5お義兄さまのために私は動きます!(義母コートニーの考察①)
個人的にコートニーについては思うところは多々ある。
それでも、コートニーが義父に毒を盛ったとはあまり考えたくない。
(コートニーはなにをかんがえているのかしら……。)
私は紙をめくり、コートニーの略歴ページを探した。
【コートニー・カルトリード】
現カルトリード辺境伯夫人。39歳。
15歳:貴族学院入学、当時はコートニー・レイン男爵令嬢
18歳:貴族学院卒業
23歳:第一子デニス出産(バイロン・カルトリードの庶子)
33歳:デニスとともにカルトリード邸に客分として迎え入れられる
36歳:カルトリード辺境伯バイロンと結婚、デニスと養子縁組
コートニーの情報は集まりにくいかと思ったが、まったくそんなことはなかった。
邸に客分として迎え入れられて以来、侍女やメイドに「コートニー半生記(のような物語)」を散々聞かせていたらしい。
だから、少し耳をすましておくだけで、コートニーのこれまでの人生の大半の噂が集まった。
ただし本人が語ったからといって真実とはかぎらないし、所詮伝聞なので歪曲されている可能性も踏まえて特筆すべき点を記載した。
【コートニーの特筆事項】
コートニーの生家であるレイン男爵家は、ごく平均的な男爵家である。
衣食住に事欠くことはなかったが贅沢はできない環境で育ったコートニーは、富裕な生活を夢見ていた節がある。
なおコートニーは幼少期から、明るい金髪と青い瞳を持つ愛らしい顔立ちの令嬢として、一部では有名なだったため、レイン男爵は将来的にコートニーを上位貴族に嫁がせることも視野に淑女教育に力を入れた。
その結果、下位貴族である男爵令嬢の気安さを持ちながら、あたかも高位貴族令嬢並みのマナーを持つ貴族令嬢が誕生した。
とはいえ、男爵家では招くことができる教育係に限界があったようで、あくまでも "下位貴族にしては" という但し書きがつく。
バイロンとの交際については、バイロンには婚約者のパメラがいたため、ほかの女生徒から『婚約者のいる男性と親密になるのはよくない』など忠告されることも多く、また持ち物を隠されたり、汚されたり、壊されたりといった嫌がらせが頻繁おこなわれていた。
しかしコートニーはそれらはことごとく無視し、バイロンとの交際を継続している。
なお、パメラはコートニーたちの3歳下のため、コートニー卒業と入れ替わりで入学している。よってふたりが学院で邂逅したことはなかった。
バイロンとパメラの結婚を機に、コートニーはバイロンの愛人となり、与えられた邸宅で生活するようになる。なお生家のレイン男爵家との縁は、この時点で切れている。
デニス出産後はバイロンがコートニー宅を訪れる回数が激増。バイロンの潤沢な援助で、裕福な生活を送っていた。デニスにも乳母や優秀な教育係を付けられた。
カルトリード邸に客分として招かれた当初コートニーは、アガサやメリッサとは関わらない姿勢だった。
しかし時間が経ちにつれ、消極的な嫌がらせがはじまり、徐々にエスカレート。
アガサ死去後、正式な辺境伯夫人となってからは、メリッサへの嫌がらせが日常的におこなわれている。
一ヶ月前にバイロンが寝たきり状態になって以来、日に何度か寝室を訪れて介抱している模様。専属医師カールとも頻繁に話している姿が目撃されている。
なお息子のデニスに対しては、邸で暮らすようになって以来、一歩引いたような姿勢を見せている。母子で行動を共にすることも多いが親密度は低いと思われる。
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コートニーを一言で表すなら “傾国の美女” がぴったりだ。
義父がひと目で恋に落ちたのも頷ける。いまでさえ10代半ばの息子がいるようには見えないのだ。若い頃はさらに美しかったのは間違いないだろう。
(彼女の周りだけ時が止まっているのかもしれないわ……。)
しかし、容姿以外でコートニーの良いところを挙げろ、と言われたら私は困る。
邸に来た当初コートニーは、どちらかといえば母と私には関わらないようにしていた。
すれ違っても母に軽く会釈する程度で決して話しかけてこない。私だけのときはチラリと見るだけだ。
だからコートニーの美しさと相まって、コートニーは物静かな性格だと私は思っていた。
しかしそうではないことを、私たちははじめてのお茶会で知ることになった。
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