『新米たちのその後2』
オフェーリアにもマティアスにもすっかり忘れられた存在となった新米初級冒険者たちは、11階層の隅々までを探検し、それなりの数の低級魔獣を狩っていた。
それは中級以上の冒険者にとっては雑魚以外の何ものでもなく、ほとんど見向きもされない魔獣だったが、初級冒険者である彼らにとってはそれなりの数さえ得られればそれなりの稼ぎになるのだ。
彼らは今回ダンジョンにもぐるに至って、これまでの稼ぎを節約して貯めた金で、最下級だがアイテムバッグを手に入れていた。
これに入れられるだけ素材を収納し、背負い袋に詰められるだけ詰めて地上に戻るつもりだ。
なお、彼らは最初から初級冒険者推奨の15階層より下に行くつもりはなかった。
「ここは俺たちにとっては楽園だな」
固まって現れた2本角の角兎を仕留めた直後、血抜きをしながら剣士の彼が言った。
「森とは全然違いますね。
何よりも変異種がいて換金が楽しみです」
1日かけて11階層を巡り、今は12階層に降りてきたところ。
早々に現れた角兎5匹を屠り、これから解体するところだ。
「1匹から角が2本取れてラッキーだな」
まずは糸鋸で角を切り取り、アイテムバッグに入れる。
あとは毛皮を剥いできれいにたたみ、油紙で包んでまたアイテムバッグに入れる。
角兎の内臓に素材となるものはないので、夕食用に肉を1匹分取り分けるとあとは穴を掘って埋めておく。
ダンジョンでは放っておいても吸収されてなくなるのだが、彼らはいつもの習慣を繰り返しているのだろう。
「この調子なら1両日中にはアイテムバッグがいっぱいになって、町に帰れそうだな」
4人の顔が喜びに綻んだ。
そしてそれぞれが背負い袋を背負い、12階層の奥に入っていく。
彼らは自分たちの夢の実現に向かって第一歩を踏み出したばかりだ。
それは希望に満ちている。
だがこの後、彼らを見たものは誰もいなかった。