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野獣の花嫁  作者: 銀ねも
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56.スズリヨ 骸竜の住処

 天井は高く、中央が窪んで天窓になっている。そこからさしこむ月明りは、屋内を明るく照らしながら、その闇を一層深くするように思われた。


 釣床は天窓の真下に設えられている。彼が上体を起こして手を伸ばしたら、指先が天窓に触れるだろう。


 スズリヨは唇を横に引き結び、眉間に力を入れ、目を見開き、彼を凝視する。


 網越しに見える、窓越しの光が濃い陰影を彫り刻む横顔は、石膏像のようだ。事実、その肌は石膏のように滑らかだった。


 その感触を思い出し、スズリヨは羞恥と後悔の念に打たれる。


 ーーわたしは、あの肌を知っている。


 彼と肌を合わせた。不本意ながら、それは歴とした事実である。


 微かに発光するかのような白肌と蒼みを帯びてぬらぬらと光る黒鱗が妙に艶めかしい対比を為す肌だ。


 その肌は、爪を立てても食い込まない、古いなめし革のように硬い。どんなに昂っても汗ばむことはなく、乾いている。だから、なのだろうか。同衾していても、体臭と呼べる類のにおいを嗅ぎ取ることは無かった。


 それでも、彼はその肌の内に、嗅覚では感じ取れない腥さをはらんでいる。彼のことを、高潔な戦士でしかないと思い込んでいた頃のスズリヨであれば、嗅ぎ付けられなかっただろう。


 思わず、目を逸らしてしまいそうになる。


 ーールルヴルグどの


 何より嫌悪が先に立ち、ぞわっと鳥肌が立った。頭髪さえ逆立つようだった。


 ルルヴルグに強いられた屈辱を思えば、ルルヴルグに関する物事について、なにも見たくはないし、なにも聞きたくはない。それでも、闇の中で目を凝らし、沈黙の中で耳を澄ませる。


 ルルヴルグの前では、一瞬の油断が命取りになる。それは戦場に限らないのだと、思い知らされたばかりだった。


 スズリヨの視線の先で、決して好機を見逃さない炯眼は、今、蒼白の瞼に隠れている。


 大きな体を縮めて丸くなっている。冬眠中の小動物のように、ぐっすりと眠っている様子である。


 ーー本当に、眠っているのか? さっきのは、寝言? 


 スズリヨは息を凝らし、ルルヴルグの動向を探る。ルルヴルグはすやすやと寝息を立てている。長く豊かな睫毛の先までぴくりともしない。


 ーー眠っている、ようだ


 スズリヨはまじまじとルルヴルグの寝顔を見つめた。


 炯々たる眼光が影を潜めると、天成の麗質が際立ち、精悍な印象が薄れる。安らかな寝顔は、あどけなさの名残りを見出してしまいそうになる。


 それが、倍も憎らしいものであるように思われて、スズリヨはそれをきっと睨みつけた。当然ながら、睨みつけたところで、どうにもならないけれど。


 大きく息を吐き、目を伏せる。心臓を鷲掴みにする強い緊張が解けると同時に、双肩に脱力感がのしかかった。


 今のスズリヨにとって、ルルヴルグの姿を視界に入れておくことは、大変な苦行だった。必要以上にルルヴルグを見つめていると、忘れてしまいたい記憶を、思い出してしまう。


 ーー寝ながら笑うなんて、赤ん坊みたいだな


 スズリヨは心の中で悪態をつく。悔し紛れの悪態である。そうしなければ、耳許で囁かれた睦言と含み笑いを反芻してしまう。そうなれば、もう、平静ではいられなくなりそうで。


 ーー一ルルヴルグどのは、わたしを……抱きながら……ずっとこうしていたい、などと……痴れ言を抜かしていた。だから、一時はどうなることかと思ったが……わたしから離れて、呑気に眠りこけていてくれるなら、好都合だ。この機を逃す手はない


 スズリヨは気を取り直すと、自身の向こう脛に目を向ける。ルルヴルグの斬撃によって負傷したその部位には、萌黄色の薄織物のような物が、幾重にも重ねて巻かれている。


 ーーこれは、骸竜の包帯か? 傷にぴたりと張り付いている。気味が悪いが……無理に剥がさない方が良さそうだ。瘡蓋みたいになっているし


 スズリヨは肘を腿にのせて前屈みになった。半透明の薄織物越しに患部を覗き込む。凄まじい斬撃は、骨を断ち切るには至らなかったもの、肉をざっくりと切った。


 熟れた柘榴のように裂けていた傷口は、青い糸で縫合されている。傷口は桃色の新しい皮膚に覆われ、その周りは赤く腫れている。


 物は試しと、足首を回してみたり、膝を揺らしてみたりする。感覚はないものの、問題なく動いた。


 ーー想像していたより、ずっと良い状態だ……ルルヴルグどのの手当ては適切だったらしい


 とひとりごち、スズリヨは胸を撫でおろす。耳を澄ませば、足首に宿る精霊夢の密やかな鳴声が聞こえてくる。


 ーーいや、それだけじゃない。精霊夢のおかげだな


 スズリヨの精霊夢は、宿主であるスズリヨの傷を癒すべく奮闘していた。

 踝の内側を巡る血管に突き立てた口吻で、せっせと血を体内に吸い込んでは、足首にぐるりと巻きつけた尾の先端にある挟角を突き立てた足の甲の血管に、生成したマナを注ぎ込んでいる。


