『ダンジョンでのひきこもごも?』
そんな様子で早10日。
オフェーリアの採取が絶好調で、未だ10階層までしか進んでいない。
オフェーリアはマティアスのつまらなそうな様子を感じていて、それならばと休暇?を与えることにした。
「私はここで2〜3日調合などをしたいので、マティアスは下見がてら先に進んで見てらっしゃいな。
一応テントも持っていって……結界石も持っていけばいいわ」
10日も過ごせば相手の実力など見極めることができる。
マティアスは心配しながらも、結界に囲まれたウッドハウスから出ないことを固く約束させて、彼女の言葉に甘えることにした。
そして出発間際に渡されたのは簡単な連絡が取れる魔導具だ。
「そんなに離れたところから使えるものじゃないの。
それとダンジョンの階層が変わればどうなるか……
それを確かめる意味もあってマティアスに持っていって欲しいのよ」
高価な、そして珍しい魔導具を託され驚愕していたマティアスだが、そう聞くと納得する。
数食分の弁当や保温水筒を持たされた彼は悠々と階段を降りていった。
10階層程度なら中級の冒険者であれば余裕とまではいかなくてもそれなりに対応できるレベルだ。
このダンジョンにはオフェーリアと同じように冬を越そうとする者がそれなりの数、やってきていた。
「なんだよ、これ。
こんなところに家があるぞぉ」
「ここで冬を越すためにわざわざ作ったのかぁ?」
一目見て、まだ冒険者になりたての初級冒険者だとわかる若者たち。
その言葉には田舎のなまりもあって、本当に“なりたて”なのがわかる。
彼らはウッドハウスに近づいて、ある位置まで来て弾かれた。
「うわぁっ!」
「何だこれ?!」
勢いよくぶち当たったものは尻もちをついて座り込んでいる。
「やっぱり個人の持ち物なんだよ。
僕、聞いたことがある。
これは“魔法”だよ」
1人だけ聡明そうな、線の細い弓士の男の子が結界に触れて言った。
後の3人は気持ち悪そうに、剣の先で結界を突いていた。