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『杞憂』

「私が知る限りここ20年はなかったわね。

 もちろん、私が知り得る範囲の事だけど」


 深夜になってようやく帰宅したダルタンに、手料理を振る舞いながらオフェーリアは回顧していた。

 ついでに汚れた身体を【洗浄】してやる。


「本格的なスタンピードが始まるのでしょうか?」


 ダルタンが、がっついていた肉料理を口に運ぶ手を止めてオフェーリアを見つめる。

 その目には色々な感情……主に恐怖が浮かんでいる。


「今のところは何とも言えないわね。

 近いうちに採取がてら、様子を見に行ってくるわ」


「姉御!

 駄目ですよ、姉御。危険です」


「そんなはずないじゃない」


 オフェーリアが纏っていた雰囲気が変わる。


「あなたにはわかっているはずよ?」


 ビリビリと威圧する“気”がダルタンを襲うと、持っていた肉を取り落とした。


「姉御、悪かった。勘弁して下さい」


「まあ、あなたが心配してくれるのは嬉しいけど」


 威圧が解かれた瞬間、ダルタンはテーブルに突っ伏した。

 彼にとってオフェーリアの威圧を食らうなど冗談ではない。


「上層5層はもう異常はありませんが、姉御、気をつけて行って下さいよ」


 冷や汗でぐっしょりと濡れたダルタンを、オフェーリアは再び【洗浄】してやったのだった。



 ダンジョンの“湧き”事件が落ち着いてしばらくたった頃、オフェーリアはひとり森の探索を行なっていた。

 ダルタンはダンジョン内の魔獣が外に出たという報告はなかったと言っていたが、オフェーリアはどうも気になって見回っていたのだ。

 その日も【身体強化】した身体で森の中を飛び回って採取していたオフェーリアが微かな異常を感じとっていた。


「……?

 何かがこちらに向かって駆けてくる?

 足取りがずいぶん乱れているのか、いえ、複数いるの?」


 オフェーリアは立ち止まり、より正確に気配を感じようとしていた。


「何か変ね。

 微かに気配は感じるんだけど、その存在を捉えることができない……

 これは【隠蔽】を使っているのかしら」


 それとも違う気がする。

 オフェーリアはゆっくりと【浮遊】すると、近くの木の枝に降りた。

 そこからこちらに向かってくる、今は派手な音を立てて走ってくる複数体を、その目で捉えようとしていた。


「【隠蔽】してる方も気になるけど、まずはこちらね」


 オフェーリアはこのとき、魔獣が魔獣を追いかけるという状況が発生しているのだと思っていた。


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