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18話 不滅の追跡者

 天気は快晴、気分は土砂降り、僕は電車に揺られ父の日記を読む。きっと僕は妹のことを忘れたと言い聞かせながら生きてきたのだと思う。自分で自分を洗脳していたのだ。しかし、それが解かれた刹那、妹の記憶が蘇った。


 そして、今すぐ妹に会いに行きたいと思うが、いくつか問題がある。まずは、妹の居場所だ。何処で何をしているのかが全く分からないこと。次に、頻繁に現れるシャドーピープルのことだ。奴を引き連れ、妹までをも巻き込んでしまう可能性があること。最後に、『ある行為』のことだ。断定は出来ないが、きっとこれだろうと言うものが一つあること。


 それが本当でないことを願うばかりではあるが…… 僕はこれらを考慮して、妹と接触すべきか判断をする。最終的には、父や先代の神楽の人たちの仇を取り、これから何代も続くだろう神楽家に平和をもたらすことが僕の使命ではないのだろうか。それなのに僕は臆病者で保守的で優柔不断だ。


『本当に解決出来るのか』や『これ以上関わりたくない』などのネガティブな言葉ばかり思い浮かぶ――


 電車の行先は分厚い雨雲で覆われ、激しい雨風が予想される。


 僕は傘を持っていない――




 電車から降りて、新居に向かう。運が良いことに雨は降っていなくて、快晴だった。僕が新しく住む場所は三重県だ。というのも三重には神楽の御霊があり、なにか手がかりをつかめると思ったからだ。これからの計画を抜かりなく立てて、完璧に事を進める。そう意気込んだ。しかし、随分と気合を入れすぎたせいか少し疲れてきたので休憩を取ろうと、冷凍庫にあるアイスクリームを取りに行く。


そして冷凍庫を開け、“それ”を見た時、思わず二度見をしてしまった。“それ”とは、引っ越し前に捨てたはずの晶の腕だ。あの時より腐敗はさらに進んでおり、死臭も強烈だ。皮膚は殆ど溶けて、腐敗汁が溢れている。引っ越し前には見られなかった、骨が見えた。


 その生々しさに吐き気がして、トイレへ駆け込んだ。


――オェーーー


本当に最悪だ。なぜここに来てまであんな気味悪いものを見なければいけないのだ。


――オマエヲシンヨウスルベキデハナカッタ。オマエノセイダ。オマエノセイダ。


 もしかして……僕の真後ろに翔琉が立っていた。


 彼は晶の時のように傷はなく、白い服も着ていなかった。しかし、彼の服は見覚えのあるものだった。なぜならそれは三重に行った時の服装だからだ。


 やはりあれは夢ではなかった。現実だったのだ。


「翔琉、巻き込んで本当にすまない……許してくれませんか?」


 僕は冷静に答えた。


――シラナイ。シラナイ。オマエノセイダ。スベテ!


 虚ろな目、青白い肌に血管が浮き出て、無の表情。だが急にピエロのように不気味に笑い、首振り人形のようにガタガタと首を動かした。その不気味さにまた吐き気がした。次第に僕の呼吸は荒くなり、冷や汗が止まらない。今すぐにでも逃げたいが体が動かない。


 僕は冷静になれなかった。


「ごめん……せめて命だけは、命だけは……生きたいです」


――イキタカッタ


「え? 今なんて」


――オレモイキタカッタ


 生きたかった?


 僕は冷静になれなかった。


 翔琉に向かってラバーカップを投げた。案の定、翔琉を貫通しドアに当たりそして僕に返ってきた。 段々と視界が赤くなり意識が朦朧としてきて、その場で倒れてしまった。




 トイレの窓から夕日が見えた。今の時間はおそらく五時前後だろう。ラバーカップで頭を少し切ったみたいで大した怪我ではなかった。僕はただ流れてきた血に驚き倒れただけだった。翔琉の姿は無かった。ひとまず安心した。長時間トイレに篭っていたことを考えると笑いが止まらない。


 ドアノブに手をかけ出ようとするが、ドアノブが回らない。もちろん鍵はかかっていない。ドアを壊す勢いで引いたり押したりするが開く気配がない。


 運がない事に携帯を持っていないため誰かに助けを求めることもできない。


「くっそ!」とドアをひと蹴りする。


 すると、後ろに気配を感じ、振り返る。そこにはシャドーピープルがいて「また会ったな……」と言った。


「お、お前が何故ここに……」


「そんな事どうでもいい。私は命を貰いに来た」


「や、やめろ。まだ、まだ僕にはしないといけないことがあるんだよ! 邪魔しないでよ」


「お前が何故ここまで生きられたと思う?」


「さあ……強かったから?」


「バカめ。私が逃してきたからだろ。だがもうこれでおしまいさ」


「じゃあせめてなぜこんな呪いがあるのか教えろよ」


「それは出来ない。私もわからん」


「そしたら、せめて妹に会わせてくれ……」


「無理だ」


「くっそー。僕は生きるのだ。絶対に!」と言いながら何度も体当たりをする事で、ドアをぶち破ることができたが、勢い余って転んでしまう。


 僕の後ろにはまだシャドーピープルがいる。


「諦めろ。お前はそう言う運命だ」と言った。


 僕はこんなところで死にたくない。まだ生きたい。しかし、この状況をどう切り抜ければ良いのか分からない。奴に物理的な攻撃は効かない。そんな相手に勝ち目があるのか――


 僕は冷静になれなかった。


頭の切り傷が痛む。


 ――諦めようかな……

  

 


やっぱりホラーを書くのは難しいですね.....

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