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5)エリックの決意

「エリック、私は、おまえは生き残っている。それなりに腕は立つと思う」

アレキサンダーは窓の外を見ていた。


「今まで何人もの近習が、刺客に襲撃されたときに、殺された。私とロバート以外で、刺客の襲撃の中、生き残り続けているのは、おまえだけだ。おまえは決して弱くない」


 一国の王太子が、貴族たちの差し向けた刺客に命を狙われるなど異常事態だ。首謀者らしき貴族を捕らえても、似たような思想の別のものが台頭しているのだろう。国内で争うなど、周辺国に付け入る隙を与えるだけだ。それすらわからない愚か者が一国を支配できるなど、エリックには思えない。


「怖いか。怖くて当然だ。怖いなら、辞めていい。他所へ行くというならば、紹介状は書いてやる」

アレキサンダーは、エリックを見ようとしなかった。

「無理はしなくていい。巻き込まれる必要のない危険から逃げることは、間違っていない」

 それだけ言うと、アレキサンダーは、執務室の方へと歩き始めた。護衛達が静かに付き添っていた。


 エリックは立ち尽くしていた。

殺しを生業とする刺客達は恐ろしい。関わりたくない存在だ。だが、怖いからといって逃げることが正しいとは思えない。巻き込まれる必要のない危険というが、この国の王太子に関わることだ。どんなに遠くにいても巻き込まれる。


 それならば、目の前で、その危険を排除し、断ち切れるほうがいい。遠くで歯噛みしても意味はないのだ。


 エリックは遠ざかっていくアレキサンダーを追いかけた。

「私はアレキサンダー様のお傍に、お仕えしたく思います」

アレキサンダーが振り返った。

「ならば、死ぬな。死なずに私を守れ。死人は、私に仕えることは出来ないぞ」

「はい。勿論。承知しております」

エリックの言葉に、漸くアレキサンダーが笑顔を浮かべた。


「では、執務室に急ごう。今日はロバートの見舞いついでに、ハロルドの夕食も持っていってやるが、人参を抜いてやる。おまえも手伝え」

「人参ですか」

エリックは首を傾げた。

「ああ。ハロルドは人参が好きだ。報告が遅れた罰に、今日の夕食の人参はなしにしてやる」

アレキサンダーは、ささやかな仕返しの計画を打ち明けてきた。

「私が自ら手を下す罰だからな。文句は言わせないぞ」

おどけてはいるが、ハロルドが報告の遅れを他人に叱責されないための、アレキサンダーなりの心配りだろう。

「お手伝いさせていただきます」


人参を抜き取るという意味ではない。


 アレキサンダーが、この国の国王となるとき、身近で国王を支えるのは近習だ。護衛や執務の手伝いなど、近習の仕事は多岐にわたる。


 アレキサンダーの傍に仕え、支える。


 エリックは固く決意した。ロバートと互角に手合わせが出来るように腕を磨く以外にも、やるべきことは多くある。絶対にロバートと、並び立ってみせる。エリックは決意した。


エリックは、こうしてロバートの信者と言われるようになりました。


このときの傷が、第一部 第一章幕間「乳兄弟の絆」https://ncode.syosetu.com/n5689gu/で、

アレキサンダーの視線が止まった左脇腹の傷です。


幕間のお話にお付き合いいただきありがとうございました。

この後も、本編でお付き合いいただけましたら幸いです


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