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36話 真実

 それまでぷかぷかと浮いていた初代神楽は地に足をつけ、僕の目の前に立っている。未だに何が起きたのか理解できない。


 雲の流れが随分と早くなり、ゴロゴロと雷が鳴り始める。冷たい風が僕の頬を撫で、身震いする。


 芽衣の顔色は真っ青である。きっと僕と同じ気持ちだろう。「ああ、やってしまった」と。僕は間違った選択をしたんだ。シャドーピープルがあれほど取り乱していたのは僕が誤った道に進みそうになっていたからだ。なんてことをしてしまったのだ。


「使者神楽。お前は助けてくれたのだから活かしてやる。だが、他の奴らは全員俺が消し去る」


「や、やめてよ。冗談だろ? そんな恐ろしいことをしないでくれよ」


「恐ろしいこと? それはお前さんもしただろ。お前の周りで人が死んでいくのは全部お前が殺しているからだよ」


 殺した……俺がみんなを……


 嘘だ。それはない。そんな恐ろしいことが僕にできるはずない。


「はは、は、殺した覚えもないし、そもそも殺したいと思ったことがない。嘘をでっちあげるなよ」


「嘘なんかじゃない。まあ、殺している時の記憶はなくなるなんてあんたの父さんが言っていたな。だから、信じられないかもしれないが今の話は全部真実だ」


 もうなにがなんだか分からない。初代神楽の話が本当ならもう僕は死ぬほかない。


 芽衣にもきっと嫌われて、疎遠になるだろう。


「お兄ちゃん。今の話聞いて思い出したことがあるの。それはね、男子高校生がバラバラ死体で見つかって、ニュースで流れた日の夕方ぐらいにある男性とぶつかったの。その時なぜか見たことがあるような気がして、でも思い出せなかった。今、やっと分かった。その男性はお兄ちゃんだった」


 ああ。その記憶もない。これは黒だな。


「なぜ使者神楽って言っているのか分かるか? それはな、俺が子孫たちの体を使って殺しをしているからだ。だが、もう復活したから子孫の体を使わなくて済む」


 本当にどうしようもない呪いだったんだ。


 僕は呆然とし、膝から崩れ落ち、絶望感に打ちひしがれる。



 姿を取ってまでこの墓に入ったのだが、終わってしまったんだなと感じる。


 墓に入り、なんとか食い止めようとしたが遅かった。初代神楽が復活してしまった。もうシャドーピープルである私でさえ止めることが出来ない。唯舞暉くんは呆然とし、芽衣ちゃんは蒼ざめた顔をしている。私なんかが思う資格はないが、彼らを守ってあげたかった。その代わりとして、最後に私のできる全てのことをして、死にたい。


「やあやあ。初代神楽さん。調子はどうだい」


「お前はシャドーピープルか。人間の姿に戻ったのか」


「ええ。そろそろ決着をつけないといけないし、それにあの姿じゃこの墓に入れさしてもらえないでしょ」


 唯舞暉くんと芽衣ちゃんは愕然としている。それはそうだろう。芽衣ちゃんの担任である私、佐藤がシャドーピープルなのだから。




 突然佐藤先生が現れた時は驚いた。なぜここにいるのか全く理解できなかった。しかし、佐藤先生がシャドーピープルと知って、裏切られたようなモヤモヤとした気持ちが込み上げてきた。


 初代神楽で手一杯なのにシャドーピープルまで来られるともう手に負えない。二人で手を組んで一緒に滅ぼそうなんてことを言い出しかねない。気がかりはたくさんあるが、今はとりあえず初代神楽を封印する方法を考えなければいけない。


 僕がこの墓に入り棺を開けたことで奴が放たれた。奴を棺に入れて今後一切開けられないようにすればどうだろうか。一時的な解決にはなるだろうが根本的な解決にはならなさそうだ。奴を殺してしまうと言うのはどうだろうか。子孫の体を借りずに人を殺せると言っていた。つまり、これまで魂だけだったが肉体と合体し、生きている人間のように自由に動けるようになった。生きている人間であれば同じように死ぬこともできるはずだ。僕が殺すことで永遠に封印することが出来るのではないかと思う。しかし、これにもまた問題がある。僕が自分の意志で殺すと、それこそ言い逃れできない。今までの殺人が僕の手で行われてきたものの、僕自身の意志ではないため、身近にいる人は同情し、助けてくれるだろう。だが、もし本当にここで殺してしまうと、救いようがないやつになってしまう。そうはなりたくない。


 罪から逃れることはできないが、大切な人からの信頼を守ることはできる。


「シャドーピープルさん決着をつけるとはどういうことかな? あんたは俺を殺すこともできないだろうに」


「私一人ではね。でもここにはあと二人もいる」


「そんなのいないようなもんだろ。そもそも俺はここで戦うつもりはない。やっと復活できたんだ。この手でたくさんの人を殺したい」


 なんて奴だ。先祖にこんな野蛮な奴がいたとは一家の大恥だな。


 そもそも奴はどこで肉体を手に入れたのだろうか。棺を見た時には骨以外に何もなかった。


「初代神楽、どこでその肉体を手に入れた」


「ああ、今まで色々な人を殺してきたが、その時に良さそうな体のパーツを取って、保管しておいたんだ。大切なパーツだからな、一瞬たりとも手放せないぜ」


 一瞬たりともと言うことは一度どれかのパーツを壊すことが出来たら、また魂だけの状態に戻ると言うことか。


「なあ、あの時なぜ棺を開けろと指示したんだ。開けなくてもいつでも復活できたんじゃないか」


「それはあの棺で死んだからだ。ってあんまり聞くな」


 棺で死んだ? 棺は本来死んでから入れられるが、初代神楽の場合、生きた状態で入れられ、死んだということか。そこが彼にとっての生と死の入れ替わり地点なのかもしれない。つまり、パーツを奪い、魂にして、棺を開けるとあの世に戻る。あくまでも仮説だが、やってみる価値は十分にある。


 初代神楽が墓の出口に向かっている。


 奴を止めて、なんとか今試さないといけない。


「初代神楽。僕も殺しを手伝うよ」


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