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7話 神楽様の御霊

謎多きブログ主、一体何者なのか...。

果たしてブログ主と会うことができるのか。

桃色と濃い青色に染まった朝のブルーアワーの下で、始発の名古屋行きの新幹線に揺られる。昨日の天気予報とは裏腹に、雲一つない快晴である。コンクリート道路の削れた穴に水が溜まっていたことから、昨晩のうちに雨が降ったのだろう。

 なぜ始発の新幹線に乗っているのだろうと疑問に思うだろう。それは、例のブログ主との約束があるからだ。昨日メールが届き、すぐさま『明日の午前十時でお願いします』と返事をし、承諾を得たものの、先程都合が悪くなったとの連絡が送られて来た。幸いにも時間のみの変更であった。

 集合場所の伊勢市駅に着くまであと二時間もある。心強いことに翔琉と凛が付いて来てくれるとのことだ。

「伊勢市駅に着いたら何をしたい?」

「やっぱり、観光でしょ!」

 凛のテンションが異常に上がり、子供みたいに足をバタつかせ、僕に近づき、まじまじと見る。きっと凛は観光目当てだったのだろう。それでも付いて来てくれることが僕にとってどれだけ心嬉しいことか……。

「私、三重県に初めて行くのだよね!」

「「同じだ……」」

 中学の修学旅行で京都や奈良へ行ったことはあるが三重には行ったことがなかった。一度は行ってみたい、そう思っていた場所だった。

「お初だな! いっぱい回ろうぜ!」

「それはいいが、本来の目的を忘れんなよ――」




「お父さん、野球しよう!」


「お母さんとしてくれ――」


「お父さんサッカーしよう!」


「お母さんが相手をしてくれる――」


「お父さん明日の授業参観見に来てくれるよね?」


「お母さんが来てくれるよ――」


「お父さん! お父さん! お父さーん――」


――お父さん何で何で……。




 目が覚めると時刻は十時を回っていた。前の座席の翔琉と凛も寝ていた。電車は何処かの駅に停車し発車するところだ。東京から三重まで思っていた以上に遠く感じ、今日帰るのが億劫になる。

 発車する電車の窓から三重県の自然や街並みを見る。すると『いせし』と書かれた駅名標が目に映る。見間違えたのかと思いもう一度見るが、やはり『いせし』であった。

 つまり僕たちは乗り越してしまったのだ。

「次は五十鈴ヶ丘、五十鈴ヶ丘です――」と車掌さんがいった。

「おい。起きろ、僕たち乗り越したみたいだ」

「は? まじかよ」

「まぁ、いいのじゃない? 時間あるし」

 意外にも凛が冷静な対応で驚いた。それより『五十鈴ヶ丘』とは何処なのだ。

 いろいろ考えている間に電車は五十鈴ヶ丘に停車した。

「すみません。伊勢市駅で降りようと思ったのですが、乗り越してしまいました」

「そうでしたか……。申し訳ないのですが、お一人様一五〇円こちらでお支払いしていただいても宜しいですか?」

「はい。もちろん。すみませんでした」

「はい。ちょうど頂きました」

「あのー。ここら辺で観光スポットってないの?」

「ここら辺ですか……。シンレイ――、あ、今のは忘れてください」

 何か言いかけたが、絶対今のは心霊スポットって言いかけただろう。申し訳ないが僕は行きたくはない。恐らく二人もそう思うだろう。

「心霊スポットか……。行ってみるか?」

「そうね! 面白そうだし。時間あるし!」

 僕が呪いやシャドーピープルで悩んでいるのにそれはないだろう。しかも、行ったら本当に厄がつきそうだし。

「おいおい。正気か?」

「お前は行かなくていいぞ。俺たちだけで行ってくるからさ」

「そうよ。唯舞暉はお土産でも見ていたらいいからさ」

「そう言う訳にもいかないだろ。一緒に来てるいんだからさ」

「あのー。水を差すようで申し訳ないのですが、心霊スポットではなく神・霊・スポットです。神様がいらっしゃるのですよ。神楽様の御霊ですよ」

「神楽……。本当に神楽なのですか?」

「私はそう聞きました」

 まさか、ここで神楽が出てくるとは思いもしなかった。そう言う事であれば、行くほかない。神霊と言っているくらいなので、悪いはずがない。

「すみません。そちらの場所を教えて頂きたいのですが」

「いやー。お勧めしませんよ」

「どうしても、行きたいのです!」

「そうなのです。こいつかぐr――」

 翔琉が俺の名前を言いかけたので、それを必死で止めた。

「はい?」

「気にしないで下さい。責任は全て僕たちが持ちます。それにもし何かあったとしても、あなたの名は決して挙げません。もちろんそちらの鉄道会社名も」

「わかりました。そう言う事ならばいいでしょう。こちらの地図に従って進んで下さい」




 五十鈴ヶ丘駅から十分くらい歩くと例の場所が姿を現す。まだそこに入っていないのに非常に空気が重く感じる。

 山々を抜けた先には湖があり、その真ん中には祠があった。数十年、いや、数百年、誰も管理していないせいか、とても汚れていた。

「おい、唯舞暉。この看板に何か書いてあるぞ」

 翔琉に言われた通りに看板の字を読んでみる。

『神楽以外はすぐに立ち去れ。さもないと……』

 汚れていて、その後の文字が見えない。

「ぐっぅ。――」

――バタッ


今回もまだブログ主と会うことはできなかったが、電車を乗り越したことにより、新しい情報を得ることができた神楽。

看板に書いてあった忠告文とは..?

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