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三十三話 私、礼儀なんて知りませんの

 もうすぐ昼食時になる、とフェリシアは自室のガラス戸の外に目をやりそわそわしていた。


「どうしたの? さっきからというか、今日は朝から気もそぞろじゃない?」


 部屋に呼んで一緒にカードゲームやチェスに興じていたロドニーにそう問われ、フェリシアは慌てて否定した。


「そ、そんなことないわ。今日は……その、天気があまり良くないなぁって……気になって」


「ああ、そうだね。この所晴れの日が続いてたから、こんなに曇ってるのも久しぶりだね。日差しがない分肌寒いし……薄着で寒くない?」


「え、ええ、大丈夫」


 苦笑いして誤魔化したが、さすが従兄弟の目は鋭い。フェリシアは朝からずっとアルベルトの事で頭がいっぱいで心ここにあらずだった。


 手紙を受け取り返信してから三日、今日は観劇に行く約束の日だった。それも午前中、お昼前の公演を観に行く予定で。

 けれど正午も目前の現時点で、フェリシアは自室にいて出掛ける準備すらせずロドニーと過ごしている。


 フェリシアは、今日の約束をすっぽかした。


 読めないアルベルトにどうにかして振ってもらう為に努力して来たが全て空振りに終わり、これ以上どうすれば良いのか悩みに悩んで導き出した今取り得る最大の非礼な行為として、無言で約束を反故にしたのだった。


 手紙が届いた時点で無視したり断ったりしても良かったが確実に振ってもらう為、より無礼で傍若無人に映る様にと一度承諾し、こちらから注文まで付けて出向く素振りを見せてすっぽかしている。


 ここまですればいきなり婚約解消とまで行かずとも愛想を尽かすきっかけにはなり、同様の事を続けていけばいずれ振ってもらえるだろうと考えて。


 待ち合わせは劇場前に十時。

 本来なら今頃は観劇を終えて昼食を取ろうとしている頃だったろうにフェリシアは自宅にいる。待ち合わせ時間はとうに過ぎ、予約していた公演も終わってしまった。


 きっとアルベルトは狙い通りにフェリシアの非礼に対しさぞや立腹し軽蔑している事だろう。作戦は成功している。

 喜ぶべきと思うのに騙した罪悪感と、どこかでアルベルトならまだ待っている気がしてフェリシアは心が落ち着かない。


「……そんなわけないわ。2時間も待って、お帰りにならないわけないもの。きっともう怒って帰られてる。何も連絡せずに約束を破って何時間も経ってるんだから……」


「フェリシア?」


 チェスボードを見つめたまま一向に手を動かさずに何事かを呟いているフェリシアにロドニーが声をかけた。

 フェリシアは意識を引き戻されて慌てて笑顔を作ったが、ハッと気づいて突如立ち上がり大きな声を出した。


「——しまった! これが放置プレイ⁉︎」


「ほ……何言ってるの⁉︎」


 深窓の公爵令嬢である従姉妹の口からとんでもない言葉が飛び出して、ロドニーはボード上の駒を全部倒す程驚愕して耳を疑った。だが残念な事に聞き間違いではなかった。


「ロドニー知っていて? 世の中には放っておかれると快感を覚えるへきの方がいらっしゃるそうなの。私、もしかしたらまたへきを刺激してしまったのかもしれない! 失念してたわどうしましょう!」


「どうしましょうはこっちのセリフだよ! 知ってますけど誰が君にそんな事を教えちゃったの⁉︎ もうついて行くから今度から! ご婦人方の集まりでも絶対ついて行くから!」


 フェリシアの交友関係に頭を抱えるロドニーをよそに、数日前から考え過ぎて混乱気味のフェリシアは部屋をうろうろしだす。


「どうしよう……私また喜ばせている? いえ、アルベルト様がそんなへきをお持ちと決まったわけではないし、怒ってくれているかも……ああ、でも……そうだ! 確認に行けば良いのだわ!」


 思いついてフェリシアはガラス戸へ飛びついた。


「今度は急にどこ行く気なの⁉︎」


 突然ガラス戸を開け放ち外に飛び出そうとするフェリシアに驚きながらロドニーが止める。


「大丈夫、すぐ戻ってくるから! すぐだから!」


「いやいや、そんな急に一人で外出させるわけに行かないから!」


「お願い見てくるだけだから——あ」


 止めるロドニーを振り切ってテラスまで出たフェリシアの頬にぽつりと雨が落ちて来た。


「ほら雨も降って来たし、風邪ひくからとりあえず部屋に戻って。行きたい所があるなら明日一緒に行こう」


「……でも、私——」

「フェリシア、とにかく中へ。そんな薄着で外には行かせられないよ」


 ロドニーに説得されて渋々部屋に入った所で、侍女のメアリーがやって来て昼食の支度が出来た事が伝えられた。

 食堂へ誘うロドニーに従って、仕方なくフェリシアも部屋を出ようとする。


 扉を出る時に振り向いたガラス戸の向こうには春の麗かな空はなく、厚く垂れ込めた灰色の雲が音もなく細い雨を降らせて、華やいでいるはずの庭を煙らせていた。

この辺りからこんなこと書いてて恥ずかしいなって気持ちがすごくなって今回はちょっと逃げ気味……。

改めて一話として見ると流石に薄すぎるので、日付け変わったくらいに今日はもう一話載せようと思います。跨いだら今日じゃないですね。すみません。


いつもお読みいただきありがとうございます!

もうやめとこっかなって思う事は多いのですが、読んでくださってる方がいらっしゃるので、不格好でも最後まで書こうと頑張れてます!

ありがとうございます!

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