 寄主たる精霊夢は、宿主たるスズリヨと一蓮托生である。精霊夢は生きる為に、スズリヨを生かさなければならない。


 スズリヨが昏睡している間、スズリヨを死なせまいと、一生懸命だったのだろう。


 スズリヨは膝を二つに折って膝を抱えると、精霊夢の尾を撫でて、謝意を表する。


 ーー精霊夢が癒してくれていたとは言え、あの深傷だ。一朝一夕にはここまで治癒しないだろう。あれから、どれくらい経ったのか……


 両足の状態に注意を払いつつ、寝台を支えにして立ち上がる。途端に、スズリヨはくらりとしてよろめいた。寝台に手をついていなければ、へなへなとその場にへたり込むところだった。


 目を閉じて、そっと手を左胸にあてがうと、心臓は早鐘を打っていた。


 ーー落ち着け。ただの立ち眩みだ。すぐにおさまる


 狼狽える鼓動にそう言い聞かせ、深呼吸をする。立ち眩みも動悸も、直におさまった。


 今度は先刻よりも慎重に、床に足をおろした。未だ萎え痺れる足に鞭打って、立ち上がる。


 ーーうん。慎重に動けば大丈夫そう


 長い眠りーースズリヨが意識を喪失した後、少なくとも、骸竜軍が一族の居住地に帰還するだけの時間が経過している筈だ。ここが野営地の天幕の中とは思えないーーから覚めた直後、あんな風に体力を消耗し、夢の世界に舞い戻る羽目になったのだ。目覚めてすぐに、差し障りなく動けるはずがなかった。


 ーー精霊夢を過信していた……いや、私自身の体力を過信していたようだ


 己の浅はかさに辟易して溜息をつかずにはいられないが、自己嫌悪に苛まれている暇はない。気を取り直して、現状を把握しなければ。


 一歩踏み出そうとして、はたと気が付いた。


 ーーあっ……そうだ。わたし、今、素裸だった!


 忘れていた羞恥の感を思い出し、みるみる顔が火照ってくるのを感じる。毛布を引き寄せようと手を伸ばし、しかし、思い直して手を引く。


 ーーこんなに大きな毛布を体に巻き付けて歩いたら、毛布を踏んで転んでしまうかもしれない。衣擦れの音をたてるのも憚られる。だから……もう、このままでいいや。もし、ルルヴルグどのが目醒めたとしても、裸を見られたところで、今更、なんでもないさ


 スズリヨはそうひとりごち、溜息を噛み殺す。


 床には孔雀青の毛氈もうせんが敷かれている。動植物の特徴を誇張した菱形のモチーフを独特の色彩で織り出した意匠であった。


 ルルヴルグの様子を窺いつつ、あたりを見回した。


 ここは円形の建造物の中だ。円蓋を支える二本の太い柱、円蓋の中心から放射状に渡された梁、壁外周に渡された菱格子の木組みは、孔雀緑で統一されていた。


 釣床の真下、柱に立て掛けられているのは、ルルヴルグ愛用の大剣である。


 ーー不用心だと、鼻先で笑ってやりたいところだが……あれに近付いたら、ルルヴルグどのは飛び起きるに違いない


 危ない橋を渡り、縦しんばあの大剣を手にしたところで、今のスズリヨは、あの大剣を振るうどころか、構えることも出来ないだろう。


 スズリヨは大剣に釘付けにされそうになる視線を無理に引き剥がす。


 梁には乾燥果物や乾燥野菜などの食料を詰め込んだ網、菱格子には乾燥花の束が括り付けられている。他にも、用途不明の大小様々な道具が括り付けられている。柱の間に渡されたロープには、なんとなく見覚えのある下衣が引っ掛けられている。


 ーー何と言うか……生活感がある。ここは、ルルヴルグどのの住居……骸竜の住処……なんだろうな


 床のあちらこちらに箱や籠や壺が置かれており、足の踏み場もないとまでは言わないが、その一歩手前と言わざるを得ない。寝惚けていたらそれらに躓いて転んでしまいそうだ。


 ーー雑然としている。整頓はされているのかもしれないが、整理はされていないようだ。とにかく、物が多すぎる。ここに、姉さんは住めないな


 かく言うスズリヨも整理整頓を苦手としている。姉はスズリヨの部屋を訪れると必ず「スズは整理整頓がまるで出来ていない。そんなんだから、頻繁に物を無くすんだ」と小言を言う。


