『調薬』
後のことをアーチボルトに任せたオフェーリアは一度ダンジョン都市に戻ることにした。
取り敢えず今回の件をアーチボルトは知らない事にして時間を稼ぐ事にする。
別れ際にオフェーリアはある魔導具をアーチボルトに渡した。
「これはこのスイッチを押すと、私の持っている端末に知らせがくるようになっているの。
……もし、ジルの容態が急変したら、知らせてちょうだい」
魔導具を手にして頷くアーチボルトを後にして、オフェーリアは転移していった。
ダンジョン都市ミケルバのダルタンの家。
できることならもう一段、オフェーリアと親密になりたかったダルタンの想いは儚くも裏切られた。
オフェーリアはその敷地内に堂々とウッドハウスを出し、そこで生活を始めたのだ。
そして簡易ポーションの大量生産と初級ポーション(オフェーリアはそう呼んで他のポーションと区別している)の生産を進めていた。
オフェーリアのポーションと、他所のポーションや回復薬の違いはズバリ魔力量の多さである。
今現在、存在する魔法族の中でも、かなりの魔力量を持つオフェーリアならではの力業で調薬していくのだ。
「まずは薬草……都に隣接する森で採取したエヴリピア草を乾燥させたもの(これは魔法での乾燥よりも自然乾燥の方が効能が高い。今回の簡易ポーションの量産の場合は魔法乾燥を用いる)を……」
調薬室に設えられた大釜に、あらかじめ乾燥させ、粉末にしたエヴリピア草を3kg、そしてオフェーリアの魔力を潤沢に使って精製した魔法水を20ℓ投入した。
ここから、他の薬師は熱を加えて煮出していくのだが、オフェーリアは魔力を注ぎ込んで熱を加えずに抽出していく。これで熱による変質を防ぎ、薬源であるエヴリピア草の効能を最大限引き出すことができるのだ。
そして最後に瓶詰めしてラベルを貼る。
それを木箱に収めて異空間に収納して今日の調薬は終わった。
ここまでざっと5時間。
さすがのオフェーリアにも疲労の色が濃く見える。