『【かれー】完食』
「うん、私はこれをライスで食べる方が好きだな。
そしてもう少しとろみがあった方がいい感じだね。
次はルーを作るとき、もう少し小麦粉を足した方がいいわね」
オフェーリアはオフェーリアで考察の真っ最中だ。
ブツブツと呟きながらかれーライスを一口ずつ食べていた。
そしてその傍らでは、マティアスが空の皿とオフェーリアを交互に見つめている。
「ん?」
オフェーリアはようやく、自分に向けられたマティアスの熱い眼差しに気づいた。
「……おかわり?
今度はライスで食べてみる?」
「ああ、食ってみたい」
結局、鍋の中の残りはすべてマティアスの腹のなかに収まり、今彼は満足そうに座っている。
「それで?
これからどうするつもり?」
マティアスが最後の一皿を食べながら、途切れ途切れに語ったところでは、この異常を冒険者ギルドに報告する義務があるらしい。
「いいわよ。
私はここで待っているわ。
ひとっ走り、行ってらっしゃいな」
所詮ここは10階層。
マティアスの足なら往復するのに1日もかからないだろう。
「もうひと休みしたいところだが、しょうがないか」
やれやれ、と立ち上がったマティアスは結界の方に目をやり、初めて気づいたかのように言った。
「じろじろ見やがって、気分が悪いな」
「本当、とっとといなくなってくれたらいいのに。
マティアス、ついでにあれも連れて行ってよ」
「勘弁してくれ」
マティアスは腹を撫でながらため息を吐いた。
「腹の様子がおさまったら出発する」
さすがにあれだけ食べてすぐに走るのは問題アリなようだ。
マティアスは一度テントに引っ込み、オフェーリアは片付けののちウッドハウスに引っ込んで、ふたたび出てきたときには結界の外はもぬけのからであった。