 ーー整頓されているぶん、わたしの部屋よりましなのかな? いやいや。たいして物がないぶん、わたしの部屋の方がましだ……と思う


 なんでこんな物がこんな所に? と意外な物が意外な場所から発見される、不思議な現象がしばしば起こる自室の是非は、ひとまず脇に置いておくとして。


 スズリヨは引き続き、ルルヴルグの住処を観察する。


 寝台をはじめ、家具はどれも赤橙色に塗装されている。一括りに家具としたものの、テーブルや椅子、棚や箪笥などの他にも、スズリヨには見覚えのない不思議な物がいくつもある。寝台と隣合うそれも、その一つだった。


 ーーこれは、なんだ? 巨大な……魚の顎の骨? 


 それは、スズリヨが膝を抱えれば、すっぽりとおさまるであろう、巨大な顎の骨格だった。大きな木枠に嵌め込まれ、脚の支えによって自立している。上顎に対して下顎が大きく、突出しており、人の乳歯より小さな三角形の歯が櫛比している。


 スズリヨは前のめりになり、それを観察した。


 上顎の歯、一本一本に孔があけられており、その穴に糸が通されている。下顎の歯も同様に孔があけられ糸が通されており、糸は上下の歯を繋いでいる。数千の糸が列をなしているのだ。


 木枠の上板と下板には小さな鉤がびっしりと並んでおり、そこ鉤にも糸がかけられている。上下の板に渡された糸は、顎に渡された糸と斜めに交差している。


 木枠に渡された糸に対して、直径も形状も様々な棒が垂直に渡されており、それは骨を加工したものであるようだった。木枠の上部に点在する突起には、色鮮やかな色糸が巻かれた糸巻筒が嵌め込まれており、そこから伸びる糸も、糸の列に交差している。


 ーー張り巡らされた糸に引っ掛けてある、これは……機織で、糸をすくうのに使う、杼? それじゃあ、これは織機? ルルヴルグどのは、骸竜軍の軍団長でありながら、機織師の仕事をするのか? 


 シルヴァスでもイリアネスでも、機織は主に女の仕事だった。ルルヴルグのような、社会的地位が高い男ーー骸竜の風俗などスズリヨは知る由もないのだけれど、武を尊ぶ骸竜は高位の武官を尊ぶ筈だーーが機織をするなんて、聞いたことがない。


 ーーあの節くれ立つ大きな手で、機織りなんて、緻密な仕事が出来るものか?


 ルルヴルグの大きな手を思い描きながら、スズリヨは自身の手をじっと見る。女の手とは思えない、節くれ立つ大きな手。この手は、機織りどころか、裁縫も編物も、女の嗜みは何一つとして、まともに熟せない。


「貴女ときたら、殿方の真似をして剣を振り回してばかりで、女の嗜みをちっとも学ぼうとしないのだもの。そんな有様だから幾つになっても嫁の貰い手がないのよ」と伯爵夫人が嘆いていたのを思い出す。


 ーールルヴルグどのは、あの逆鱗甲を自作したと話していた。手先が器用なのかもしれない


 器用という言葉から、スズリヨを法悦に導く手際を連想してしまい、スズリヨはたちまち赤面した。


 ーーああ、もう、違う、違う! そうじゃなくて! わたしに出来ないことでも、ルルヴルグどのには出来るのかもしれない。それだけのことだ。こんな、つまらないことで、悶々としている場合じゃないぞ。ルルヴルグどのだって、いつまでもぐうすか寝ているわけじゃないんだ


 スズリヨは機織機に背を向ける。きょろきょろとあたりを見回す。


 ーー採光源は天窓のみ。他に窓はない。扉は、柱の向こう側か


 ルルヴルグを起こさずに、外を偵察するには、あの扉を開くしかない。


 ーーこの足では、骸竜の追跡から逃げ果せないだろう。だからこそ、ルルヴルグどのはわたしを拘束せず、あんなところで呑気に寝ているんだ。そんなことは分かっている。それでも、外の様子を一目見ておきたい


 スズリヨは扉を目指し、壁伝いに歩き出す。部屋を

 突っ切って扉に向かいたいところだが、壁を支えにしなければ歩けそうにない。


 スズリヨは少し進んで、立ち止まった。


 ーー大きな棚だ。おかしな物が色々と、ごちゃごちゃと置かれている


 壁の一面に何段もの壁付け棚がつくられ、様々な品物が所狭しと並んでいる。色とりどりの瓶が目立ち、瓶の中には様々な粉が詰められている。砂糖、塩、香辛料などかと思われる粉もあれば、七色に光っていたり、渦を巻いていたり、ふわふわと浮遊していたりする、得体の知れない粉もある。その他、角細工の筒や、牙彫りの箱、陶器の壺なども眼についた。


 ーーこの棚、ちゃんと固定されているんだろうか。支えにしたら、ひっくり返ったりして?


