『から揚げとは』
口に入れると同時に油の旨みが広がり、歯を立てると肉汁が溢れ出た。
元々のフープ鳥と塩といくつかのハーブを組み合わせた濃厚な味付けが秀逸である。
「美味い!このから揚げというやつはクセになる味だな!」
子供のように目を輝かせたマティアスが、から揚げを次から次へと口に運んでいる。
彼はこの初めて食べたから揚げに、すっかり心を奪われてしまったようだ。
その証拠に、あっという間に平らげた彼は残念そうに空になった皿を見つめている。
「そんな顔しないで……
まだまだお料理はあるのよ」
そう言って差し出されたブラウンシチューはとてもいい匂いをさせていた。
マティアスは恐る恐るスプーンですくい、口にする。
「!!
これも!こんな濃厚なシチュー、食べたことがない。
なんだ、この肉。口に入れただけでほぐれるぞ!」
「お気に召してよかったわ。
ミノタウロスの肉を使って作ったシチューよ。
赤ワインもたっぷり入っているわ」
今度もスプーンが止まらない。
マティアスはパンを使って最後の一滴、皿についたシチューをすくって残さず食べた。
そしてそのあと、まるで草食動物のようにサラダを食んで、最後に残った【ポテトサラダ】に手を付けた。
その瞬間、マティアスはまるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
今まで味わったことのない味付けの、これも新しい料理だ。
「あんた……信じられない料理の腕だな。
今まで食べたのもすごかったがこいつもすごい。
一体これは何なんだ?」
「それは【ポテトサラダ】
蒸して潰したじゃがいもに具を入れて、それはゆで卵のみじん切りとハムときゅうりね。
それをマヨネーズで和えているのよ」
「そうか、その【まよねーず】というものがネックなのだな」
「そうそう、これもマヨネーズをかけたら美味しいのよ」
テーブルの上には再びのから揚げが現れ、そこにガラスの小壺に入ったマヨネーズが添えられた。
「こうやってかけて、食べてみて」
オフェーリアに言われるままに、再びから揚げを口に出来る喜びは、次の瞬間それさえもぶっ飛んだ。
それは歓喜、それは悦楽、そして真理。
マティアスは己の人生観が今変わったのだと、はっきりと認識した。