出会い
「誰?」
部屋の片隅で何かが動く気配がした。
視力を持たない私にとって聴力が唯一の武器だ。
もう一度耳を澄ます。やはり何かいる。
「もしかして死神?やっと迎えにきてくれたの?」
沈黙が続く。沈黙は肯定だ。
「死神さん、私を早く連れて行って。」
目が見えないだけではなく私には家族もいない。
生まれてすぐ目が見えないとわかって捨てられたようだ。
そんな私が生きている意味なんてこれっぽっちもない。
「ねえ、何とか言ってよ。」
しばらくの沈黙の後、大きな溜息と共に、
「恐くないのか?死ぬのが?」
「恐くないよ。」
「恐くないのか?俺が?」
「恐くないよ。見えないし。」
「見たいと思わないのか?」
「思わないよ。ずっとこれが普通だから。」
先ほどよりも大きな溜息が聞こえた。
「見えるようになるって言ったらどうする?」
「見えなくていいよ。それよりも死にたい。早く連れて行って。」
「本当にいいのか?後悔しないのか?」
「絶対にしない。」
またさらに大きな溜息が聞こえた。
「提案があるのだが・・・。俺の手伝いをしてくれないか?」
「手伝い?何をすればいいの?私にもできる?
私何も見えないし、働いたことないよ。」
「大丈夫。誰にでも出来る簡単な事務作業だ。目も見えるようにするし、
いや違うな。うーん、簡単だが君にしか出来ない仕事だ。」