『個別に活動』
ダンジョンの不思議は、その中で繁殖する魔獣や草木にも及ぶ。
オフェーリアが採取しまくったネルモア草も翌日には茎を伸ばし蕾をつけ、そのまた翌日には花を咲かせる。
そしてその花は決して枯れないのだ。
「今まで検証したこともなかったから知らなかったけど、まさかこんな状況なんて……」
オフェーリアは今回2回分、足掛け5日この階層に留まり、大量のネルモア草を手に入れることが出来た。
その間、マティアスは第一日目こそ付き合っていたが、さすがに退屈そうだったのでここから先の様子見に派遣することにした。
もちろん初めは渋っていたマティアスだが、群生地をぐるりと結界で囲んで見せると、渋々階段を降りていった。
「さて、これでしばらくは帰ってこないわね」
オフェーリアは空いた場所にウッドハウスを出して中に入っていく。
そしてその足で転移し、魔法族の都に向かった。
「よう、今日はどんな用だ?」
教官の1人、男性の魔法族である彼はもう2000年近く生きていて【マザー】の歴代の夫のひとりでもある。
「お久しぶりです教官。
今日は食料品を調達しに来たんですけど、何かいいものがあります?」
彼も魔導具造りの名人で、びっくりするような逸品を生み出したりしていた。
「おう、オフェーリアは今ダンジョンに篭っているんだったな。
ちょうどいいのが出来上がったんだ。
ちょっとついてこい」
半ば引き摺られるようにして工房に連れ込まれたオフェーリアは、そこで新作の天幕(少し大きめのテント)を披露された。
「これからはウッドハウスが出し難いところもあるだろう。
これなら手頃な大きさだし、何より使用者制限がゆるい」
「それは?」
「持ち主が認証したもののみ中に入ることが出来るんだ」
あれよあれよと言う間に占有者登録が行われ、かなりの金額を支払わされて天幕は引き渡された。
この後オフェーリアはなくなった金を補填するため、他の町にポーションを売りに出掛けるのであった。