろんな人に「怖かったたね」とか「可哀想に」と言われた。

 そして、マイクを持った綺麗なお姉さんに、いろいろ質問された。



 ⁂


 いつもならもう帰ってきているはずなのに、今日は遅いなと思いながらお米を研ぐ。居間にあるテレビから夕方の情報番組が流れている。

 帰りの会でも長引いているのかもしれない。そう思いながら炊飯器にお米をセットする。


『ここで速報です!』


 今までどこかしらの観光地と中継をしていた、のほほんとした雰囲気から一転、情報番組に緊張感が走る。


『〇〇市の国道でバスがレッカー車に乗り上げる事故が発生しました』


 私はテレビ画面から目が離せなくなる。そこに写っているバスは孫の繭子まゆこが通学で使っているコミュニティバスだった。

 繭子の帰りが遅い。バスが事故。この二つが一緒にして重なりパニックになりかけた時、テレビ画面の映像が切り替わった。


 顔は写っていないけれど、ランドセルの一部が写っている。薄紫色のランドセル。繭子のランドセルと同じ色だ。

 映像の右横には縦に〝乗車していた小学生〟とテロップが出ている。繭子だ! と思った。

 どうやら車内で唯一寝ていなかった乗客として繭子はインタビューを受けているようだ。


「怖かったです。レッカー車に乗り上げたのもそうだけど、私の他、みんなが寝ていたことも」


 怖かっただろうにしっかり答える繭子。

 その時、電話がなった。きっと警察か消防かだろう。私は慌てて電話を取った。

読んでいただき、ありがとうございました。

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