『足止め』
久しぶりに熟睡したマティアスが目覚めたのは、昨夜雇い主が出してくれた簡易ベッドで、ぬくぬくとした毛布に包まれてであった。
天幕の中は薄暗く、魔導ランプの灯は小さく落としてあり、雇い主はまだ起きていないようだ。
少し肌寒いが我慢できないほどではない。
マティアスは毛布を跳ね除けて起き上がった。
足元の上履きを足先で探って、足を入れる。この上履きというものも慣れれば中々のものだ。
そのまま外に向かうドアに近づき、覗き窓から外を覗いてみた。
「!!」
勢いよくドアを開けて、改めて外を見る。
「マジかよ……」
外は吹雪が吹き荒れていた。
「なあに?どうしたの?あら……」
いつの間にか近づいていたオフェーリアが、後ろから顔を出した。
「まぁ、雪?」
「ああ、ずいぶん吹雪いている」
「今日は動かない方がいいわね」
外の状況はとてもではないが出歩けるものではない。
オフェーリアはそそくさと部屋の奥に戻っていった。
「今、外の時間で朝の6刻くらいね。
朝食の用意をするわ」
キッチンに入っていったオフェーリアが鍋を取り出す。
その他パンなど色々な食材を出して並べていった。
「マティアスー、悪いけど天幕の周りをぐるっと見てきてくれる?
あっ、結界の中だからね。
外には出ちゃダメだよ」
「ああ、わかった」
一応警戒して装備をつけたマティアスは剣を携えて出ていった。
「さて、ウィンナーとスクランブルエッグと、バターロール。
サラダはトマトときゅうりとチーズ。
たっぷりのポテトサラダ。
じゃがいものポタージュにはクルトンをたっぷりー」
冷たいままでよいサラダやポテトサラダを先にならべて、オーブンに火を入れる。
魔導コンロにはフライパンを2つ並べて、ひとつにはウィンナーを、もうひとつにはバターを溶かして、ミルクなどを加えた卵液を入れた。
そして縁が少し固まってくるまで待ってかき混ぜた。
今朝はオムレツにするわけではないので楽である。
少し半熟気味で火から下ろし、自分の分を少し取り分け、作ったスクランブルエッグのほとんどをマティアスの皿に盛った。
ウィンナーもオフェーリアは2本でマティアスは山盛りである。
次にオーブンでロールパンを温め、新たにコンロにかけたスープをかき混ぜ始めた。