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21話 同士

 二人の間に沈黙が流れる―


 とても気まずい。突然の告白…もしかして、これが父の日記で見た、強制結婚させるための第一段階なのか?一体どのように反応するのが正解なのか…ひとまず、当たり障りのないことを言っておくか。


「そうだったのか。そう思ってくれていたなんて…嬉しいよ」

と彼女の様子を伺いながら、慎重に言葉を選び発した。彼女は俯き、肩を震えさせた。


 その姿を見て、間違ったことを言ってしまい、彼女を傷つけてしまったのではないかと心配し「ご、ごめん。何か変なこと言ったかな?」と言った。


「ふふっ、やっぱり神楽面白いね」


「え? 何」


「告白なんて嘘に決まっているでしょ」


 これが例の嘘告ってやつか…こんなことをして、何が面白いのだろう。まあ、頭の良くない奴の遊びなんて理解できなくて当然か。僕は一度落ち着かせた憎悪を吐き出す。


「やっぱり。僕はあんたが苦手だ。いや、大嫌いだ。もう顔も見たくない」


 嘘を平気でつくような悪魔に、少しでも優しく接したことを後悔し、その場から立ち去ろうとする。


「ちょっと、ちょっと、待ってよ。何本気になっているのよ」

「助けてくれたことには感謝しているが……やっぱり何でもない。じゃあ」


 僕は彼女に背を向け歩き始めた。一刻を争う事態に、この悪魔に足止めを食らってしまったのが腹立たしい限りだ。


「だから、待てって言っているでしょうが!」とえげつない声の大きさで僕に向かって叫んだ。


 驚いた拍子に、肩がビクッと上がり、ゆっくりと後ろを振り返る。


「な、なに…」


「私は神楽に大事な用事があったから来たの、それを無視して逃げないでよ」


「だって、それは嘘告だろ?」


「はぁ…それで傷ついたのなら謝る。ごめんなさい。でも、それは神楽が暗くて元気がなかったから、少しでも気が楽になればなって思ってついた冗談なのよ」


 それこそどのように反応すれば良いか分からない。冗談でも嘘告は辛い。一瞬彼女のことを本気で…いやいや、またこれも何かの罠かもしれない。気を付けなければ。


「冗談でも嘘告はないよ」


「もしかして…神楽、彼女出来たことないの?」


 痛いところを突かれてしまった。この一八年間、一度も恋人が出来たことがなかった。告白をもちろんしたことも、もらったこともなかった。そう考えれば、僕の高校生活が虚しく感じられた。自分自身では満足したものだと思っていたが、細かく見ればそれは空虚なものだった。


「う、うるさいな…」


「図星でしょ?」


「恋愛経験なかったら悪いのかよ」


「そんなことないよ…斯く言う私も、恋愛経験ゼロよ」


 市榮がそうだとは到底考えられなかった。悔しいが彼女は可愛い。愛嬌のある可愛さだ。まあ、彼女の場合、性格が捻じ曲がっているのが原因だろう。かなりおかしいと思う。周りでこんな変なタイプの人間見たことがない。


「神楽もないなら私達本当に付き合っちゃう?」


 ほら。また変な事を言った。


「あのな、好きでもない人間と付き合えるわけがないだろ」


「でも、そんな恋だってあるのよ」


「少なくとも僕はそんな恋に興味ないさ。で、そろそろ言ってよ。何しに来たのか…」


「ごめんね。かなり話が脱線してしまったわね。本当はね…妹さんのことで来たの…」


 妹だと…なぜ市榮が妹のことを知っているのだ。父の日記には、妹は僕が小学三年生の時に児童養護施設に入れたと記録されていた、市榮と出会ったのも小学三年生でちょうど入れ違いになる時期だ。僕が色々と喋った可能性もあるが…


「なぜ妹のこと知っているのだ?」


「ああー。それは…昔彼女が三重に来たのよ…それで知っているの」


「そうだとしてもなぜ僕の妹だと分かるのさ」


「ああー、もう、そんな細かいことはどうでもいいの」


 細かいことだからこそ気になるのだ。僕が兄であることをどのようにして知ったのか。僕の家をどのようにして突き止めたのか。


当然、妹は僕のことを覚えていないだろうから、妹から聞いたということはなさそうだし…もしかして、闇サイトなどの危険なサイトで僕の個人情報が漏洩しているのではないだろうな…え、それって怖すぎだろ!!!!


「不正に僕の家を特定したのではないよな…?」


「不正? そんなわけないよ。それより妹さんがヤバいの」


「ヤバい? それってまさかシャドーピープル?」


「シャドー何? よくわからないけど、メールの返信が来なくなったの」


「そ、そんなこと? 妹が忘れているのではないのか?」


「それは絶対にない。断言する」


 誰がどう考えたってそんなことを僕に相談するべきではないだろ。それに、僕は妹が何処で何をしているのかを全く知らない。そんな僕に助けを求められては困る。いや、しかし、市榮の話に乗るのは割りと良い案かもしれない。市榮はきっと妹の居場所を知っている。僕はそれについて行き、妹に会う。完璧ではないか。


「そうだな! 心配だ。そしたら、早く妹のところへ行こう」


「そ、それは…いや…ハハハ…何処にいるのか知らないのよね…」


「し、知らないだと…」


「だから、神楽のところに来たのよ」


 やはり、そう上手くはいかないか……残念ながら、振り出しに戻ってしまった…


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