 そうなれば、ルルヴルグは跳ね起きるだろう。そうしたら、もう何も出来ない。万事休すだ。


 ーー仕方ない。迂回しよう


 スズリヨは改めてあたりを見回す。手の届く範囲にテーブルがあった。その上には丸刀、小丸刀、三角刀、平刀、切り出し刀など、様々な種類の彫刻刀が並べられている。そして、それらによって彫り出したであろう、鳥脚獣を象った掌大の石彫が、端にちょこんと載っていた。


 ーー見事な石彫だ。これは、ルルヴルグどのの愛馬、ショルヒか。この立派な羽冠は、たぶん、そうだろう。本物のショルヒより、ずっと可愛らしいじゃないか。ルルヴルグどのが彫ったのか? 多才だな


 骸竜の戦士を背に乗せた「骸竜の馬」が、人を蹴り殺す様、または噛み殺す様を、スズリヨは幾度となく目の当たりにしてきた。


 ーールルヴルグどのにとって「骸竜の馬」は、これなのか。あんなにも凶悪な猛獣が、こんなにも愛くるしい生き物としてその目に映るとは。……ルルヴルグどのが飼い主の欲目で見ているのか、それとも、わたしが色眼鏡で見ているのか


ルルヴルグは彼の愛馬をよく馴致していた。それは、騎兵として当然であろう。しかし、ルルヴルグの場合、それだけではないようだった。愛馬を撫でるルルヴルグの仕種にも、愛馬に向ける微笑にも、溢れんばかりの愛情が込められているように、スズリヨには見えた。


 ーールルヴルグどのは、ショルヒを可愛がっているんだろう。わざわざ、こんなものを拵えるくらいだ。ショルヒ……獣吼で「風」を意味する名前。……わたしのせいで死んでしまった、あの子と同じ名前


 風は勇敢で優しい馬だった。スズリヨを助けよく尽くしてくれた、スズリヨの愛馬。

 非業の死を遂げた愛馬を想うと、胸が締め付けられる思いだ。


 ーーいけない。感傷に溺れている場合じゃない


 スズリヨはテーブルに手を突いた。丸テーブルの下には木箱が積まれており、中には鉱石がごろごろと詰め込まれている。木箱や椅子に躓かないよう、足元に気をつけながら歩みを進める。


 テーブル、椅子の背凭れ、また別のテーブルを伝い、壁付け棚に隣接する戸棚に手を伸ばす。頑丈な造りの戸棚はスズリヨが凭れかかってもびくともしない。これなら大丈夫だと判断し、天板に掴まって移動する。


 開戸には、花色の磨り硝子のような物が嵌め込まれている。触れてみると、つるつるとしていて、ひんやりとしている。中を覗き込むと、調理器具らしき物、食器らしき物がずらりと並んでいた。


 ーーコップもあればカップもある。大皿小皿、大鉢小鉢、大匙小匙もある。骸竜も食器を使うのだな。……えっ、大鍋小鍋まであるのか。壁付け棚には、塩や香辛料入りの瓶らしき物もあった。つまり、ルルヴルグどのは食材を調理して食べている、ということだ。そう言えば、あっちには乾燥野菜や乾燥果物もあったな。骸竜が料理をするなんて、驚いた


 骸竜に限らず、大型の蜥蜴人は生肉を好んで食す。その食性に、食器や調理器具、調味料の類は無用の長物であると思われるのだが、そうとは限らないようだ。


 戸棚を経由して、壁際に移動する。壁に凭れて一息ついた。扉は目と鼻の先にある。


 孔雀緑の大きな開戸である。恵体を誇る骸竜の戦士も、楽に出入り出来るだろう

 開戸の全面に四脚の翼竜が彫刻され、色鮮やかに彩色されている。


 閂錠は、取り付けられていない。


 ーー手の届かない、高い位置に閂をかけられていたら、手詰まりの状態だったが……これなら、開けられる


 ドアノブに右手をかける。しっかりと握って、回す。 扉はずっしりと重く、押しても引いてもびくともしない。


 ーーちょっとやそっとじゃ動かない……それなら


 スズリヨは目を閉じ、心の中で精霊夢に呼び掛ける。霊夢はスズリヨの求めに応え、マナを送り出す。マナを乗せた血は身体を巡り、右腕に辿り着く。血が滾り、力が漲った。


 スズリヨは目を開ける。扉を軽々と押し開く。


 僅かに開いた隙間から、ギラギラ光る猛獣の大きな目が、スズリヨを睥睨していた。

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