三人目
「うちの旦那はいつまで生きますか?」
「どうして、そんな事を?」
「ずっと我慢してたんです。もう限界なんです。離婚したいんですが、もうすぐ死ぬならそれまで我慢しようと思って・・・。だって今まで我慢したんですよ。それなのに何にも貰えないなんて許せないじゃないですか?どれだけ尽くしてきたかわかりますか?専業主婦って大変なんです。家のことはやって当然。子どもたちのこともやって当然。旦那の面倒もやって当然。それなのに好きな物も買えず、この苦労わかりますか?」
「それは大変でしたね。」
「大変って一言で片付けないでもらえますか?もう本当に耐えられないくらいなんですよ。それでどうですか?旦那はいつ死にます?」
「うーん、当分死なない感じですねぇ。」
「えっ。そうなんですか。わかりました。今すぐ離婚します。」
「いいんですか?あの人の旦那さんもうすぐ死にますよね。」
「いいんだよ。借金まみれの旦那が死んでもお金は入ってこないからね。離婚して正解だろ。」
「意外と優しいんですね。」
「意外とって何だよ。意外とって。ふん!」
膨らんだ頬が微かに微笑んだのを私は見逃さなかった。