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15話 好奇心

重たい足取りで歩く。私は手を擦り、そこに息を吹きかける。そろそろ春に入る時期だが、今日は特別寒い。寒がりなくせに、スカートを折り、マフラーやジャケット手袋などの防寒対策をしていない。いかにも今どきのJKだ。天気はそこそこ良いのが唯一の救いだ。


「本当に病院に行くの?」


「当たり前」


――お兄ちゃん幸せに暮らしているのかな


 最近なぜか兄のことばかり気にしてしまう。一度も会ったことがなく、顔も名前も知らない。しかし、どこかで会ったことがあるかのように感じる。


「何ボーッとしているの。また落ちるわよ」


「いや……。なんかお兄ちゃんに会ってみたいなって」


「お兄ちゃんいたのだ……」


「佐藤先生からそう聞いた」


「佐藤先生と仲良いよね」


「私は鬱陶しいって感じるけどね」


 一度佐藤先生と真面目に話をしてみようかな。そうしたら色々わかるかもしれないし……でも知ったところで何になるのだ。必ずしもそれがプラスのことになるとは言えないし、傷つくことだってきっとある。そうなるくらいなら知らない方が良かったりもする。しかし私の心が知りたいと言っている。あとは行動に移すだけだ。


「美優ごめん。やっぱり病院に行くのを辞める」


「理由は?」


「佐藤先生と話したいことがあるの」


「緊急なの?」


「うん。緊急…」


「そしたら、病院は明日にしましょう」


「そうだね。ごめん」


 私は携帯を取り出し先生の番号を探す。しかし、番号はなかった。


――そういえば、先生の番号聞いていなかったな……。学校に戻るか。




 日は落ち、辺りは真っ暗である。街灯の明かりを頼りに早足で進む。学校に着いたのは午後六時だった。先生がまだ学校に残っていることを願い、正門をくぐる。


「あら。芽依ちゃん、こんな時間にどうしたの?」


「あ、先生丁度良かった。先生とお話ししたいのですが……」


「芽依ちゃんが!?」


「そんなリアクションしないでください」


「ごめん、ごめん。でも私もう帰る予定なの」


「先生の家行っても良いですか?」


「え。それマジで言っている?」


「さっきから何ですかその反応」


「いや、だってあんなにツンツンしていたのに……」


「それは……。そんな事どうでもいいです。早く行きましょう」


 先生と横並びでてくてく歩く。正直何しているのだろうって思うけど、なぜか今先生と話をしなければいけない、このチャンスを逃せないと思っている。やはり今日の気温は低い。ぶるぶる体を震わせる。こんな薄着で来るのではなかったと後悔するが、きっと明日の朝になると忘れる。それがJKだ。私が寒がっているのを察したのか、コートをかけてくれた。とてもあったかくてそれだけで泣きそうになった。


「先生寒くないのですか」


「先生は大丈夫よ」


「でも……」


 明らかに震えていて、寒そうだ。なんで私なんかに貸してくれるのだろう。


「いいの、いいの。だから芽依ちゃん風邪とかひかないでね。学校休んだら先生悲しいから」


 やっぱり先生は変だ。


「先生きもいですよ笑」


「えー。そんなつれないこと言わないでよぉ」




 先生の部屋は綺麗だが、何処か古臭い感じがする。しかも、入ってくる時何か視線のようなものを感じた。


「さあ、入って」


「お邪魔します」


 時計の針は全て下に向いていた。部屋はとても寒く、うずくまっていたら先生が毛布をかけてくれた。


「あともうちょっとだけ寒いの我慢してね。我慢できなかったら、先生が温めてあげようか?」


「だから、先生きもいです」


「冗談よ。そしたら芽依ちゃん、そろそろ本題に入ろうか」

「そうですね。単刀直入に言います。私の兄は今どこで暮らしていますか?」


「やっぱりそのことだったのだね。悪いけど、どこで暮らしているのかは言えないわ。でも、名前なら知っているわよ」


「そうですか……。そしたら名前だけでも教えてください」


「神楽唯舞暉」


「いぶき? 変わった名前ですね」


「ねえ、芽依ちゃん。先生眠くなってきたから寝るね」


「え、ちょっと。まだ質問が……」


 先生は寝てしまった。夜ご飯も食べてない、お風呂も歯磨きもしていない状態で寝られたので面倒臭いなと思いつつ、お邪魔させてもらっているお礼としてキッチンを借りてご飯を作った。


 時計の針は八時を指していた。


「先生。ご飯作りましたよ」


「本当に!? ありがとう頂くわ」


 先生は普段料理をしていないせいか、冷蔵庫はほとんど何もなかった。よって、簡単なものしか作れなかったが、我ながら上手くできたと思っている。


「美味しいよ。普段料理するの?」


「ええ。まあ少し」


「確か寮だったよね?」


「寮は朝ご飯しかでないのですよ。だから、昼と夜は私が作っています」


「そういうことね。私も料理出来たらな……」


「教えましょうか?」


――私は何言っているのだ。


「いいのー? じゃあ毎晩私の家に泊まっていってもらおうかな?」


「そうしたら、唯舞暉の話をしてくれますか?」


「え……。ああー。そうね。そのうち……」


「わかりました。少しずつで良いので教えてください」


「今日はもう疲れているので明後日また伺います」


「泊まっていかないの? 明日は?」


「明日朝から美優と行かなければいけないところがあるので、帰ります」


「でも流石にこの時間に生徒一人で帰らせることはできないわよ」


 先生の家に泊まるのがベストだとは思うが何故か気に食わない。そんなプライド捨ててしまえば良いものを私は捨てられずに持っている。


「わかりました。そしたら廊下で寝ますね」


「風邪ひくわよ。私と同じお布団で寝ましょう」

「いや、それは……」


「いいじゃん。お泊まり会みたいで」


「そうですね、わかりましたそうします」




 布団に入りながら兄のことばかり考えていた。どうしたら会えるか、会ったら喜んでくれるかなど。でも、それを思いすぎたのか何かわからないが体が動かない。意識はある。目は動かせる。嫌な予感がする。


「久しぶりだな。あなた芽依って言うのか」


「あなたはシャドーピープル……」


 やっぱり金縛りだ。どうしてこんな時に。全くついていないな。


「私はお前を殺したくはない……」



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