転生したら三両の値札がついた 後編
その声には畏怖と敬意が込められていた。
「姐さんはやめてくれ。私はお前らより年下だ」
その声が耳朶を打った瞬間、全身に電撃が走った。
見たい、その江弥華という女の姿を。
オレは格子の壁側を凝視して、女が姿を現すのを待った。
「それはできやせん。俺達はあんたに返しきれねえ大恩がありやす」
「そうでさぁ。姐さんが駄目ならせめて、江弥華大姐様と呼ばせて下せえ」
「悪化してどうする。もういい、好きにしてくれ」
またヒールの音が鳴り、大きくなる。
「大悟郎、この度は済まなかった」
「いや、アレは気付けという方が無理だ」
「そう言ってくれると有難いが……。とりあえず例のナムチを見せてくれ」
コツンっ。
と、江弥華が青紫のストレートロングヘアを揺らして姿を現した。
ファー付きのロングコートに身を包み、足には深紅のハイヒール。両耳にたくさんのピアス、右の耳朶からは心臓を模ったイヤリング。そして狐の口を模した面と蜻蛉みたいな虹色のゴーグルで顔を隠している。
――わあ、攻めてんなー。
思ってたのと違ってガッカリしたのも束の間、大悟郎が「ここは狐口面と眼鏡外して大丈夫だぞ」と声を掛けた。
「ああ、そうか」
江弥華が面と眼鏡を取り去る。バサリと広がる髪。
オレの前世での最推しVTuber『ケティア・コート・ディフォーネ』を超美麗3D化したらこうなるという顔がそこにはあった。
オレはいつの間にか立ち上がって、江弥華に見惚れていた。オレだけじゃない。鎖に繋がれた5人ともがその美しい顔に溜息が漏れた。
「あれか?」
「応」
「……予想より混じってないな。だが相当傷が深い。右の肺が潰れたろう。良く死ななかったな」
「うむ。渾蔵が居てくれたお陰でその場で治療できたのがデカい。渾蔵が居なかったら確実に諦めていたな」
「……あれは私が貰おう。値段を言え」
「うーん、3両でどうだ」
「買った」
「いいのか? 裏があるぞ?」
「牛鬼の護符政策の依頼だろ? 構わん。それも引き受ける。物を見せろ」
「その前に式契約だ。喜助、連れてこい。充悟は店仕舞いを頼む」
喜助がオレの枷を外し牢の外、そしてあの扉まで連行する。
オレは応接間へ足を踏み入れた。その時、喜助がオレの肩を叩いた気がした。しかし振り返った気には、喜助は背中を向けて充悟の手伝いに向かっているとこだった。
「お、七大十! ずいぶん遅かったね!」
向き直ると、かん太が酒瓶を抱えて満面の笑みを向けている。
「さ、式契約だよ。こっち来て!」
――――――――――――――——【あとがき】―—――――――――――――――
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以下、『汝牟遅屋・醍大悟』のナムチ売買表です。
※ナムチの名前(年齢) 回収地 価格 購入者(陰陽師等級)又は購入国の順で表にしています。
※1両=13万円 1匁=2166円 1文=32.5円
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金倉七大十(21) 1-1 3両 墨廼江弥華(準壱)
伽陀優理香(25) 2-4 28両 稲光紫苑(壱)
和久今日子(55) 3-5 3両55匁 稲勢
寺門達興(17) 3-10 5両60匁 朝母柊慈(弐)
堀心真(9) 4-3 2両 雲塚
猫元樹杏(14) 5-8 1両25匁 帑琥玖蘭(準弐)
巻町彰善(32) 6-6 35匁 是道遥(肆)
喜古君江(47) 6-6 25匁 稲勢
雪踏純将(20) 6-7 48匁 号碑宇兵衛(参)
竹戸菊子(33) 6-9 29匁34文 麦一葉(伍)
館林真由美(41) 7-2 15匁 稲勢
前田晴翔(19) 7-8 20匁54文 亀干顕嵐(伍)
金井玄治(44) 8-7 5匁 雲塚
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