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四十一話 【ガートルードの暗号日記:四歳・秋】

 あ


 あ、嘘、やだスゴい。


 書けてる、読めてる! 日本語日本語! 

 書けてる、私四歳児の異国の少女なのに漢字までバッチリ書けてる!


 あ、日付忘れてた日付。

 日記だからね。大事大事。



秋の第二の月初旬


 やったわ! 私やったの!

 ついに想いが通じてアルベルト様がいる世界に生まれられた!

 あのすっとぼけた上に絶妙に性格悪い女神は死ぬ直前の夢かと思ったけど本当だった! 


 寝ようと思って立ち上がったら散らばってたペン踏んですっ転んでしたたか後頭部をテーブルの角に打ちつけ泡は吹くわ白目は剥くわで意識を失い、頭をテーブルにもたせかけたままで身体が脱力してずり下がったもんだから首の角度が鋭角になって顎の下の肉が二重を超えて三重、四重になった上に、ぶつかった拍子に倒れたインクを頭から被って泥沼に突っ込んだ人みたいになったあげく、ひっくり返ったカエルかってくらい股おっぴろげた女子力のかけらもない死に様が、この上無く情けなかったから転生させて願いを叶えてあげるって、教えてくれなくていいわそんな死に様! 

 死に姿にまで女子力求めてくれんな! 

 そんな物が備わってたらもっと人生楽しかったよ。


 まあ、そんな事はどうでもいいの。女神は願いを叶えてくれたんだから。



 私、昔のヨーロッパって聞いて思い浮かぶ物全部ごちゃ混ぜにして良いとこ取りした様な、乙女ゲームの世界に転生したぁ!


 アルベルト様のいる、銃火器が奇跡的に発達しないまま発展はしてるどうなっとるんやな乙女ゲームの世界にぃ!



 ついさっき、兄様の元に遊びに来ていたアルベルト様に話しかけられた瞬間に記憶が戻って気づいたの!

 ここ、【ガートルードの涙の魔法】の世界だって!



 はぁぁああぁあぁぁぁあ

 なま……生アルベルト……あぁ、やばぃ。やば、やばい。



 それもまだ十二歳時分のアルベルト様……でももう顔怖い。

 目があった奴は片っ端からっていく気なんじゃってくらいの目付きの悪さ……だけどそこが良いの。こんなに怖そうなのに心を寄せる相手にはふにゃっと笑いかけるあの瞬間が最高なんだから。

 顔に傷が無いのも今の時期だけでレアで尊い。好き。


 ニコル、あんたは色々最低な奴だけどなんだかんだとビジュアルは良いし、禁断の兄妹愛ルートも中々人気のシナリオだし、何よりアル様と仲良しだし最高の兄貴ね。

 好きじゃなかったけど礼を言うわ。ガートルードの兄でいてくれてありがとう。



 ——って! 待てよ! 

 なんで私ガートルードなんだよ!


 違うよ女神バカ! 

 私はアルベルト様と結ばれたいの! 

 付き合いたいの結婚したいのラブラブになりたいの!

 ガートルードじゃ結ばれないでしょうがぁっ!


 似て非なる世界かと思ったけど、婚約者の所に騎士修行に行く的な話してたから、間違いなくゲームの世界。

 ってことは限定公開されてた小説通り、この後レイフォード邸で改めて顔を合わせた婚約者と幼く拙いながらも愛を育みだす……。


 くぅうぅっ! 

 四歳にしてハゲそうな程の嫉妬! 

 血尿レベルのストレス! 

 ぐぬぅ……羨ましすぎるフェリシア!


 なんなの……せっかくアル様が目の前にいる世界を生きれるのに失恋確定してるって。まんまゲーム通りじゃん。


 この恋の結末を知ってる分だけマシなのかしらね。作中ガートルードは突然知らされたアルベルトの婚約話に、悲嘆に暮れすぎて湖に身を投げちゃうくらいだからね。

 それを思えばそれ程のショックは……ん? 


 待て待て、ここがゲームの世界で私がガートルードであるならば……みすみす失恋せずに済むんじゃないか? 


 でもまだゲーム開始前……狙い通りに魔法が手に入るかどうか……。

 いや、賭けるしかない。可能性があるのなら賭けるっきゃない。だってまだゲーム開始前。私はアルベルト様に婚約者がいるなんて知らない筈の四歳児。やるんだったら振られる前の今しかない。



 考えろ考えろ。

 どうしたらアルベルト様に手が届くか……ここは妄想世界じゃない。フェリシアがいる。

 まずはフェリシアをアルベルト様の心から引き剥がさないことには魔法もきっと効かない。


 婚約式までまだ時間はある。

 アルベルト様は暫くここに滞在して、次に会うのは騎士になった直後とお父様の葬儀の時。



 考えろ考えろ。

 私は数多のラブストーリーを構成してきた女。やるわ、出来るわ。フェリシアからアルベルト様を攻略する完璧なストーリーを絶対に作れるわ。



 ……でも、ちょっと今は、せっかくだから生アルベルト様を堪能して来よっと!


 幼児特権でお膝に乗っけしてもらっちゃおうかしら。でゅへへへへへいけね、ヨダレが。


 あー……しかし、精神年齢アラ■■で幼児演じるのって……それは——考えるのやめよう。

そろそろ追いつかれて来ています。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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