4話 不可避の事情
前回のシャドーピープルの言っていたことは一体何だったのだろうか。その謎を解くことができるのか。
目が覚めると僕は病院にいた。ベッドの側には三上先生がいた。
「目を覚ましたか。大丈夫か?」
「僕どうなったのですか?」
「三十四℃の高熱で倒れたのだよ」
あ、そうか。今朝三十八℃くらいだったな。そのまま倒れてしまったのだろうな。熱ごときで倒れて、病院で寝込むとは…恥ずかしいな。
「しかし、なんで先生がここに」
「あー。今日十時になっても学校来ないから神楽の家に電話したのだよ。だけど誰もでなくて、様子見に行ったら、神楽が玄関で倒れていたのだよ。それで先生が救急車を呼び一緒にここまで来たってことさ」
思い出した。あの時シャドーピープルに追われていたのだった。必死で逃げてそのまま恐怖で気絶したのだ。あの後、シャドーピープルは何処へ行ったのだろうか。なぜ僕を殺さなかったのか…まあ、ラッキだったのだな。
「まぁ。元気になるまで勉強はほどほどにしとけよ!学校で待っているよ。お大事に」と言い残し帰っていった。
「はい。ありがとうございました」と先生が去った後にぼそっと言った。
先生には感謝しかないな。元気になったら学校に少し顔を出しに行こうと思った。そういえば、シャドーピープルが「恨むなら神楽の一族を恨め」って言っていたが、あれは一体どう意味なのだ。僕の姓には何か悪い意味合いがあるのか。
○
退院後、僕は早く自分の姓のことについて知りたかったので、まず市役所に行へ行き、戸籍を確認しに行った。
「すみません。戸籍謄本が欲しいのですが」
「戸籍謄本ですね。こちらの書類にご記入ください」
「はい」
「戸籍謄本一通より四五〇円頂戴いたします」
戸籍謄本が手に入ったので、急いで家系図を完成させた。江戸時代の先祖から令和の僕までずらりと書き並べて、誕生日と忌日まで細かく書いた。
奇妙なことに、神楽の姓を持つ男性は全員同じ日に亡くなっていた。どれも一月一九日。そしてそれは三十年に一度。この一月一九日とはなんかの日なのか、そしてなぜ三十年に一度なのか。
僕は、全ての疑問を解くためにまず、インターネットや書籍、新聞が充実している図書館へ行った。
「あの、すみません。過去の新聞を見たいのですが……」
「はい。何年の何日のものでしょうか?」
「あー、えっと今から三十の整数倍した数を引いた年数をある分だけください。全部一月一九日ので」
「は、はい。少々お時間頂けますか?」
「はい。ありがとうございます」
ここは東京で一番大きくて有名な図書館だ。少なくとも大正時代までのものもあるだろう。明治時代のものもあればもっと良い。
「すみません。お待たせいたしました。全部で22部ございます。閉館の30分前にはご返却お願いいたします」
「はい。ありがとうございます」
とても幸運なことに明治時代のものもあった。新聞を年代順に配列する。最近ので一九九二年、最も古いので一八七二年だ。一九九二年一月一九日。三十年前の新聞か、まだ僕は生まれていない。確かおじいちゃんが亡くなったのはこの年。その日に起きた事故や事件欄を見た。だが、何も書かれていなかった。六十年前の一九六二年の新聞を見たが何一つ手がかりがない。
数時間かけて、全ての新聞に目を通したが、これという情報は一つもなかった。僕は渋々新聞を返した。
『三十年に一度』については一旦保留して、一月一九日の謎を調べることにする。
パソコンで一月一九日と検索してみた。出てきたのは芸能人の誕生日やら占いやら関係がありそうな記事はなかった。ここまで手がかりがないと、今までのことは全部偶然で、僕が見たシャドーピープルは幻だった。そういうことになる。
それでは、歯痒い気がするので、粘り強くインターネットを探ることにした。
しばらく下にスライドしていくと、『呪いの神楽』とかかれたブログが掲載されていた。
そこには、『神の遣い』と書かれていた――
神の遣いとは、良い意味なのか悪い意味なのか...。
第5話からは2000文字くらいに増やしたいと思います