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『吹雪のなか』

「これは温度調節の護符。

 ブーツと中敷の間に入れておくと、凍えなくて済むわ」


 本来あまり得意ではない付与魔法で、オフェーリアは大量の護符を作っていた。

 何しろこれからいく場所では、なによりも恐ろしいのは寒さなのだから、それに備えなければならない。


「これは昨日も言ったことだけど、絶対に無理しないこと。

 お互いに、これはダメだと思ったらすぐに合図しましょう」


 オフェーリアは全身を防寒具で包み、マティアスを見上げた。

 彼も完全武装(防寒)している。

 その彼が見つめる中、天幕を仕舞うと結界石を収納した。

 結界が消えると、そこは昨日までとはいささかマシだが、それでも吹雪が吹き荒れている。


「では、行きましょう」




 視界を覆う吹雪は体力だけでなく体温も奪っていく。

 それに休息を取ろうとしても立ち止まれば途端に方向を見失ってしまう。

 そんな現状でオフェーリアは、早々に諦めることにした。


「まだ3刻ほどしかたってないけど、今日はもうここまでにしましょう」


 マティアスからも異論は出ない。

 彼は視界の効かない中進むのが、これほど消耗するとは思わなかった。

 これでオフェーリアが【探索】で見通していなかったら、彼はこのダンジョン行を諦めて、とっとと上に上がっていたことだろう。

 オフェーリアは少し広めに結界を作り、その中に天幕を出した。

 ふたりは小走りで中に入り、やっとひと息つく。

 そして腰を下ろすこともなく魔導ストーブに火を入れていった。


「思ったよりキツかったな」


 大きな身体を丸めて、魔導ストーブの前で暖を取ろうとしているマティアスが震えている。

 一応魔力を全身に巡らせていて、マティアスよりは寒気に耐えられたオフェーリアが、彼が使っている浴室に向かって湯を溜めはじめた。


「もうすぐに入る事ができるわ。

 少し熱い目にしてあるから気をつけてちょうだい」


 おそらく低体温ギリギリなのだろう。

 彼ほど鍛えた身体を持つものでもこんな状態だ。

 このダンジョンはこれからどうなるのか、考え込むオフェーリアだった。


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