表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/37

35話 葛藤

「あんたたちがその墓に入るともう取り返しがつかなくなるよ。頼むから、今この時だけでも私のいうことを聞いてくれ」


 これほど必死にシャドーピープルが訴えかけている姿を今まで見たことがなかった。一瞬、言うことを聞こうと考えたが、取り返しがつかないと言っても、それはシャドーピープルの都合が悪くなるだけのことだろうからどうでも良い。


「あんたの都合が悪くなるなんて最高だね」


 一歩前に踏み出し、歩き始める。芽衣は少し不安そうな顔をしているが、僕が必ず守る。


『神楽以外はすぐに立ち去れ。さもないと……』


 前回見た看板がまだ同じところにある。神楽以外の人間が入ると何か不幸が起きる。翔琉や凛はその呪いで死んだ。僕たちがこの墓に入ると、シャドーピープルは入ってこられない。ようやくこの戦いが終わる。


「いくなあああーーー」


 背後から瞬きをする間もないほどあり得ない速さでシャドーピープルが飛んでくる。地面に強くたたきつけられ、馬乗りされ、身動きが取れない。


「どいてくれ。もう終わりにしたいんだ。あんたも、神楽家なんか追わずに普通に生きろ」


 奴は顔をピクピクト小刻みに震わせる。次第に顔が赤くなり、眉間にしわを寄せる。


「ははははっ。ほんとに面白いな。あんた人間なんだろ。そろそろ本当の面を見せてくれよ。対等に戦おうじゃないか」


 奴は黙り込み、口を開けようとしない。その隙を突き、逃げだし、墓に向かって走る。



 

 墓の入り口では雲一つない快晴だったが、墓の敷地内に入ると、空が鼠色の気味の悪い雲で覆われている。


 眼前には苔が掛った石造りの棺がある。それには亡くなった年が刻み込まれている。


「これが君の墓か」とふわふわ浮いている神楽に聞く。


「ああ。この中に僕の遺体がある」


「了解。そういえば、君は普通の霊なんだろ? だったたなぜ、最初に会話した時に神なんて言ったんだ」


「あ……それは君を脅かすためさ。特に深い意味はない」


 初代神楽は棺に目を向け、開けろと指示する。ここに来る前、これを開けると全てが終わると言われた。結局どういったことが起きるのかはその時教えてくれなかった。ここに来て、本当に開けてしまってもいいのか不安に思う。芽衣が横から不安そうに見つめている。


「なあ、これを開けるとどうなるか教えてほしい。ちゃんと知った上で、正しいことをしたい」


 初代神楽は僕をまじまじと見つめ、突然笑い出す。


「今更何言っているんだ。正しいこと? バカバカしい。とにかく、そこを開ければ、シャドーピープルには殺されない。それだけは約束する」


 悪戯。


この言葉が頭をよぎる。父の手紙に書かれていたヒント。初代神楽は正しいことをしたいと言った僕に対して笑った。そして、今更と言っていた。僕は何も悪いことをしてないのと、常に正しいことをしてきたと信じている。


開けると何が起きるのか分からないが、初代神楽はシャドーピープルから逃げ切ることができると言い、それを約束してくれた。僕はそれを信じたい。


「お兄ちゃんが信じたことを私も信じるよ」と芽衣は優しく微笑みかけた。




 やばいやばいやばい。あの棺を開けると、恐ろしいことが起きる。唯舞暉くんは何もわかっていない。早く止めなければいけないが、あの恐ろしい墓に立ち入るのは気が滅入る。命がけで止めに入るべきなのだが、足が思う様に動かない。                                            

 私がシャドーピープルになったのは代々受け継がれてきたというのもあるが、神楽家を小さいころから見てきたので、どうしても救ってあげたかった。何度も脅かし、恐怖を与えてしまったが、殺さなければと思う気持ちと、殺したくないと思う気持ちが混ざり、中途半端なことをしてきてしまった。唯舞暉くんはまだ殺せないので、少し安心はしているが、芽衣ちゃんはいつでも殺せる。それがどれだけ苦しくて、辛いことか誰も理解してくれないだろう。


 以前、唯舞暉くんに飛べる理由を聞かれたが、それは私が生と死の間にいる人間だからである。つまり、生きているともいえるし、生きていないともいえる中途半端な存在だ。


シャドーピープルの存在意義は神楽家の抹殺。つまり、神楽家がいなくなれば誰もこの役割を担わなくてもいいし、私も解放される。一度なってしまえばもう普通の人間に戻れない。死の世界への道しか残されてない。どうせ死ぬならばこの墓に入ってもいいかもしれない。最後の任務だと思えば気持ちが軽くなる。


 さあ行こうか。


 呪われたフェイトから救いに……




 手がガタガタと震え、力が入らない。僕の頭上で浮遊している初代神楽に早く開けろと急かされるが、そもそも、これは一人で開けられるのか疑問に思う。今細かいことを考える時間はないので、もう一度体勢を整え、力を入れ石の棺の蓋を奥に押し出す。すると、数センチ動き、中が少し窺える。初代神楽は目を輝かせ、ニヤリと笑う。


「あはははははは、うひひひ。これで、これで、この世に再び戻ることが出来る。感謝するぜ、使者神楽。ずっと待ってたんだこの時を」


 なにが、起きたんだ……まさか、こうなるとは……

 



忙しくてなかなか執筆できませんね。早く書き上げられるように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