『腐れ縁?』
「お嬢、ずいぶんとご無沙汰だったじゃないか。
もう忘れられたかと思ってたぜ」
滅多に寄り付かない冒険者ギルドで、今までなんとか避けてきた昔馴染み、ギルド長のジャンと鉢合わせした結果、嫌味たっぷりの挨拶を受けた。
「あら、そうだったかしら?
ここにも来ていなかった訳ではないから、たまたまタイミングが良くなかったんじゃなくて?」
「ふ〜ん、まあ、そういうことにしておいてやろう。
で?今日は何の用だ?」
「冒険者ギルドに依頼以外の何の用があるって言うの?」
側から見ればいがみ合っているようにしか見えないが、これは彼らの通常運転である。
確かに彼らには小さくない確執のようなものもある。
だが“仕事”にそんなものを挟む2人ではない。
現にポーションも、クロードを介してだがちゃんと同一価格で卸していた。
「お嬢の依頼と言うと……なんぞ無体を言われそうで怖いわ」
10年前はまだふさふさしていたのに、すっかりツルツルになった頭頂部をさすって、口角を下げる。
ジャンはもう50の半ばを越えていて、すっかり老け込んでいた。
「至ってまともな依頼よ?
私、冬の間ダンジョンに篭ろうとおもうの。
なので護衛を紹介して欲しいのよ」
「何がまともな依頼だ?!
冬の間ダンジョンに篭るだと?
相変わらず、突拍子もないことを言い出す。
……本気か?」
「もちろん。
下層で採取するつもりだからそれなりの冒険者を頼むわね」
ジャンは暫し考え込むときの癖、爪を噛みながら思案していた。
「ん〜
2〜3日待ってくれないか?
何人か候補が浮かんだから声かけてみるわ」
「冒険者に求めても仕方ないかもしれないけど“紳士的”な人物をお願い。
それと依頼中の食事はこちら持ちと言うことでお願い」
「おお、それはポイントが高いぜ!」
何故かテンションが上がるギルド長だった。